シナリオゲーの皮を被った紛うことなきキャラゲー。椛、瑞羽狙いなら買い、ベスリー目当ては回避推奨とルート間格差がひどいゲームとなりました。ダイジェスト感がひどいため、毎日一・二時間ずつやるのが一番楽しめる方法かと。長文前半はネタバレなし。
visual art's 20周年記念作品であった初恋1/1で大ゴケし、二作目星織ユメミライで大成功したtone work'sの三作目。私自身は初でしたが、それなりに楽しめました。
予め言っておくと、作品そのものが長いので、一つのルートをぶっ続けでやるよりも、適度に寄り道しつつ、一日のプレイ時間を抑え気味にした方が、この作品は楽しめるかなと。特にベスリー、雛多、雪月。
というのも今作、中学編から各ラストまで、イベントのぶつ切りが多く、イベントとして描写されてるところはそれなりに甘々などを楽しめるのですが、通してやるとかなりダイジェスト感が目立ってしまうなと。
一部の方も仰ってますが、確かにちょっとイベント一つ一つが細切れかなーというのは同意。
それと、良くも悪くも、主人公の雪兎が中学生の時点でめちゃ人格者。まぁ中学生男子という本来馬鹿な生物をありのままに描写されても正直迷惑ではあるのとはいえ、ちょっと人間として出来すぎてる感はあります。ここは賛否両論分かれそう。
あと個人的に気になったのは、ライター間のすり合わせが出来てそうで出来てない点。一部は意図的なのかもしれないけど、明らかにそうじゃない所もあるのは考え物。
例えば中学編三年進級時の椛とベスリーとのクラス。ベスリールートではクラスメートがベスリーなのに、椛ルートは椛と異なっている。一方雛多ルートは雪兎一人別クラスになった。正直、ここは誰との親密度とか関係なく機械的に振り分けられるものなのだから、そこはどれかに統一してほしかった。
又、学園編でヒロインが各ルートによって入る部活が変わってるのもマイナスポイント。いやさ、部員なしで廃部の瀬戸際という料理部は雪兎が入らないならということで雪月が入らないのはわかるんだけど、椛はどのルート行ったって演劇部入るでしょ間違いなく。なんで一部ルート放送部なんて入ってんの。
バタフライエフェクトのつもりかはわかりませんが、それでもももちゃん先生のどの部の顧問かなど、ちょっとその辺りは統一したうえでやってほしかったなぁ……特にクラス分け、流石にバタフライエフェクトというには無理があり過ぎる。
とりあえず作品の規模にしては、05/28までの共通はそんなに共通は長くありません。ルート分岐第一ステップの雪合戦チーム選びまで全部スキップしても10分かかんないくらい。そもそも体験版でやれますしね。
瑞羽によるワンルーム学級だけいつも来てない人がいるのには違和感。いや瑞羽は他から見たら憧れのスターみたいなもんだからわかるのだけど、他の学級でも少しはその事柄に興味ある人がいてくれた方が様々な交流を打ち出せたんじゃないかと。
ワンルーム学級終わってからもずっと続いているのはどうなんだろ? とりあえず、ぶっちゃけここまで熱心に課外活動やる中学生もそういないよなとは思うのと、課外活動として学校が容認するかどうかってまた別問題な気がする。単に自分がそう思うだけで、自由な生徒の活動には口を挟まない校風とか言われたらなにも言えないけど。
以下、実は全編同時並行でやってたんだけど、結果的なED到達順にネタバレ込みで。
新見雪月
先んじて言っておきたいことは、血縁関係にない義理の兄弟姉妹は幾らでも結婚可能であるということ。血縁関係がない上で結婚不可能なのは養親と養子の関係のみであり、それ以外は婚姻関係などを家族以外の人と結ぶのと同様になんの制約もない。
その上で言わせてもらおう。兄妹兄妹うざいんだよ! なーにが結婚できないじゃライター嘘付くな。それとも無知なだけ?
雪月は正直かなり好みなヒロインなんだけど、それもあって中学編のシナリオはぶち壊し以外の何物でもなかった。
で、学園編入ってからはそれなりに上がり調子。学園編雪月は立ち絵だけで破壊力高い。いや悪いけど(血縁ないという意味で)他人の年下女子と同居までしててああいう感じになったら雛多ルートには行きようがなくね?
いずれにしても、恋人やってます宣言は別にワンルーム学級組にはさっさとばらしちゃっても問題なかったんじゃないかなぁ。血縁ないのみんな知ってたわけだし、その上で年頃の男女がというなら不自然でも何でもないでしょと。
確かに苗字も一緒だしそれ以外の人に自分から言うわけでなく知られるのはどうかというのはあるだろうけど、事情知ってる人ならいいんじゃなかったかなぁ、というのが学園編まとめ。
でもヒロインが夢を持ち、それに主人公が感化されて、それにヒロインが作用し、という相乗関係はよかった。なんで最初からこういうの書けないの。
どうでもいいけど、お互いが認識した状態で恋人関係になってからヤるまでは雪月が一番短いです。一月は普通に早い。逆に一番長いのは誰だ、ベスリー?
アフターはまずまず。寧ろもうちょっと甘くてもいいかな、ぐらい。お互い二人三脚で夢追っかけてというのは、ローマでの二人暮らしなどとして大変わかりやすい。
だけど、パティシエ大会の雪兎の行動、あれはない。とりあえず、会場やってきてとにかく叫ぶことがまず変人だし、それが周りの友人から名演説扱いされるのはどう考えてもおかしい。
そしてアフター編ラスト、なんでシュガージュエリーの一枚絵ないのYO! そこ一番物語映えするでしょ!
あと最後ぐらいおにーちゃんじゃなくて雪兎呼びにしてくれませんでしたかねぇ。結婚式で夫になる人におにーちゃんってどう考えても変でしょ。
まとめると、学園編はそれなりによかったんだけど中学編ひどすぎて相殺されちゃったよと。
ともあれ、このライターは「問題解決のための方策」を考えるのが悪いけど下手だなぁという印象。
恋×シンアイ彼女ゆいルートでも思ったんですが、その方策は、(悪い意味で)ありきたりか、もしくは普通に考えたら大迷惑かの二択かなと。そして後者はそれをさもいい話みたいに語るのがどうしても合いませんね。
学園編みたいなシナリオ進行で、無駄なシリアスを省いてくれればもっとよくなると思うので、そこは次回作以降に期待ですかね、ゆいルートの時よりは成長はしてるかな、とは。
ところでルート内挿入歌とED曲は基本そのルートのライター作詞だけど、雪月ルートEDだけ真崎ジーノ氏じゃなくて企画・ベスリールート担当丘野塔也氏なんだがどうした? 息切れした?
蒼井雛多
魁ってライター、正直keyのCLANNADの杏ルートは好きじゃなかったんですよ。どうにもCLANNADって話の根底からはこのルートは確実にどこかずれてて、それでも攻略ヒロインの中ではかなり上位を張ってるってのと人気あるのが妙に納得いかなくて。
要は自分がその後の人気と併せて勝手にいけ好かない認定してただけなんですけど、実際はどうだったか。あ、でも正直杏ルートそのものは今でもあまり評価してませんよ、というのはさておき。
中学編はルート突入直後からやりたいことをとにかくやってくのは好印象。最終的にはそれらを学園編、アフター編とつなげていきます。
学園編では飼育部の活動をメインに。飼育部は雛多ルート以外では一切絡まないので、そういう意味では新鮮。だが、良くも悪くもメインは雪兎の動物病院のバイトの方である。
アフター編は、中学、学園編と続いて来たことを下敷きに、同棲生活をする中で獣医として邁進する姿を。
こう書くとお分かりの通り、メインは雪兎です。雪兎が自分の夢を持ち、自立していくのを雛多が支えるというのが根底にあります。
総括すると、メリハリが少なくて、手堅くまとまってるけど盛り上がりも乏しいなと。
どうしてかって考えた時、やっぱり雛多というキャラに夢がありすぎて、一つ一つの出来事がそのせいで盛り上がらなくなっちゃってることなんですよね。瑞羽と構造は一緒なんだけど、ヒロインに夢がありすぎることがここでは仇となった。
椛には演劇の、瑞羽にはオリンピックの夢があって、ひたすらそれに突き進むからそれに関連するイベントは否応なしに盛り上がるんだけど、どうしても雛多はそれが無理だった。こればかりはもうキャラ設定の問題なので仕方がない。
とにかく夢追い人という設定はともかく、何個も夢があるというのなら、どれか諦めてどれかを目指すという風にしてくれた方が、現実感あってよかったかなぁと。
あとあれだ、個人的には最後にハルを寿命で看取ってほしかった。実際エピローグ辺りではハルもそろそろ寿命なはずだったし、ハルが死ぬことによって「半生を描く」ということに気持ち裏付けが取れたよなぁと。
ところで、まず生まれた子が男の子というのが地味にいいなと。いや、以前「生まれた子が男なだけでタカ派処女厨が発狂するのどうにかならんの」って別レビューでも書いたけど、普通に男の子産んでいいと思うんですよね。
で、確かに雛多との子供はまず男の子、と言われて割とピンと来るなと。ここは単にイメージ通りだからかもしれないけど、個人的には細かいけど評価します。
魁というライターへのいけ好かない認定はどうなったかって? そこそこ解消したと思いたいです。ただ、そもそもシナリオがキャラの犠牲になるという珍しいパターンの中書いたという点ではそもそもが難しかったかもしれない。
あとすっげぇ個人的な感想なんだけど、「夢を追いかけて多忙でも楽しい」っていうの、一部ユーザーから滅茶苦茶顰蹙買いそうな気がするんだ。気がしただけだけど。
如月瑞羽
佐野先生の立ち絵ェ……。
良くも悪くも全編通してあまり年上らしい感じがしないですね。特にくっついてからは「彼女」ということが「年上」よりも「幼馴染」の方が優先されます。と思えばちらほら『瑞ねぇ』であるがための描写が出て来てメリハリがある。
とりあえず中学編は雪兎がアリサに腕組まれて動揺してる瑞羽かわいい。
このルートは、瑞羽が既にオリンピックを目指しているという設定上、全編が「オリンピックを目指すために瑞羽を支える行動」となります。なのであまり中学編、学園編、アフター編と分けて話をする必然性がない。
その分、雪兎が成長していくことを見るのがこのルートの肝となります。結果的に、ヒロインが物語開始当初から目指す高みが一箇所に決まっていたとあって、その目論見は成功しています。
学園編は怪我の手術からの復帰がメイン。チョコドーナツを作るのに試行錯誤するのは雪月ルートでもないのに、相手のことを想って作る、という感じが出ているのは良い。
この時点でチームミズハ結成してるなら、色々なこともうこいつらに任せちゃえよ、という感もありますが、やはりそこは素人故そうもいかず。
けど、瑞羽にとっては間違いなく精神的に大きな支えになったでしょうね。そしてそこが書けてたのはよかった点。
アフター編はもうとにかくオリンピックに向けて一直線です。終盤が近づくにつれ、あぁ、終わるんだな、といういい意味での加速感が増します。
ただ、オリンピック開催一ヶ月前になって、プログラムから何から全て変更って、特に衣装の契約だとか、そういったところで軋轢生んでない? と気にし始めるとかなり気になってしまう。
そしてそれを同じところに頼むならともかく、一応プロとはいえ中学からの友人って……これ、場合によっては契約不履行とか問題になる奴だよなぁ。
とはいえ、EDの入り方と〆方は間違いなくよかった。ED曲「キミがくれた翼」はまごうことなき作中一の神曲。ぶっちゃけ金メダル見せたら娘とか気にせずあそこで終わりでよかったんじゃないかと。
総括して、エロシーンがなんか異常にアブノーマルなの多いのが気になるけど、シナリオは有名人の彼女を高みに送るために二人三脚で頑張る、というわかりやすい話で大変宜しかったです。
ところで、学園編以降の瑞羽立ち絵の胸おかしくね? ちょっと盛り過ぎというか、流石にちょっと形おかしくないかと。あれは巨乳やなくて奇乳や。
つーことで立ち絵に関しては他はみんな学園編以降の方がいいけど唯一中学編の方がいいと思ったキャラでした。実際中学立ち絵の方が諸々控えめ感ある。
ベスリー・ローズ・ディズリー
やべぇ、プレイ中メモ(という名のレビュー雛形)してたはずなのに冗談抜きであいがーりーしか記憶に残ってねぇ。
あ、あとあれだ、学園編ハロウィンのベスリーゾンビ。これはヤバい、控えめに言ってヤバい。
いやあれ黒背景で突然出てくるから本気で怖いぞ! 冗談抜きでブラクラ注意レベル。下手したらディスプレイ素手で叩き割る某外人の動画宜しくやりかねない。
中学編、雪兎の交換留学生は不合格にするってのはいいですね、付け焼刃じゃ通らないぞっていう現実感と、代わりにまた日本に来たいというベスリーの決意になってるのと。でも中学編が最高潮かよ……。
学園編の雪像作りは完全ドキュメンタリーというのはよかったんだけど、雪像の崩壊が懸念されたところに直談判しに行くの、字の文だけを読む限りだと自分のところだけでも認めてくださいと言ってるようにしか見えなかった。
いや駄目に決まってるでしょ、本当なら。あれで他のところも精査するというのならわかるけど、どうにもそこで醒めたというか、物語進行に都合のいいようにしか見えず。
その後の雪上アートはまぁいいでしょう、中学編でベスリーと雪兎はスノボ、他はスキーとわけた必然性は最後まで分かんなかったけど。
で、大問題のアフター編。他の皆様がよく言われる「ちょっとダイジェスト過ぎなんじゃないの」を一番体現してるルート(一切褒めてない)。
シナリオのひどさは雪月中学ルートと双璧を張ります。雪月中学編がその展開はおかしい、という点でプレイヤーポカーン展開だとするならば、こっちはあまりのダイジェストでプレイヤー完全置いてきぼり状態。
いやさ、なんで普通にクリックしてて五分で12月→6月→1月と飛ぶのよ。その間に書けること色々あったでしょ。なんでプレゼンとアートのコンテスト両方完全に開催日の状況すっ飛ばしてるの。
どうにも、パッケージヒロインだからか、アフター編は他より少し長いものの、それが完全に蛇足になっている。ぶっちゃけアフター幌路編はいらなかった。卒業と同時にカナダで就職決めて現地で結婚式挙げてENDでいいじゃんと。
というわけで、アフター編は長い癖にはっきり言ってなんも実がありません。はっきり言っちゃう、アフター編シナリオゴミだ。雪月中学編はまだこれからというのと、そこまで本筋に絡むこともない内容だったけど、こっちは本筋後半でまとめなきゃいけない状況だったから余計に立ち悪い。
個展やらないかという話になって、三日後、個展やるわと雪兎に意思を伝えたと思ったら五ヶ月後に飛んで、個展やってまーすって、なんだよこれ。
というわけで、後半になればなるほど適当になるシナリオで、完全に最後は読んでる自分が投げやりになって終了。エピローグでそれっぽくまとめてもここまでひどいと擁護できない。
総じて、国際恋愛の必要性がどうにも薄かったなぁと。そしてマジで記憶に残らない(二回目)。ダイジェスト過ぎるシナリオが記憶に残っても嫌だけど。そして記憶に残ったのがベスリーゾンビ――やっぱ嫌やこれ。
とりあえずジェイクがただのツンデレ(デレ多目)ですありがとうございました。あとは、アイガーリーって言わせ過ぎてイラっとしてきてたので言うの1/4以下にしろマジで。
名白椛
プレイ前キャラデザと主人公との関係性勘案して一番気に入ったキャラは作中どこかで蕩れた関係になる法則発動!
雛多がライター的に自分の中で当初不安抱えてたなら、椛はHeartsの「ナツイロココロログ」でイチャラブに関しての力量知っていたライターであるにっし~氏。
結論から言えば、よかった、すごいよかった。構成が完璧だった。
中学編は、雪兎と椛の心の近づき方をゆっくりと、丁寧に描いています。雪兎が歳不相応に精神的に大人だとはいえ、段階を経て惹かれ合う姿は見ててほっこりするものがある。
初めて手を繋いだクリスマスイヴ、やっと告白できた椛の誕生日、初めてキスをした中学の卒業式と、着実に関係性を深めていく描写はとにかく丁寧。
学園編で個人的にいいなと思うのは、演劇部に入部後副部長なこと。他ルートだと大体他に二年がいないからという理由でどれも部長なんですけど、あくまで前を目指そうとする仲間の補佐、であることが他ルートとは一味違った部活動ものになってます。そしてそれがアフター編に至るまでずっと生かされてる。
個人的に思う所を言うなら、演劇と併せてPays de neigeでバイトしてれば、学園生活とはまた別の椛の一面を描写できたと思うので、やってほしかったなぁ。ほら、アフター編やっぱり料理雪兎に任せきりにしちゃったとかっていう話のタネにも出来たし、ここでのバイトが椛に限らず瑞羽ルートだけだったのすごく勿体ない。
そんなことを言いつつ、もう一つ、ラストで簡単に最優秀取っちゃうのはどうかとは思うも、中学編同様の丁寧な心理描写もあり、それ以外はそんなに減点要素もなく、学園編では間違いなく出来は頭一つ抜きんでています。次点で雪月。
アフター編は、大学卒業後がメイン。正直なところ、東京での学生生活の様子をもっと見たかったようには思いますが、蛇足になるから外したのかな。でも、劇団立ち上げのため人脈作りという視点で書けば全く邪魔にならなかった気はします。
そして、朱音と劇団立ち上げに携わり、学園編同様みんなのお母さん役として立ちまわる。しかしその中で、やっとやりたいことがなんだろうと自分の中で考え始める雪兎は、実に人間味溢れていた。
ラストに向けてのプロポーズの準備。正直に言うと、対象一人だけ知らせず、その上で意味もなくかっこよく決めようとするのが気持ち悪いという意味合いで、フラッシュモブみたいなのって大嫌いなんですよね。ですがこれはぎりぎり嫌味にならないラインついてるなと。
なんでそんな評価になったかっていうと、恐らくプロポーズする場に於いて観客もサプライズだったことと、あの場で頑張るのが雪兎一人だったということでしょうね。
そして、最後の最後に舞台に立つ雪兎。裏方に徹した彼が、人生一番の大舞台という場で立った表舞台。その隣にはずっと連れ添った椛。この展開にはやられました。
別ルートに於いて、雪兎は各ルートヒロイン毎の夢に合わせた職になり、椛は一部ルートでは人気アナウンサーになっているわけで、正直椛ルートは夢を追いかけた結果寧ろ共に茨の道を歩んでいると言える節はあります。
ですが、それも二人対等な関係で、寄り添っているからこその選んだ道、という図式はただ単に夢を叶えただけではないという観点からは他ルートと違ったものとなりました。
瑞羽ルートが世界に羽ばたく彼女を下支えする成功物語なら、椛は彼女と着実に同じ道を歩く、特別ではないけどじんわり温かい物語でした。
なんていうか、こういう「当たり前を噛みしめる話」って個人的にすごい好きなんですよ。
「ナツイロココロログ」久遠ルートでも感じたことだけど、にっし~氏は物語前半で出した会話や展開を、後半で立場が逆になるように持ってきて、そして一箇所に落とし込むのがとてもうまい。そしてそれは作品の中でも一歩抜きんでる要因となっている。
だから、椛ルートはこの作品もとい作風でやってほしいことそのものだったと思うし、それをしっかりと書き上げたという点に於いて、個人的には椛ルートが一番好きです。
だけど一点、頼むから麻疹を罹る時はさっさと治る的な書き方するのだけはやめてくれ。普通に人が死にうる感染症をそういう書き方するのはマジであかん。これだけは声を大にして言いたい。
総括
各ルート毎のシナリオ点数と、その他要素加味してこの点数。ぶっちゃけ殆ど椛と瑞羽の点数やこれ。
癒し枠、としてやるべき作品なのは間違いないでしょうね。少なくとも一日じっくりやるような作品ではない。一日多くても二時間とか、ゆっくりじっくり楽しむ作品かと。
というのも、前述した通りとにかく場面が飛び飛びになる作品なんで、そうした方が粗が見え辛くなるかなーと。でも逆に言えば相当シナリオおざなりということでもある。
いや控えめに言ってさ、何が「それから、1年近くが経ち」だよその間何があったんだよって話でさ。ひたすら同じ日常が繰り返されてると察せられるパートか、その間どちらかが先に進学してて一緒の学園生活送ってない期間ならいいんだけど、明らかにそれ重要だろっていうところまですっ飛ばしてるのがあるからこそ。
故に、そのダイジェスト感が薄い椛・瑞羽目当てなら十二分に買いでしょう。逆にそれが一番顕著どころか重要パート丸ごとすっ飛ばすベスリー目当ては回避推奨。雛多、雪月目当てはなんとも。
不満としては、とりあえず各ヒロインは夢色々持ってるんだから、これも先述の通りせめてある程度高校編で入る部活統一してくれ。百歩譲って雪兎いないと廃部状態になる料理部は仕方ないとしても、なんでベスリールートとか椛は放送部いるのよ、演劇部廃部間際なんて話はなかっただろ。
あと、HPでライター情報公開してるし、それはいいことだと思うんですが、正直ライター間での差異って言うほどあったか? という点。物語的に基本『甘々サクセスストーリー』を目指す余り、ライター間の差異というのがほぼなくなってしまった。
勿論、山あり谷ありなシナリオでないことは企画段階から明らかではありますし、これ以上やりようがないのも理解できるんですが、だったら細部を詰めてそこでライター毎の特色を見たかったなぁとは思ったり。
あと、地味にこれkanon問題やらかしてる。瑞羽ルートでないと瑞羽は金メダルを取らず引退するし、雛多ルートでないとハルは拾われない。雪月はルートでないと魔法使い(本文中的意味で)にはなれず、ベスリーと椛は……まぁいいや。
そもそも、各ルート、ヒロインの親に「この子の相手は雪兎くんしかいないと思ってた(要約」的なことを殆どで言わせてるせいで、どうにもその後他ルート行くともやっとしたり。これは特に瑞羽が顕著かなと。
まぁどっちかというとバタフライエフェクト的なもんだし、別に誰か選ばれなかったからといってその誰かが死ぬとかってことはないけど、なんだかなぁ。ハルは……誰か心優しい人が拾ってずっと飼ってくれたと思おう。
前作星織は、評判聞く限りではかなりいいみたいですが、恐らくなんですけど、それに気をよくしたメーカーが、「どこまでならユーザーは妥協してくれるか」ということを測ってたんじゃないかなぁと。
にしても、こういう(基本的に)挫折がないサクセスストーリーはどういう層に売れるのだろう、という疑問。勿論需要は間違いなくありますし、どこかが出してくれないとどこも出さないのがエロゲ業界ですから出すだけいいと思いますが、コンセプトと購入層が今一見え辛いというのはあります。
ともあれ、多分この路線で売り続けるなら、一定の需要は見込めると思うので、次回作以降はまた一人以上ヒロイン減らして、三人ぐらい(同級生、先輩、後輩みたいな感じに)のヒロインを、密度も濃く、さらに長期間(本編が子供生まれるまでとか?)にすべきなのかなぁと。
もしくは、ヒロイン一人にして2000~4000円ぐらいで純愛話。多分その方が制作側のコスパ的にもユーザーのダイマ的にも合うんじゃないかなと思うので、検討してみてほしいところ。
まぁとにかく、次回作はダイジェストはまたやめてよね……全ルートにっし~氏でいいよもう。後は白矢たつき氏。
追記
こうして見ると、やっぱりアフター編大学パート加筆して椛をパッケージヒロインにした方がよかったんじゃないの。ライターそのままで。
追記Ⅱ
てかこのシナリオの長さでBGM34曲って少なすぎねぇ!? ボーカル曲力入れるのもそうだけど、作曲者もあれだけいるんだしもうちょっと欲しいわ。
それと、終わってみるとエロ関係以外の一枚絵がどう考えても少ない。素材が妙に少なくて手抜きに見える人は見えるだろうなぁ、実際どうかは知らんが。
単純に、シナリオの長さに対しての枚数や曲数なので、気にしない人はしないかもしれないけど、自分は気になったのでここで。
追記Ⅲ
わかってる! 椛ルート、なんでもいいから歌詞書いてみると物語のイメージ膨らむすんごいわかる!
というわけで創作勢の皆様、書いてる話のイメージが膨らまない時はその話に曲がついたと妄想して歌詞を書いてみましょう。きっといい感じに発展すると思います。
追記Ⅳ
しょうゆ氏作曲「Suuny Day」のイントロがどう聞いてもPS版Chaos;Child OP曲「シンギュラリティ」ですありがとうございました。
雪月ルートでの焼き菓子みたいに上手に焼けましたってやかましいわ。そんな猟奇的なもん求めてないわ。