コロニーの中で『大空』を目指すという近未来SF的な舞台設定。それぞれの信念と魅力を持ち修羅場でもどこか微笑ましいキャラクター達、この二つは◎ もしこれらを80%でも引き出せるような演出があるのならば、それはたぶん90点台後半の名作になったはずで非常に悔やまれる。この作品で例えるならば『自由な空があるのに、後は羽が足りない』と言ったところかな。
あけましておめでとうございます。 2010年もちょくちょくレビューを投下していきたいと思ってます。
多少分かりやすくてプレイ感想を素直に伝えられて面白い文章がかけますように。
さて。一言感想で書いたように 基本は近未来SFモノ+学園モノ+飛行機がテーマですが 実はこういう作品って意外に少ないのかもしれません。
自分がプレイした作品の中ではR.U.R.U.Rやハローワールドが雰囲気的にはちょっと近い気がしますが、これらの作品と違い明るく平和で楽しい世界です。
箱庭的ではありますが、中の人達はそれを知ろうが知るまいがおそらくは純粋な意味での幸せな世界だと思うし、逆に主人公(+師匠)は
そんな世界に満足が出来ない、贅沢すぎる悩みなだけのかもしれません。
また、作品のストーリーとは別にコロニー文化や裏設定、面白話を座談会形式で紹介するコーナーがあり、これが非常に面白い。
なぜコロニーができたのか、コロニーの中の生活はどのようになっているのか、性文化はどこまで進んでいるのか、等々 重要なことからどうでもいいこと(笑)まで
軽快な音楽とテンポのよい掛け合いで分かりやすく解説してくれます。
もともとこういう座談会形式での裏話とか、そいうのが大好きなんでこれを聞いてるだけでも世界観に愛着がもてました。
下手に重い世界観の押し付けもないので、こういう雰囲気が好きな人にとっては外れはないでしょう。
基本的にこのような平和で楽しい世界観なので、登場する人物もそれに習っています。
計算高く自由に生きるレティに、損ばかりこいている癖にツンデレからヤンデレまで美味しく使いこなす莉音、元気妹的存在かつエロエロトークでお仕置されるあきら、
天然で融通が利かないフライト馬鹿な春子、そしてお姉さんみたいな猫であるノエル(攻略できることに驚いたw)
これらのヒロイン達も世界観と相成って非常に魅力的な存在です。
当然ヒロイン同士なので嫉妬展開や喧嘩といったものもありますが、それらも含めて楽しく笑わさせてもらいました。
世界観やヒロイン達を高い次元で明るく楽しく纏めた作品でエロゲーとしては十分な出来ではないでしょうか。気楽にプレイできるという意味では全く欠点のない作品だと思います。
逆に、世界観とヒロイン達が高い次元で纏まっているからこそ、残念な点が見えてきます。
他の方々も指摘されていますが、やはり演出面という意味で弱すぎるところでしょう。 演出をしすぎると気楽にプレイするという意味では足枷になりがちですが、
これだけ世界観がしっかりとしているのならば、足枷を恐れずにもっとより高みを目指せたと思います。
まずは一番気になったのが、世界が付いている2重の嘘、 という部分。 他の人達は1番目の嘘に騙されており、主人公は2番目の嘘に騙されている状態です。
そのせいで父親と仲が悪くなり、フライトにも悪影響が出ているのですが、演出が弱すぎて2番目の嘘の意味が薄れていること。
それはコロニーの外、というこの作品の中で一番大きな設定であろうところにも影響をし、必要以上に世界観が軽くなってしまった節が見られます。
そして、師匠の『声』
これも使うタイミングによってはお涙頂戴~涙腺崩壊 出来るほどの力があったはず。3年前、コロニーが実はこうなるのを分かっていて『空』を目指したのならば、
もっと重要な意味を持たせられたかもしれません。
レティのエンディングの続きやグランドフィナーレなど、文章だけでなく、一枚絵のひとつでもあればまた違ったことでしょう。
後は出来ればフライトや試合の演出もほしかった所ですね。 技術名で言われてもどういう動きなのか想像できませんし。
まとめ。
求めるものがどこまでかで評価が変わると思います。
体験版で垣間見えた明るく楽しい雰囲気は終盤まで続き、サイドストーリーやアーカイブ(座談会)もそういった話が多いため気軽にプレイでき非常に楽しいです。
山吹色の菓子を用意しレティの入浴にお邪魔して結局ばれてお仕置されたり、主人公同性愛疑惑で勝手に盛り上がったりと、世界観等は置いておいてエロゲ的に楽しめました。
反面 綺麗に纏まっている分、そこから上を求めようとすると演出不足が目立ちやや物足りないかもしれません。
いくらでも名作を目指せた、その魅力を持っている 非常に惜しい作品だと思います。
もう少し演出という羽がしっかりしていれば、次元の違った評価に成りえたでしょう。
ただ、あっぷりけにその力があるのは十分証明されたため、今後も期待です。 それまで過去作品を漁ってみたくなりました。