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Peetaroさんの美少女万華鏡 -理と迷宮の少女-の長文感想

ユーザー
Peetaro
ゲーム
美少女万華鏡 -理と迷宮の少女-
ブランド
ωstar
得点
81
参照数
231

一言コメント

シリーズ最終作にて集大成。 万華鏡が彩る愛の欠片、ここに収束。 過去作の価値を上げる素晴らしい締め方にスタンディングオベーション。 シリーズ全てをプレイしたからこそ得られるカタルシスがありました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

★はじめに

美少女万華鏡シリーズ5作目にして最終章。
1作目の『美少女万華鏡 -呪われし伝説の少女-』が2011年12月発売なので、約9年かけてのシリーズ完結となりました。
その後も短編のオムニバス形式で展開し、作品が変われば世界観もガラッと変わる。
本作はその過去に展開した点の世界観がどのように線として繋がるかが見どころでした。

結論から言えば大満足。美少女万華鏡は短編でも楽しめますが、全てをクリアする事で大きな意味を成すシリーズで、全ての答えはこの最終章にありました。

プレイ冒頭にプレイヤーの名前を入力になに??って戸惑ったのも、最後の最後に意味を成す。
そしてクリア後はスタンディングオベーション。
うわー!そうきたか!!
さて、今回の感想はシリーズ制覇することで得られた感動と達成感を、感情のまま語らせていただこうと思います。
蓮華にポイントを絞り、もよかとか月丘女史はバッサリ端折りましたのでそこはご容赦を。

また、過去作にネタバレにならない範囲でほんの少しだけ触れますので未プレイの方はご注意を。
それではどうぞお付き合いください。



★最終章の意味とは

そもそも美少女万華鏡の物語は万華鏡が見せた物語。
怪奇小説家の青年、深見夏彦が座敷童子の蓮華が手にする万華鏡を覗き込むことで物語が始まり、4つの物語、4つの世界、4つの愛の姿をプレイヤーと共に体験したことになります。
本作はその万華鏡とはそもそも何だったのか、蓮華とは一体どんな存在なのか、そして夏彦は何故に蓮華に惹かれていたのかが明かされました。
この展開方式、なんか既視感ありますよね。
敢えて似た構成の作品を挙げるなら『白昼夢の青写真』でしょう。
もちろん内容は全く違いますが、複数の点の物語が最後に線となって意味を成し収束されるというのは大きなカタルシスを生み、同時に達成感をもたらしてくれる。
オムニバス作品とは言え、やはり全ての作品をクリアして辿り着いたからこそ、最終章に真の価値が生まれたと言えるでしょう。
あぁ、1作目から順番にプレイして良かった‥‥。
重要だったのは今までの4つの物語でみた愛の姿と輪廻転生。
そして真実の愛。

全ては夏彦と蓮華の輪廻転生、理の迷宮から脱した真実の愛の物語であったという帰結が大きなカタルシスとなりズドンと胸に響きました。
そして万華鏡が見せた物語自体が、あまりに大きな愛ゆえの念(想い)であったという答えも納得がいくもの。
やはり愛、愛なんですよ。人の想いは愛なんです。
個人的な趣向の話しですが、愛にまつわる物語大好きマンなので尚更に満足。
シリーズものとして想像以上の見事な帰結でした。



★怪奇ミステリーが舞台

本作が過去作と大きく異なるのは、万華鏡の中に真実の愛を探していた夏彦自身が主人公であるということ。
美少女万華鏡シリーズの導入は夏彦が座敷童子が出ると噂の旅館で体験する怪奇現象ですので、遂に本筋に戻ったとも言えます。
作中に出てくる稲荷神社やこっくりさんの呪いなど、どこかノスタルジックな世界観は日本人の原風景のようで不思議な安心感があって、良い塩梅の閉塞感とまとまりの良さを感じました。
怪奇現象を解き明かしていく探偵もののようなノリも面白く、推理、調査、情報共有というミステリーもののポイントも押さえて、物語にどんどん引き込まれていく感覚がありました。
また、探偵役として皇さんが良いキャラしていて、定期で物語を整理してくれるのはありがたい限り。
そして明かされた推理と謎は、また次の疑惑と謎を残していく。
なんかこういうのってワクワクしますよね。
誰かが呪いに掛かったとか、誰も辿り着けない蜃気楼のような神社とか、多分みんな好きなんじゃないでしょうか?
朧げで実態の無いものって恐怖の対象でもありますが、同時にロマンのようなものを感じてしまうのはきっと自分だけではないはずです。
とは言え、怪奇ものとしてホラー要素はあまり強くないので恐怖面でのドキドキはありませんが、様々な怪奇譚について興味をそそる語りなのが印象的でした。

この怪奇ミステリーな世界観に大きく貢献したのが背景美術でしょう。
もよかが巫女をしている神社や、赤鳥居の道、曼珠沙華が咲き誇る一面の赤など、どこか幻想的で抒情的なものがあり、非日常な空間を演出していたと思います。
背景美術に限らずビジュアル面の素晴らしさは今更で、シリーズ共通の強みであったことは言うまでもありませんね。
あと今回は触れませんが、音楽もこの世界観に確実に寄与していたと思います。



★蓮華の想像を超えた可愛さ

ちょっと、これは反則ですよ。まじで可愛すぎた‥‥。
そもそも1作目から登場していた蓮華さん。少女のあどけなさと日本的な美しさを併せ持つ容姿。
ポテンシャルの高さを感じつつも、あくまでそれは見た目の話し。
果たしてどんな少女かまでは明かされませんでしたので、本作にてようやく答え合わせとなりました。
照れてもじもじしたり、月丘女史やもよかに嫉妬したりところころ表情を変える蓮華が可愛すぎました。
しかもツンデレなのがまた良い。
ヒロイン力を戦闘力として測るスカウターがあれば、計測と同時にボン!です。
ご飯をもぐもぐしてるSD絵すら悶えます。
でもただ可愛いだけではなく、少女の姿なのに妖艶さを感じてしまう。
あ、決して幼女好きとかではないですよ‥‥?
この妖艶さは八宝備仁さんの美麗なCGと、蓮華役の真中海さんのお声の力があったからこそ。
この理にちっぱいは関係ありません。
黒髪ロングと艶っぽい声って相性抜群なんです。
イベントCGの上目遣いの表情に甘く艶っぽい声、それなのに仕草は少女。
これはプレイヤーの精神に対する暴力であり祝福。もう堪りませんでした。



★愛の理の輪と愛の真価

シリーズの核心であり、最終章で語られた真実。夏彦が探していたのは、悲恋のまま輪廻転生した理の迷宮に囚われた蓮華そのもの。
理の意味として、もしかしたら正しくはないかも知れませんが敢えてそう結論付けます。
でも愛の理の輪としてみれば恐らく間違ってはいないはず。
過去作で語られたものが、夏彦が探していた“愛の欠片”とした事が本当に素晴らしいですよね。
万華鏡が見せた4つの物語が意味を成し、純粋でひたむきな想いは、信じて疑わなければ必ず叶うという強い信念となる。そして夏彦は、愛の欠片から愛の真価を見て、輪廻転生の先に心の底から蓮華を愛する勇気と、永遠の愛を誓い真理を知る事になります。

愛の記憶。世界は愛で繋がっている。歴史の営みこそが愛。
「この世界の真理とは、愛の記録だよ」
これまで様々な創作物でテーマとされた愛ですが、ここもで潔く愛こそが世界そのものだと言い切った作品ってあまりなかった気がします。
しかも、かなり広い視野の中に愛を語るのが凄いところ。
だって2人の愛は宇宙規模の話になっていますからね。

「この広い世界で、宇宙の銀河系の中で、僕は君に出会えた」
「その奇跡を手放したくないと思うのは、我儘ですか?」
そして最後は二人の愛の話に。
このスケール感は言葉にしたら陳腐ですが、本作には輪廻転生と愛の理の輪という真理が語られるので、ストンと腹落ちする感覚がありました。
途方もない不思議な説得力に感じます。

運命に抗い、愛を確かめ合った場所が、曼珠沙華の咲き誇る一面の赤というのが花言葉の暗喩ですよね。
そして再び試練の輪廻転生。また会えると約束して二人の命が万華鏡に取り込まれる。
回転する万華鏡の鏡の中の煌めきが、まるで宇宙の星屑だと言い、一緒に宇宙を旅すると喩える。
これって何万、何億光年離れていたって再び巡り逢う約束の意味も含まれるはずなので、愛のスケールの大きさに圧倒されますよね。
ライターの吉祥寺ドロレスさんってもの凄いロマンチストなのかなって思いますし、心の底から称賛を贈りたいほど素敵だなと感動を覚えます。
儚くもこの上ないほど美しい愛の理の循環でした。
愛って、すごいな‥‥。
またこの時、愛の欠片が何であったかも語られるので、過去作の答え合わせも兼ねていました。
備忘録としてまとめれば、

1作目『呪われし伝説の少女』は、愛する人のためなら命すら投げ出せる”無償の愛”

2作目『忘れな草と永遠の少女』は、決して諦めず、どんなに時が経っても愛する人を忘れない”尊い愛”

3作目『神が造りたもうた少女たち』は、素直に愛してると言える、決して自分を偽らない”真実の愛”

4作目『罪と罰の少女』は、禁じられても貫き、背徳であっても振り返らない”純粋な愛”

夏彦がこの愛の欠片を見つけたからこそ、過去4作の価値が確約されたと言えるでしょう。
美少女万華鏡シリーズをプレイしたきっかけが、可愛いを気軽に摂取できるロープラ抜きゲーと思ったからだったので、今振り返ればとんでもない勘違いでした。
間違いなく上質な愛の物語であったと断言します。



★輪廻転生した約束の先には

物語のエピローグは夏彦と蓮華が転生した新たな物語でした。
二人が悠久の時を超え、ようやく結ばれた正真正銘のハッピーエンドです。
面白いのはプレイヤーを巻き込んだメタ要素を取り入れていることでしょう。
そういえばプレイの冒頭にプレイヤー名を入力したけど、何だったんだろうって思っていた答えでもありましたね。
夏彦の転生した先はまさかの自分でしたw
大学生として転生した夏彦が同じく転生した蓮華と再び巡り会うその時にエンディング曲。
めちゃくちゃベタですし、なんなら『君の名は』じゃん!って思いましたけど、やっぱり二人の積み重ねた想いを見てきてますからね。
素直にジーンと胸に染み渡る感動がありました。

最後の巡り逢いを、ご都合展開だと思う方もいるでしょう。
でも主観で言わせてもらえば、そんなご都合なんてどうだっていいです。
悲恋で終わり続け、白狐の怨霊に堕ちるまで苦しんだにも関わらず、愛を諦めなかった二人が輪廻転生の先にようやく結ばれたんです。
それだけで最高じゃないですか。
いきなりくんずほぐれつの関係になったとしても仕方無しです。
だって、溢れるほどの愛を堰き止めることなんて出来ませんから。
幸せな姿を見られたのが本当に嬉しくて、心から満たされました。

ベンチに置かれた万華鏡はどこに行くのでしょううね。
輪廻転生は終わらないという暗喩なのでしょうか。
含みのある余韻を残し、ここに物語は終幕します。
最高のシリーズエンディングをありがとうございます。



★ボリューム満点のえちシーンについて

これぞ美少女万華鏡シリーズの真髄。やはり語らずにはいられません。
クオリティについて語るのは今更ですが、改めてR18ビジュアルノベル作品として非常に完成度の高いと思い知らされました。
八宝備仁さんのビジュアルは業界最高峰と言っても過言ではなく、ヒロインとの愛の発露にてアニメーションで動くというのはやはり素晴らしい。
今回も圧倒的に美麗なシーンばかりで溜息が出るほどで、構図の素晴らしさもこの上なし。
ボリュームとしてもシーン数は21とロープラ作品としてみても相当多い方かと思います。
至れり尽くせりとはまさにこの事です。
実用性に関しては色々な捉え方があるので言及し難いですが、自分としてはやはり芸術を見ているような感覚が先行します。

さて、今回注目したいのは転生した蓮華とのシーン。
美しい顔面アップだけでなく上半身までアップ。
しかもアニメーション付きで画像スクロール可なのが素晴らしい。
案外こういった構図ってありませんからね。
前作『罪と罰の少女』有莉シーンの正統進化と言えるでしょう。
ぜひ今後のシリーズにも踏襲していただきたい。
あとは前々から思っていた事ですが、シーンテキストの淫語が凄い。
いや、凄いっていうか、うーん、語彙力豊富というか‥‥。
ごめんw もうこれ、なんか笑えてくるw
これは果たしてエロいんでしょうか?奥深過ぎてよく分かりません!!
きっとライターさんがノリノリで書いているんじゃないかと。
よくここまでキラーワードが出てくるなと感心してしまいます。
言葉の想像力豊かで凄いなーって感想です。これも才能ですよね。



◾️最後にまとめ

シリーズを振り返って思うのは、本当にプレイ出来て良かったという事。
全ては愛なんです。儚くも美しい愛なんですよ。
素晴らしい作品と好きな作品は必ずしもイコールではないと思っていますが、美少女万華鏡シリーズは明確に好きな作品であったと断言できます。
愛を語る作品は数多ありますが、その中でも大好きな味付けの作品でした。
もっともっと評価されて然るべきシリーズですよ。
さて、今月末には新シリーズ『美少女万華鏡異聞』がスタートします。
それまでにシリーズ制覇を目標にしていたので、クリアした達成感と、今度はどんな美しい愛を見せてくれるのかという期待感に浸ってしまいますね。
それでは次回の新シリーズを楽しみに胸を躍らせつつ、この感想を締めさせていただきます。

美少女万華鏡という素晴らしい愛の物語を紡いでくれたオメガスターの皆様、制作に関わられた全ての方に感謝を。
また、この感想に最後までお付き合いくださったあなたにも最大限の感謝を。
ありがとうございました。