ErogameScape -エロゲー批評空間-

PRIMOさんの聖なるかな -The Spirit of Eternity Sword 2-の長文感想

ユーザー
PRIMO
ゲーム
聖なるかな -The Spirit of Eternity Sword 2-
ブランド
XUSE
得点
90
参照数
2306

一言コメント

SLGは前作より大幅進化しているが、シナリオがかなり退化。プレイ時間も尋常ではないので、アセリア好きしかお勧めできない 追記:60時間プレイすれば熱い展開が!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

正直、あの永遠のアセリアの続編が発表されたとき、飛び上がって喜んだものだ(大げさ)
大作ものは大抵が1作で終わってしまうエロゲ業界において、マブラヴオルタに並ぶ超大作続編であるのは間違いなく、
その作品における期待も他の作品に比較できないほど大きい。

『永遠のアセリア』の続編である『聖なるかな』はその期待に応えられたのだろうか?
一つ一つ検証していきたいと思う。



まずプレイ時間について。 1週目クリア45時間と平均的なクリアタイムだろう。AVGパートを飛ばしまくったとしても
初回プレイは40時間程度はかかる。よってこのゲームをクリアするには夏休みなどの時間を使って一気に進めてしまうか
ちまちまと日数をかけてやるほか無い。
章の数も倍近くに増えており、周回プレイを考えるとかなりのボリューム(作業量)になりそうだ。

これらの面において、クリアしようと思ったら努力も何もまずは時間が必要であるといえる。



CGについて。 (前作:-20点 今作:90点)

前作は特にCGが壊滅的被害を受けており、キャラの性格、シナリオ云々の以前に嫌悪感が先にでた。
さすがに前作の反省はされているようで、今作は見た目だけならどのキャラも好きだ。
自分が気に入ったのは小ものべーやカティマやルプトナ。

特に小ものべーの可愛さは異常。 あんな可愛い生き物がいたら保護動物に指定されちゃいますよ。

しかし、18禁の宿命であるエッチシーンに行くまでにははっきり言って茨の道が待っていく。
前作もそうだが、抜かせるための18禁ではなく、売るために仕方なく18禁というスタンスは変わっていない。
エロが薄いとかそこまでいけねーという人はただの情報収集不足だろう。


音楽について。 (前作:95点 今作:80点)


ステージ音楽は前作同様、雰囲気にあったいい音楽だと思うんだが、テーマソングについては
OP、ED共にレベルが落ちているのではないか?
同じ『川村ゆみ』さんが歌っているのだが、前作みたいなかっこよさとか壮大感が伝わってこないんだよな。



SLGパートについて。 (前作80点 今作:95-5=90点)

前作の評価では『エロゲーの割には作りこまれている』という評価であり、PS2版をやってみたが
はっきりいって駄目駄目だった。←というか操作性が悪すぎ、ロードが遅すぎ
今作では前作に比べて欠点がかなり改善されており、やっていて面白い、やりがいのあるものだったと思う。
その反面、難易度もあがっているため、途中でクリアできなくなるというか、心が折れてしまう場合も多々あるだろう。

まず管理しなければならないパラメータが増えた。戦闘マナ、行動IP、マテリアル、フォース等々である。
また、相手の属性、3つのスキルの使い分け、設置スキルなど局面が多彩になり戦闘ターンも増えたことにより
前作の数倍の戦略性を持たせられるようになった。
前作の戦闘システムの欠点だった、

①各色によって担当ロールが完全に決まる。
②スキル回数が足りなくなり、拠点を行ったりきたりし、めんどくさいだけ。
③勝てる勝てないがあらかじめはっきりしている(戦闘始まったら結果が勝手にでる)
④ボス戦は強いやつを3人集めるだけで戦略性がない

がすべて解消されている。
緑をディフェンダーに固定してたら、赤や黒の攻撃でばしばし減らされていくし、最初は赤に攻撃をさせ、次にサポートに
まわすことで効率の良いダメージを与えられたり、特に設置スキルは戦略の大きな鍵だろう。
自分が想像したとおりに事が運ぶと思わずニヤリとしてしまう。
もちろん、気を抜くと知らない間に大ダメージを食らってしまったりもあり、戦闘1つ1つが楽しいと思う。
特にボス戦は前作では消化試合だったのに、今作はしっかりと作戦を練らないと簡単に全滅してしまう。
あれよこれよと作戦の練る時間も楽しいものだった。

ただ、ボスが強すぎて勝てる作戦というのは限られてしまうこと、は問題といえば問題かもしれない。
正解分からないから誰かに聞いたり諦めたりする可能性もある。3、4章の場合はかなりきつい。
自分の場合はスキル消化大作戦と名づけてとことん相手のスキル残数を削る作戦を取りました。
見事に相手が嵌ったときは後は笑いながら殺すのみと快感でしたね。

マップ移動も行動力が関係してきて、離れた拠点を制圧する戦力計算とか(といっても敵が見えない場合も多いので
勘になりますが)
高速制覇方法を模索するのも楽しい。

と、途中までは良いバランスで面白かったのですが、エターナルが入ってきた辺りから
はっきり言ってつまらん戦闘になりました。エターナルとまた、後半ではいるスキルが反則的に強い。
作戦とか戦略とかそんなもの無視して暴れてるだけ。鬼とかした金田キャラ(笑)は
2ターン後には全体に4000のダメージが降り、もし、相手が瀕死で生き残っていたら次のターンで戦闘終了→全回復
一色キャラ(笑)は戦略などもう不要。
後半に入った途端にバランスが崩壊、というかこれってシステムのせいじゃなくって完全にシナリオが悪いよね?
もっと違うシナリオならここまで崩壊することは無かったと思う。

ということでこれがマイナス4点。

あと異常に横文字が多く、いちいち調べないと意味が分からない場合が多く、また説明も不親切で
前作アセリアの基礎知識が無いとかなり覚えるのは大変だと思う。
細かい点はどこにも書いていなく、やりながら理解していくしかない。
マニュアルだけではなく、ゲーム内の操作説明もよく読んで、それらに載っていないことは自分で試してみて・・・。

そういう不親切さがハードルをあげているのでマイナス1点。

とシナリオさえ邪魔しなければかなりの高得点だったと思う。難易度的にはかなり難しく、今時?のAVGゲーマーには
辛いかもしれないが嵌れば抜け出せないかもしれない。




シナリオについて。 (前作85点 今作:60点)

物部学園様ご一行、時間樹旅行にご案内いたしまーす。
最初の目的地、あちらに見えますのが『剣の世界』。
文明レベルとしましては私たちの世界よりも5世紀ほど遡ったあたりでしょうか。(以下、歴史・文化の紹介)

あれれれれ???ひょっとしてシナリオを通して世界観を語りたいだけじゃないの?
そこにある人の想いとか、悲惨さとかは一体どこへいったわけ?

前作のシナリオを超簡単におさらいすると 
①現代の社会からファンタスマゴリアという剣と魔法のファンタジー世界に召還される。
②その世界では言葉すら通じず、妹も人質に取られて戦いを強制される。
③様々な思惑が交錯する中、親友を殺さなければならない事態になり、殺してしまう
④戦いがエターナルの陰謀ということが分かり、自分がエターナルにならなければ世界が滅んでしまう
⑤エターナルになることで人間としての存在も記録も失われてしまう
⑥世界は救えたが、エターナルの宿命として永遠に戦いに赴かなくてはならなくなる。

前作の主人公ユウトには強さに重みがあった。それは親友すら殺したこと、人間を捨て人々の記憶から消えてしまったこと、
それらの悲しみの代償として、大きな力『エターナル』の剣位を得ることができた。
聖賢のユウト、その力は悲しみの代償と言えよう。

今作の主人公望にはそれがあっただろうか。物部生徒は誰も死なず、旅団メンバーとて誰も欠けない。
強さの象徴である、カットイン必殺技は神名を取り戻したから使えるようになったとのことだが、
元々の力を取り戻しただけに過ぎない。
ヒロイン、サブヒロインなんかはもっと酷く、敵を倒した、アイテム落とした、カットイン必殺技ゲットだぜぇ!
なんちゅーインフレだよ。金田カットイン技なんてエターナルなんて目じゃないほど強いぜ。

とにもかくにも、結局望は仲間を守りたい、取り戻したいだけであり、そこには悲しみがない。
人が死ねばいいという話ではないが、なにかしらの犠牲がない話を見ているとご都合展開の笑い話にしか見えないのが現実だ。

時間樹、管理者、北天の神、南天の神、上位永遠真剣キャラ、なぞのエターナル、創生神、色々でてきたのだが、
すべて後半になればなるほど、ただの顔見世に終わった気がする。おそらくこの続きは次回作で、ということだろうが。

あと、設定的にはあり得ないトンでもキャラが入ってしまったため、このせいで世界観もゲームもバランスを崩しまくり。


校舎内の掛け合いははっきりいって普通。前作も日常はあまり面白くなかったのだが、それよりは多少マシになったのではないだろうか・
青山さんが何度もキスられ、汚れていく様(仮)は多少は楽しめたと思う。

まとめると、あまりにご都合主義で、シナリオに重みが出せていないこと。
数々の設定が追加されたが顔見せ程度だし、謎も深まるばかりだった。
前作を踏襲して、今回はロウ・エターナル陣営の観点からのシナリオにしてもよっぽど面白かったと思うんだが。


①物部学園ごと移動させてしまうことは言葉の問題、生徒、生活の問題等々含めて、ご都合主義にしかならず、シナリオの足かせに
②主人公の戦いの動機は最初から最後まで仲間仲間仲間であり、流されていっただけである
③新設定が旧設定に上乗せされるのは良いが、うまく乗りきっていないように感じる


シナリオは完全に前作のほうが良かっただろう。もし、これで前作並のシナリオならば総合得点は99点を与えていたと思う。



まとめて。

まだ一週目なので、周回プレイで色々変わってくるかもしれないので、とりあえず暫定評価87点。
前作のそれなりにまとまっていたのにCGが足を引っ張ったと同じく、
今作は非常に高いレベルでまとまっているのにシナリオが足を引っ張った。

CGは後で書きなおせるが(リメイク)シナリオは基本的に書き直せないので、かなり致命傷だろう。

時間と根気があり、アセリアが好きな人はプレイすべし!・・・か?

追記(8/15)

2週目から攻略できるキャラが増えるが、このキャラをクリアしたら少し評価が
あがりました。おそらくこのルートが公式ルートだと思います。
ただ、そのルートにいくまでに60時間くらい(多少スキップ含)かかるので
なんつー嫌がらせかと思われます。

公式ルートといっても途中のちょっとと最後だけ違うだけでSLG部分が楽しめないと
作業をやらされている感になりますが是非とも最低2人はクリアしてほしいかと。


特に真ラストバトルは「永遠のアセリア」でおなじみのあの曲のアレンジVERが
流れ、お互いの超必殺技が乱れ飛ぶというまさに超バトルが展開されます。

このバトルは賛否両論かもしれませんが、絶対にやっておくべきだと思います。

最初からこの展開にしておけば多少は評価が上がったかもしれないのに、
なんていうサドですが、ザウスさん・・・・。

ということで真ラストが熱かったので点数を上げて90点としておきます。

PS:
現在スーパーハード中。こちらのスキルが少ないしレベル低いのに相手の緑ユニットの
回復がしつこくてSS取れなくて \(^o^)/オワタ

前世からやり直すか orz