さて、そろそろこの感想にけりをつけてしまおう。……PCが音をたてている。何か巨大なものが身体をぶつけているかのような音を。だが、ディスプレイを押し破ったところで私を見つけられはしない。いや、そんな! あの触手は何だ!
sealからクトゥルー絡みの作品が出る。それを聞いて真っ先に想像したのは、《這い寄る混沌》ならぬ新たな神性・《聳え立つ糞》と遭遇してダイスロールに大敗北の後、めでたくSAN値直葬された私たちが、「窓に! 窓に!」とか叫びながらゲームウィンドウを強制シャットダウン。最期に「こりゃあ姦話」という謎のことばを残して姿を消す展開だったのですが……。思ったより普通だったことを喜べば良いのか悲しめば良いのか、ちょっと良くわかりません。
とはいえ、世間の話題がすっかり「艦これ」に移った今になってクトゥルフを召喚してくるワンテンポ遅れた時代感覚だとか、「神話」を「姦話」に変えただけの、何のひねりもないイモくさいタイトルセンスですとか、「何だ、こいつらは……」「こいつらは……クトゥルフだ!!!」という勢いだけで意味不明なキャッチコピーとか。どれをとっても三百六十度全方位から一斉射撃を食らって蜂の巣轟沈待ったなしな感じで、「さすがseal」と唸れるところもきちんと残っているところがまた小粋でもあります。
さて本作は、タイトル通り「クトゥルフ神話」がモチーフ。ただし、「ニャル子さん」のような邪神たちの萌え擬人化路線ではなく、原作小説群のコズミック・ホラーな雰囲気を踏襲した異種姦ダークファンタジー。触手やら蟲やら獣やらにズッコンバッコンやられてアヘアヘしてる女の子を眺めて悦しむ作品です。
女学生・三日月彩希。その正体は、年の時を生きてきた土地の守り神。地域を脅かす妖怪たちと戦っています。孤独な生を送ってきた彼女にも、長い生の中で唯一と言える友人(一条雫)ができたのですが、最近彩希は、雫が謎の化物に殺される夢をたびたび見るようになります。折しも二人の通う学園では「異形のバケモノを見た」という報告が相次ぎ、不審に思った彩希は、親友を守るため噂の調査に乗り出して……というのが大まかな筋。
意味深な設定がいろいろとついているものの、ストーリー性はあってないようなもので、クトゥルフも背景も特に気にせず読み進めることができます。
と、いうよりも。気にしたら読んでいられないわけで。ぶっちゃけ。
たとえば彩希は、仮にも千年もの長きにわたり街を妖怪から守り続けてきた戦闘のプロ。……のハズなのですが、戦闘中に油断をするわよそ見をするわ、敵の正体も分からずにがむしゃらに特攻を仕掛けては負けるわ、どう見ても完全にシロートさん。
また途中からは、「もう油断はしない!」と言った数分後、邪神に背後をとられて滅茶苦茶犯されているというのがパターン化。「絶対チ○ポなんかに負けたりしない!!」から「チ○ポには勝てなかったよ……」 へのコンボにも似た、一種様式美的な独特の風情を醸し出してなんとも言えない気持ちになります。
他にも、遠く離れたところにいる彩希の気配を察知する力を持っているはずの真菜が「彩希はどこにいるの」と愚痴ってみたり、細かいところでツッコミどころをあげているとわりとキリがなく。
大枠だけ見ても、なぜクトゥルフたちがあらわれたのか、なぜ彩希を狙うのか、真菜に感情が芽生えたのはどうしてかといった、伏線っぽくバラ撒かれた話題もきちんと回収されなかったりですとか。結局、「気にしたら負け」の精神で、とにかくサクサクとエロシーンを拝むのが正解でしょう。
見どころとしては、20種類に及ぶバリエーション豊かな旧支配者たちとの交合シチュエーション、人間では耐えられないようなハードな責め、出来のいいCG、そして声優さんたちの熱演。このあたりになってくるでしょうか。特に音声は、「ああっ、じぇんぶがひもいいっ! めも、はなも、ぐちも、ほおっ、おおう、まんこみたいに、かんじちゃうの!」とか、「ひぎぃぃんっ、ぎんもぢいぃいいいい! ぷしゃあああああぁぁぁって、まんこかぁら、れてひってるぅぅぅぅぅーーーーーっ!!」のような絶叫絶頂がメインなので、演技力が高かったのは嬉しいところ。
旧支配者(邪神類)たちについて触れておくと、姿形や能力について「神話」の基本設定を踏まえていたり、CGも概ね流通している「神話」のイラストから大きく外れないイメージで描かれていて、最低限のクトゥルフっぽさは演出できていると感じました。「異形」の姿を全く描かないとか、てんでトンチンカンで適当なグラフィックにしたりとか、そういうことはありません。もっとも、体長1600メートルのシュド=メルがなんで人間と同じ大きさなのとか、そういうディテールで「んっ?」となることはありますけれど。
ただ、特にこだわりを感じるほどでもなく。たとえば『MONSTER PARK2』であれば、個々の異形に立ち絵があり、「図鑑」として後から解説を読むことができたりしました。これは異形とかモンスターに対するこだわりのなせるワザです。本作もクトゥルフを「輸入」するなら、そのくらいまでこだわるのが元ネタへの礼儀という気がしないでもないし、「クトゥルフを広めたい」という情熱でこの作品が作られたならやってほしかったところではあるのですが、あくまでネタだったというだけでそういう情熱は無かったんでしょうね。
エロゲーのクトゥルフといえば、『ネクロノミコン』(1994年)や『黒の断章』(1995年)など、プレイを終えた後に「クトゥルフの原典にあたりたい」と思わせるような、コアな中にも愛にあふれた作品があったのでつい比べてしまいましたが、本作に対してそれを求めるのは無い物ねだりというやつでしょう。
というわけで、オーソドックスな抜きゲーとして見た場合、異形によってけなげに戦う強いヒロインがボロ雑巾のように扱われる展開が好き、という人にとってはなかなかそそるシチュエーションが揃っています。特に、圧倒的な力の差の前になすすべも無く屈服させられるという絶望的シチュエーションが上手で、リョナのように身体的にボコボコにするだけでなく、それ以上に精神的に追い詰めるタイプのねちっこいエロさがありました。非常に私好みです。特に、前述したシュド=メルに彩希がやられるシーンや、真菜がクトゥルフに貫かれるシーンは個人的に高いシコリティを発揮してくれてホクホクでした。そういう絶望感を漂わせるツールとしてクトゥルフが選ばれた、ということなら、なるほど納得かなというところもあります。
アニメーションについては、ちょっとかくかくしたいつものクオリティなんですが、構図と表情が動画映えするところだったこともあり、存外悪くなかったです。メインキャラの3人に1シーンずつだったのが残念だったくらいには。
惜しむらくは、ヒロインどうしの絡みがほとんど無かったことでしょうか。『快楽恥帯』に登場した秋風空ちゃん似の名も無き女学生がぱっくんちょされるシーンを1つ挟むくらいなら、ヒロイン2人なり3人なりを絡ませてよかったんじゃないかなと思います。特に、彩希と雫を一緒にしないのが最後まで意味わからない……。
あと、これは結構大事なことなのですが、ヒロインたちの「武器」をCGに入れなかったというのは大きくマイナスです。戦う女の子の象徴ですし、彩希も真菜もシンボルとなる武器を持っている。それを一切CGに出さないことで、敗北している感じはぐいっと減ったかなぁと。あまりに残念すぎて、女剣士とかが自分の武器で犯されるシーンの醍醐味について語り合いたい気分になりました。
総じて、クトゥルフに特にこだわりを見出さず、ストーリー性にも頓着せず、強いヒロインが異形に犯されるのを楽しむ……ちょっとクオリティーの下がった二次元ドリームノベルを読むくらいのつもりでいけばニーズには応えてくれる。あとは、2000円というお値段をどう感じるか次第、といったところでしょうか。私はちょっと割高かなと感じましたけれども、声がついていることや原画の魅力がそれを上回るようであれば、「買い」ではないかと思います。
CG(差分無し)・シーン数とも20。EDは5種類で、うち1種類はルートロックがかかっています(真菜ルートが2つに分岐するのですが、彩希のあるEDを見た直後のみ突入できるルートがあります)。ちょっとややこしいんですが、下に書いてみました。
彩希ED1(途中GAMEOVER)、ED2、ED3、真菜ED1は特に条件無く初期から入れる。真菜ED2は彩希のED2を見るとルート解放される。ただし、そうすると真菜ED1は見れなくなる。彩希ED3を見ると真菜EDがED1に切り替わる。どうにもうまく説明できないんですけど、彩希のEDがスイッチになって真菜のEDが切り替わってるという感じです。