あとは作品の雰囲気だけ気をつければ満点だったのに。
今まで色々なゲームをやってきたがこれほど良く出来たシナリオはおそらく過去には無かったかと。
なんで一般ゲームをこんなエロゲー批評空間で語っているんだ?という話もあるが一般ゲーが評価される場所が
増えること、そしてそれを見てプレイヤーが増えることは素直にいいことだと思う。
さて、このゲームの評価の大部分、というか全部を占めているのが『伏線』の存在である。
プレイヤーが4人のシナリオを進めれば進めるほど え? それはおかしいだろう?とかそれは
ありえないだろうといういくつもの疑問が生まれてくる。そして、それを回収しないうちに
個々のシナリオは終わってしまう。そう、『疑問』というパズルのピースはすごく歪な形でどこにも
はまらない。どこにはめるべきかもうまく検討が付かない。ピースはゲームを進めることに溜まっていき
それは袋の中にぎっしりと詰まってしまう。
この状態で最終シナリオをプレイする。
プレイヤーはここで残りのピースと今まで溜めていたピースの配置位置を知ることになる。
するとどうだろう?今まで袋の中に嫌になるほどたまっていたピースが面白いようにはまっていくではないか!
そしてそのピースが埋まった時プレイヤーが目にしたものは『3Dアート』だった。
『3Dアート』には何が書いてあるのか?その中身を見たときに何をしなければいけないのか?
それがEVER17の『伏線』の到着点であり、目的でもある。
よく伏線とはパズルの中の1ピースにすぎず、それがある無しで全体像が分かるか分からないかにすぎない場合が多い。
わざわざ結末に持ってくることによってプレイヤーに衝撃を与える、プレイヤーを騙す、シナリオを完結させる=つまりは目的。
しかしこの作品ではパズルですらまだ伏線の途中=手段なのだ。
完成したパズルを『3Dアート的な視点』で見てみたときに本当に伝えたいことがそこにある。
なぜこのような面倒なことをしたのか?それにもちゃんと理由があり、例えばそれを第三者が見ても
ただの模様にしか見えない、その本人にしか伝わらない、等々。
登場人物達の目的と伏線と理由が見事に絡み合い、お互いに無くてはならないものになっている、その構成力と発想は
本当にすばらしいものである。もちろん、細かい点でおかしいと思われる点は多数ある。ネタは後に出したほうが有利。伏線というネタを
出されたならそれのおかしい点を淡々と指摘してやることは容易であるが、それをやりすぎるのは不粋だろう。
とにかく素晴らしいシナリオだった、それは間違いない。
シナリオだけ見れば、である。残念ながらゲームはシナリオだけでは構成されないため、この作品ではその他が足を引っ張っている。
音楽もよかった、声も(ノイズがひどいものもあったが)それなりに良かった、絵も良かった、システムもそこまで悪くなかった。
そう、せっかくの良いシナリオをぶっ壊してしまったのが『雰囲気』である。
なんなんだ、この緊張感が全く無い雰囲気は。5日後には水圧でつぶれてぺっちゃんこなんだぞ?
ああ、あと5日間もあるからいいや、なんて誰が思う。色々な箇所が水圧で徐々に潰れていっている=死の予感が近づいている。
明日には自分が寝ている部屋があっという間に潰れてしまうかもしれない。そういう恐怖と葛藤がなければ
『目的』が弱くなりすぎてしまう。
その点さえクリアできていれば過去最高の作品になっただろうに・・・。非常に残念。