シナリオにもちょっと力を入れつつ手堅くまとまったお手軽抜きゲー。
基本的には抜きゲー枠の本作。近ごろ流行りの異世界ファンタジーを取り入れ、ネトゲー(FPS)プレイ中に「勇者」として異世界に召喚された主人公が、現代兵器の力と知識を借りて、剣と魔法の世界で大活躍するというテンプレ展開で進行する。
使われる兵器もアイディアも使い古されたものが多く、そのあたりには特に見るべきところはない。グラフィックも無いので、作品としても別に力を入れたいところではなかったのだろう。かといって、ストーリーそっちのけでエロにばかり励んでいるかというとそういうわけでもなく、3人のヒロインそれぞれに、そこそこ凝ったストーリーが用意されている。
騎士(戦士?)リーナと結ばれると、領地経営から意外な人物との共闘を経て世界を救う戦いへ。魔法使いカチュアの場合は、怪しげな実験に付き合わされた結果巻き起こる騒動の解決に奔走する。エルフの弓使いアイーダとの生活を選ぶと、彼女の故郷であるエルフの森へ行き、ある儀式に参加することになる。
どのルートも丁寧に作られていたが、個人的にはアイーダの話が一番好みだった。無表情なようでいて、素直になれずに主人公との関係に対してあれこれ思い悩んでいる姿はとても可愛いし、実は全キャラの中でいちばん感情の起伏が激しい。2人の仲がすすむといろいろな表情を見せてくれると、「特別」な存在になったなぁと感慨深いものがある。
また、このルートは主人公の見せ場がもっとも多い。わりと異種族に対して冷たいエルフたちに囲まれ、堂々と振る舞って実力を認められていくサクセス・ストーリーにもなっていて、エンターテインメント的な楽しさもあった。もちろん他のルートがつまらないわけではないが、アイーダの物語がぬきんでて面白かった。
話が前後するが、ヒロインは、リーナ、カチュア、アイーダに加えてサブヒロインの魔王。全員巨乳。CG差分抜き58枚、シーン数26(リーナ8、カチュア10、アイーダ7、魔王1 ※リーナとカチュアには魔王との3Pあり)。フェラかパイズリかなど、Hシーン内で選択肢があり、シナリオ分岐はしないがHの内容が変わる。ちなみに、腋や髪など特殊な方向性のものはほぼナシ。「おっぱいは見せるもの」という設定もそれ程深くは関わってはこない。
Hについてはさすがのひとこと。グラフィックや音声面のシコリティが高いことに加え、体位が各キャラまんべんなく用意されているなどバランスへの目配りが効いている。前述の通りストーリー性もあるので、ただただお猿さんのようにHしまくるのに較べると、ずいぶんムードのあるHが楽しめる。また、全裸にならず半裸、あるいはほぼ着衣状態のシーンが多いのも好印象。ファンタジーものというのは服装におおきな特徴があるので、これは当然の配慮だと思うのだが、Hシーンになるととりあえず裸にひん剥いてしまう無粋な主人公が世間には多いのも事実である。
残念だったのは、ファンタジーに特有のネタがあまりなかったところ。「らしい」シーンといえば、アイーダがスライムに襲われるくらいだろうか。バイブを使ったりするよりは剣を使って欲しいし、せっかくなのだから魔法で分身したり、オークに化けてイメージプレイをしたり、透明になって街中でエロいことをしたり……という具合に、ちょっとしたヒネリがあっても良かったと思う。その辺、設定を活かしきれていないし、ファンタジーに期待する層へのアピールが足りていない。
これはストーリー面でも同様で、「異世界」が単にドラゴンが飛んできて魔法が飛び交う世界として扱われてしまっていたのが寂しい。これは多分に個人的な好みの問題になるが、異世界には独自の文化があり、そこに暮らす人びとがいる。『ネバーエンディングストーリー』ならファンタージェン、『ゼロの使い魔』ならハルキゲニアというように、異世界の物語に胸躍るのは、そこに「ここではないどこか」への憧れを刺激する具体性があるからだ。この世界に行けば、きっとこんな暮らしが待っているのだろうと想像させる力が。そこのところで本作の異世界は、せいぜい「設定」止まりであり、飾り程度のものでしかなかった。細かい矛盾や突っ込みどころが目立ったのも、世界に具体性がなく、イメージが明確になっていないゆえだろう。
とはいえコンセプトを考えれば、そこまで求めるのは「ないものねだり」になるかもしれない。適度な長さで、ちょっといい話もついてくる、エロ方面に力を入れたミドルプライスゲーム。属性がヒットしていれば、優雅な週末を送るのにうってつけの作品である。