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Peetaroさんの恋愛、はじめましての長文感想

ユーザー
Peetaro
ゲーム
恋愛、はじめまして
ブランド
ASa Project
得点
80
参照数
377

一言コメント

オタク的ラブコメの最先端! 恋愛の繊細な機微とは無縁で大雑把。 あり得ないファンタジーだ。 でもそれが良い。 爆発しろと呟きニヤニヤしてしまう。 シンプル楽しいのだ。 ストレスフリーエロゲのお手本だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

★超主観で印象を述べます

オタクくんたちー!
素敵な青春、欲しいんでしょ?
恋愛のはじめまして、体験したいんでしょ?
大丈夫。安心して。
まだ青春に間に合うよ。
まずは肩の力を抜いて、頭空っぽにして。
難しいことなんて何も無いよ。
リラックスした後は画面の前でニヤニヤしてね。
可愛い女の子とのイチャイチャとエロをあげるから。
あり得ない青春ってとっても気持ち良いよ。
そして最後にちょっと成長したかな?くらいも見せてあげる。
プレイを終えたら勇気を出して青春の一歩を踏み出して。
さあ次は君の番だよ、アデュー!
って感じ。

こんな声が画面から聞こえてきそうな作品でしたね。
オタク文化に浸かりまくったニュータイプの気持ちに寄り添うようで、ひたすらエロゲ的非日常ラブコメしてます。
なのにひたすら日常なんです。
難しいこと皆無で日常会話の楽しさに浸れて、イイ感じに青春して、イイ感じに恋愛して。
何もかも都合が良すぎる。
そして最終的にヒロインにムラムラするんです。

要はファンタジーなんですよこれ。
現実にはあり得ないんです。
でも見たかったのもこれ。
ニヤニヤした。爆発しろって思った。
くっそう…面白かったよ。ほんとに。



★コンセプトについて

コンセプトは「成り上がり」と「はじめまして」だそうです。
天使ちゃんとの出会いから始まった青春サクセスストーリーって感じでしょうか。
“ド底辺の陰キャ主人公”とのことですが、寝言は寝て言えってやつで、伊織くんは光属性の才能を持つ陰キャです。ご都合エロゲ主人公としてのポテンシャルは完備しています。
おっぱい大きい美人の義姉に溺愛されてるって、なんなん。ワンチャン狙えってことでしょ。
もうこいつ、エロゲ主人公サラブレッドじゃん。

でもこれがなかなかに良主人公でした。
卑屈な陰キャながらも適度な素直さがあって、不快感も致命的なめんどくささもありません。
ヒロインと触れ合う中で青く根拠のない自信を抱いてくと言う、なんとも可愛らしい小者っぷりも良いです。
コンセプト通りだったかと言うとよく分かりませんけど、楽しそうな青春してる感はしっかり味わえました。



★ストレスフリーで楽しめる!

個人的に何が一番良かったかと言えば、とにかくストレスフリーに楽しめたこと。
プレイヤーのオタク性を信頼した作風と、中身の無い会話劇が良いんです。分かり手の采配。
このネタ、この感覚、このパターン、あなたは分かるよね?みたいな。
分かるーってなる!
あとえっちシーンの差し込まれるテンポも良い。
早よ見たいから。

つまりは心地良さに特化していた印象で、難しいことを考える必要がなく雑音もほぼありません。
両親は海外赴任してるご都合設定のように不要な外野が一切干渉してこないので、まるでリアルさの無い不自然さこそ正論になっているような感じです。

料理で喩えるならダシの部分が美味しいんですよ。
あとは主人公という味のベースがあって、ヒロインという調味料がある。
味に繊細さはなく大雑把だけど、食べるとめっちゃ美味しい!みたいな。
だから一気に食べきるのがもったいないというか。
伝わります、これ?
個人的には一気に進めるより毎日少しずつくらい進めるのが丁度良くて、寝る前のリラックスした時間に味わう一日最後の楽しみとなっていました。

では実際の味の中身はと言うと、とにかくゆるーいコンテンポラリーな青春。物語っていうほど物語性は無いので、恋愛のドラマチックさもありません。
惹かれる理由も付き合うきっかけも不明瞭で、繊細な心の機微の描写も無い。
でも、なんとなくはじめての恋愛が始まっている感を察っすることが出来るんですよね。
あー、これって青春かもしれないって。
要はパッションで楽しむ種類の作品なんですよ。

正統派の恋愛物語のように、特別なきっかけがなければ恋愛が始まらないなんてハードルが高すぎます。それよりも、なんとなくウマが合って、なんとなくエンカウント率が上がって、なんとなく一緒にいる時間が増えていく。
そんなところからいきなり恋愛が始まっても良いじゃないかと。
エロゲらしい”ありえない展開”で強引に捻じ込んでくれて良いじゃないかと。
そうはならんやろって呟きながらクスクス笑いたいんです。
つまり「コレナンテエロゲ?」が欲しいんですよ。
それが楽しいんです。

そうなれば結局のところ、どれだけヒロインを好きになれるかが重要ですよね。
ドラマチックな展開を主とするわけでは無いので、難しいこと考えずにヒロインの美味しい成分を堪能したいわけです。
その意味で、恋はじヒロイン達は個人的に大アタリ。
絶対推します!ってほどではありませんが、ラブコメヒロインとして絶妙と言いますか、とにかくみんなチョロくて可愛かった。えっちだった。

中でも紫の独特な距離感の詰め方はとても好みで、これぞ青春って感じ。
大人気モデルのくせして気易くて、癖が強いのにめんどくささはほどほどで、大した理由もなく好きになってもらえて、付き合ったらえっちに寛容。
中身の無い会話しかしてないのに、愛情は確かに伝わってほっこりする感覚。

惜しいのはモデル設定の使い方くらい。
もし周りからの羨望の眼差し描写が明確にあったなら、なお良し。
おそらく分かり易く“成り上がり”になり得たはず。

構造上で天使ちゃんルート入ると、どうしても避けられない胸にチクリとした痛みはあるも、決して重くなり過ぎない気軽さがあります。
すみれルートなんて不義なのにめっちゃ軽く終わるし。
でもそれで良いんですよ。
FDでは紫の寝取り展開からの仲良く3Pに雪崩れ込むっていう期待を抱く、なんとも浅はかでゲスな妄想が楽しいんです。
絶対に見たいわ、それ。



★本作にメッセージなんてあるの?

無理矢理ですが本作のメッセージみたいなものも考えてみました。
冒頭の天使ちゃんの台詞で本作におけるメッセージのようなものは出ています。
「自分から幸せになろうとしない人間は救えないよ」
自分で動かないと青春は始まらないし、ましてや恋愛なんていわずもがな。
幸せになろうと行動せよって事ですね。
ああ、なるほどな、と。

でも別にそれが素晴らしいって言いたいわけじゃないんです。というか、そんなこと考えて楽しむ作品ではありません!
最後までプレイしたら確かにそうなのかもしれませんけど、教訓めいたものや心を動かす学びのようなものはほぼありません。
むしろ考えるのもめんどくさい。
最後に「ああ、確かにそうだったかもなー」って思えるくらいが丁度良いわけです。
主人公ありきの楽しい日常会話にニヤリとして、時折差し込まれるオタク的思考に共感して、ただただ可愛いヒロイン達とイチャイチャしてダラダラしたい。
「主人公の成長?知らんがな」っていう、この塩梅が絶妙でした。

正直言えば物足りない要素だって多々あれど、それ含めてゆるーい青春だなって思うんですよね。
そう考えると結局はプレイしてて楽しかったなって感情が全てなわけで、「エロゲってこういうので良いよね」を感じることの出来る作品だったなって感想です。



★さっちゃんという天才がいた

顔が良い。身体が良い。声も良い。
中身は羊とも狼ともなりうる可能性を秘めた獣。
ちょっと、良すぎるんですが。
メインヒロインのことに全然触れてないのに、サブヒロインのさっちゃんのことを語りたくなるくらい、個人的に激しく疼いたんですよ。ナニが。
FDまでお預けですか…くっそう。

共通ルートでも恋丸ルートも、湧き上がる劣情をひしひし感じたのはさっちゃんでした。
こんなにも凄まじ才能の塊を前にお預けって。
あー、えっちシーン見たかったよ……。
なんなら恋愛なんてしなくていいから、都合よく恋丸と一緒に3Pしてほしい。
出来れば攻め受けの2パターンのハーレム展開で。
FDに繋げるための焦らしプレイですね。
分かります。
これを置き土産にするって、なかなか鬼畜ですねアサプロさん。
FDでさっちゃんにボリューム付けてくれるなら恨みながら歓喜するんだろうなー。
でも、せっかくなら1シーンくらい絡みを入れてくれたって良かったじゃん……。

というか、サブヒロインの秘めたポテンシャルがメインヒロインを喰いかねないくらい強かった。
個人的にヒロインで1番可愛かったのはすっちゃん先輩で、1番可能性を感じたのはさっちゃんで、1番えっちシーンにガッツポーズしたのは寧ちゃんでした。
なのにサブヒロインですか。
まじでアサプロさん卑怯ですよ。悔しい。
どう考えてもFD買うしかないじゃんてなりましたって話でした。



◾️最後にまとめ

結論言えば想像してた以上に面白かったです。
とにかくゆるさが良かった。
アサプロ作品に期待していたギャグ+ラブコメは十分に堪能出来ました。
今の気分に丁度良かったです。

あくまで主観ですが、こういう作品はシナリオが主の作品の合間に差し込みでプレイしてこそ輝くように思えます。
構えずリラックスして楽しめるお手本のような作品でした。
ボリュームが少ない分、余計にさっちゃんルート作ってくれと不満を抱くのも、裏を返せばやっぱり楽しかったんだなって。