よく笑い、よく抜ける。
人間よ、これ以上何を望むのだ……というわけで、「アタリを引いたぜ!」と思わずガッツポーズしたくなる、ハイレベルな作品。単にデキが良いだけではなく、作り手のこだわりとか情熱とか、エロに対する熱いパトスがほとばしっていて、思わずニヤリとしてしまう。「会心の一撃」と呼んで遜色のない内容だろう。
力が全ての世界。女性が圧倒的な武力を誇る中、男性はジェンダと呼ばれる島におしこめられ、子どもを生むための種馬扱い。世界の大部分を占めるマンネ大陸は女によって支配されてきた。そんな世界に彗星のごとく現れた屈強な男・レオン。彼は圧倒的身体能力を活かして、女を「密猟」していく。手なづけた「雌」は50近く。そんな彼もとうとう家庭を持つことを考え始める。獅子王レオンの「嫁」選びが、いま始まろうとしていた。
システムは、マップ上のヒロインアイコンをクリックするだけの単純なスタイル。選択肢での難しい分岐などは殆ど無い。3Pやハーレムは用意されているし、あるキャラを途中まで攻略することで手に入るアイテムが、別のキャラのHシーンを見るトリガーだったりするので、複数同時攻略するほうが良いのだが(実際、ED直前まで全員同時攻略可能)、内容的にはヒロイン1人1人との仲を深めるのが基本。さすがは「嫁」選びと言ったところか。
最初は敵意むき出しだったヒロインたちが少しずつ心と身体をひらいて行き、中盤からはラブラブに。強気な女性陣を「狩る」征服感を味わいながら、同居性活でいちゃラブまで楽しめて、1粒で2度美味しい。
作品の魅力は幾つもあるが、まず何と言っても主人公のキャラが良い。女尊男卑の世界の中、己の実力とエロ力を武器に「強い女」を屈服させていくレオンは、全世界の牡の憧れ、マ○コ界の革命児。飛来する矢をナイフで弾き、魔法攻撃を無効化し、機関銃の弾をかいくぐり、巨大フレイルを蹴り一発で吹っ飛ばす。そんな勇姿には、チェ・ゲバラも真っ青になること間違いなしである。
しかも彼は、傍若無人だが暴君ではない。他人の様子に細かく気を配れるし、罠は張っても卑劣な真似はしない。そして女性に対しては、彼なりにとことんまで優しさと愛情を注ぐ。自信に満ち溢れ、どんな困難も跳ね返し、ピンチになったら助けに来る。そんな頼もしい、ただしちょっと(だいぶ?)エッチなヒーロー。それがレオンだ。
こういうマッチョな主人公の造形というのは、多少古臭い気がしないでもない。けれど、やはり多くのエロゲーマーの憧れを反映しているのは事実だろうし、そういう理想の体現者を見てスカッとしたい人にとって、レオンは申し分のない活躍を見せてくれる。
とはいえ、男がかっこ良くてもヒロインに魅力がなければエロゲーとしては台無しなのだが、その辺も心配無用。勝ち気でウブなJK真央、高飛車ロリ姫のフィーリア、カタブツな割に乙女なエルフ・エルレシア、奔放なお姉さま系獣人のクロウ。メイン4人はみんな揃っていい味を出している。最初はあまりに統一感が無いので心配したが、独立で進むストーリーのため、ちぐはぐさはほとんど気にならなかった。
彼女たちはそれぞれの理由でレオンの「嫁」になることを嫌い、戦いを挑んでくる。しかしレオンに敗れ、彼の人柄とエロテクに触れているうちに、精神的にも肉体的にも虜になっていく。このプロセスがなかなかに微笑ましく、しかもじっくり描かれているので、恋愛の過程や心情の変化を楽しみたい人にはもってこい。
ラブラブ状態になってからは、彼女たちの抱える悩みや不安をレオンが解決して、いっそう絆が深まっていく。飛び抜けて感動的なエピソードがあるわけではないけれど、どれも各ヒロインの生き方や考え方を適度に掘り下げていて、イベントを重ねるごとにヒロインに愛着が沸いていった。
テキストもかなりこなれていて、しかもテンポが良い。イベント単位で区切っても10分から20分程の「丁度いい」長さできちんと起承転結をつけたショートシナリオが繰り返されるので、さくさく楽しめる。スッキリしたり疲れたりしたら中断するのも簡単だし、構成の巧さも手伝って、ほとんどダレること無くEDまで走ることができた。
メインを支えるサブキャラも「名優」揃い。どのヒロインにも2、3人のサブヒロインがおり(Hシーンあり)、出番の少なさに反比例して強烈なキャラが多い。エロに絡まないレギュラーの豚……もといナビゲーターのビクも、単なる狂言回しではなく、お笑い担当としてかなりいい味をだしている。
肝心の部分に触れるのを忘れていた。Hシーンのできも良い。個人的にはかなり満足だ。
特殊性癖に特化した感じではないが、前に後ろに、乳にお口に、尿しに縛りにと、まんべんなく幅広いニーズに対応してきた。基本は明るく楽しいHで、無理姦りの悲壮感はまるでない。各キャラのHへのスタンスも異なっていて飽きずに楽しめるし、初めは嫌がっていたのが次第に目覚めて貪欲になっていく様子が丁寧に描かれていて好感が持てる。
もちろん濃さというかエロさのほうも折り紙つきで、今回は特に卑語のクオリティーが上がっていた。赤司弓妃さんの派手な演技ばかりが目立つかと思いきや、他の面々もかなりのもの。しかも、下品になったり完全なギャグになりきらないギリッギリのラインを攻めきった感がある。この辺りは見事なバランス感覚だったと思う。
一応特殊性癖の担当はサブヒロインに主に割り振られているようで、搾乳はスージー、人妻は早苗、ドMはティンク……という具合に、しかもかなりディープなところでツボを押さえたプレイをして、「ぶっ飛んだ」性癖を花開かせている。メインヒロインで広い範囲をフォローしつつ、サブでマニアック路線も押さえようという欲張り編成だが、成功だったと言って良いのではないだろうか。
シーン数は(パッチ等なし)トータル76シーン。メイン4人はそれぞれ12シーン。準ヒロインのツバキが6シーン。3Pが2シーン、ハーレム1シーン。のこり19シーンをサブキャラ9人でわけあっている。
システム面に関しては、もはや何をか言わんや。エロ関連のシステムでこのメーカーの右に出る者はほとんど無いのではないかというくらいの親切設計。アへ顔のON/OFFもできるし、今回からはなんと、気に入った場面のボイスを(Hシーンに限らず)「ボイスコレクション」として保存、鑑賞できるようになった。これで、いろんなシーンの声をつなぎあわせて遊んだり、喘ぎ声を聴き比べたりするのもラクラク。いたれりつくせりである。ただ、少し機能が多くなりすぎてゴチャゴチャしたのはもったいない。どうせここまで来たのなら、スタッフのお薦めセッティングとかも搭載してみてはいかがだろう。
ところで、この制作チームは『プリーズ・レ○プミー』で、女性をレ○プしながらも事実上は女性に隷属させられている男の姿を描いていたと思ったら、今度は女性上位の世界を暴れまわるマチズモの権化みたいな主人公を出してくるあたり、なかなか侮れない。本作でも「ジェンダ島」という島の名前や、ところどころに出てくる皮肉の効いた世界設定(たとえば「調教」というのがプレゼントを渡すことだったり、デートに誘うことを意味する)は、明らかに現代日本社会のある種の人びと――はっきり言ってしまえばジェンダー論者を意識しており、それを巧みにおちょくるというか鋭く批判するというか、そういう気配が満載なのだが、その辺りについては「言わぬが花」というやつだろうか。
レオンは、確かに田○陽子女史あたりが見たら怒り狂って罵声が飛んできそうなキャラクターだし、エロゲーではずいぶん昔から(特に凌辱系で)お馴染みのパターンだ。あるいはそれをもって、女性慣れしていない童貞オタクの妄想か理想を具現化したもののように思われるかもしれない。けれど、たぶんそこは本質ではない。自分のルールで生き、それを貫き通す力があり、しかも「社会変革」のような大それた真似をせずとも皆を幸せにしてしまえるレオンというのは、他人の顔色をうかがって神経をすり減らしながら生きる現代人にとって、男女を問わずある種の爽快感をもたらす力があるだろう。倍返しの銀行マンが受けた理由も、1つはそのあたりにあるはずだ。
ネタ感満載の設定に反して、わりと真面目にいまの社会にマッチする射程を持った、痛快エンタテインメントである。
ちなみに、私が一番笑ったのは、ドM妖精・ティンクとのかけあい。お薦めついでにちょっとだけ、ハイライトとして紹介しておきます。
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ティンク
「これもダメかー……じゃあ、うーん……しょうがないなー、まあ、マンコに棒をつっこまれて子宮をぐりぐりっていうのでガマンするわね」
なんだそのうえから目線。マゾって時々こういうのいるよな。
レオン
「それはバイブ責めでいいんだよな?」
ティンク
「ううん、モズの早贄のように、ぶっすり突きささってみたいのよね♡ 子宮にぐじゅっと突きささる感覚ってステキだと思わない?♡ もちろん子宮口はがっつり突きぬけてね! あ、Y字型の木の棒だったら最高だから! 卵管までズブリヨロシクゥ!!」
レオン
「それは……ちょっと色々ハードルたけーな」
ティンク
「木の棒で卵管の奥まで突っこまれて、まだ排卵されていない卵子をぐりぐり責めて……そのあとずぷっと引っこ抜いてくれたら……♡ 妖精の卵子にちょくせつザーメン注いだら、きっとステキだと思うの……♡ 受精したら木の棒でぐちゅぐちゅになった子宮にもどしてもらって……子宮に着床するまで、瓶につめて観察してほしいなぁ!」
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ごらんのありさまだよ! なんかもうドMをはるか後方へと置き去りにしちゃってる気がするんですが、これを(ある意味)情感たっぷりに音読できちゃう鈴音華月さんスゲーって感じですよ、ハイ。おまけのスタッフコメントではフィーリアの話のみだったのが残念。なお、Hシーン自体はものすごく普通(?)でした。