いつも通りのsealといえばいつも通りですが、いつにもましてチープな作りが光る怪作。とにかくツッコミどころ満載。まさしくギャグの玉手箱。sealブランドに多くを期待せず、しかし時々飛んでくる地雷をも楽しくプレイできるsealゲーマー的にはなかなかオイシイのですけど、その辺見誤ったらブチ切れ間違いなし。阿鼻叫喚の地獄絵図が待ち受けています。
だっしゅあんらーん だっしゅあんらーん♪ ←OPテーマ
(おお、なかなか良い感じの歌……でもスキップやな)
というわけで「sealさんがまたやってくれた」という噂を聞きつけて、パッケージ待っていられずDL版を勇躍購入。開始してみた。
エルメロス:「最近会ってなかったから名前をど忘れしていた、他の村に住んでるけど、子どもの頃から仲良しの、セレンティウスちゃんが……!」
説明台詞キタ━━(゚∀゚)━━!!! さすがsealさん、ひとつひとつの台詞の情報量が半端無い。これはうっかり見逃すと話について行けなく……なんて心配も全く無用。幼女の胸より薄いシナリオなのでED直前からでも全容を把握可能。どこまでもユーザーフレンドリーな仕様に頭が下がる。
まずストーリーを確認すると、「邪智暴虐の王」に囚われた親友・セレンティウスを救う為にエルメロスは王都へ向けて走り出した。一方、セレンティウスも自力で脱出し逃走を始めていた……。
え、それだけ? と思った方はご安心あれ。バッチリそれだけ。とりあえず「走る」という設定が入れば何でも良かったことがビシビシ伝わってくる凄まじいテキト……斬新さに笑いが止まらない。
ちなみに「邪智暴虐の王」は、最後まで「邪智暴虐の王」の表記のまま。一人だけ名前を拾って貰えなかったディオニス王可哀想。OPではグラフィックまであるのに……。
まあ何はともあれ短い(けど体感的には長い)OPイベントが終了し、いよいよゲームへ。剣士エルメロスと魔法使いセレンティウスの2キャラが選択可能。どうやらそれぞれでゲーム難度もユニット特性も違うようだが、最初なのでエルメロスを選択。ぽちっとな。
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《補足》
システムは、横スクロールアクション。オート移動するMAPでキャラを操作しながら、ゴールまで生き残ればステージクリア。落とし穴におちるか、3回敵に当たってライフが無くなるととゲームオーバー。
それだけなら何ということもない普通のACTだが、驚いたことに本作、使用するのはマウスとキーボードの「Z」(攻撃)と「↑」(ジャンプ)のみ。ファミコンだって十字キーをあわせて8つのボタンがあったのに、なんと2つでゲームを成立させてしまった。エコの時代と言われる21世紀ならでは、最先端を行く作風である。
なおOHPでは「X」「C」「F」「SPACE」も使えるかのように書いてあるが、製品同梱のマニュアルからは削除。これは恐らく、操作を簡略化することでユーザーの混乱を防ごうというsealさんのありがたい配慮。間違いない。
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およそ親友を助けに行くとは思えないようなほのぼのしたBGMに乗せて走り出したエルメロス。目の前に落とし穴らしきモノが見えてきた。どうやら最初の試練のようだが余りにワンパターン。ベタベタである。
さすがにこれで死ぬヤツはいねぇだろ、と思いながらジャンプボタンを押したのだが……。
落とし穴に落ちていくエルメロス。そして、無情な画面暗転。
(つд⊂)ゴシゴシ→(;゚ Д゚) …!?
いやちょっと待って。私、普通に飛んだよな? スペ○ンカー先生でも死なないような段差なのに、どんだけ虚弱体質なのこのヒロイン……。
今のは何かの間違いか、私が操作に慣れてなかっただけだろうと気を取り直して仕切直し……をすると、なんかいきなり鷹が飛んできてダメージを受けた。マジかよ。まあとにかく落とし穴を優先だ……ということで再び開始直後の穴に挑んだのだが……。
ま た 死 亡 !
工エエエエ(´Д`)エエエエ工工
なにこのシビアな判定。もしかしてもの凄いギリギリで飛ばないといけないのか。その後も難度かトライ&エラーを繰り返して、なんとか落とし穴を回避することはできるようになったのだが、そうなると今度は別の問題が発生した。それは、キー入力のラグ。
たとえば、攻撃の届きそうな範囲に敵が接近してから攻撃ボタン(「Z」)を押してもまず間に合わない。せめて敵の配置が固定なら研究次第で何とかなるのだが、さっき飛んできた鷹のように、一部の敵は驚きのランダム配置。毎回違う場所から違うタイミングで襲ってくるので対策のしようがない。
ライフが僅かに3しかないので、穴に落ちなくても鷹が3匹飛んできたら昇天。こうなると求められるのは、未来予知の能力か常人離れした反射神経。心得は、「見る前に押せ!」である。
ついでにもう一つ。実は本作、同時入力ができない。ばかりかラグのため、攻撃かジャンプの直後には別のアクションを入れられないのだ。要するに敵を斬った後すぐジャンプできないので、ライフを犠牲にして落とし穴を回避しなければならない局面が必ず何度か訪れる。幸い滞空時間が長くジャンプしながら攻撃はできるので、地上の敵は多少何とかなるが、飛んでくる敵を撃墜するには熟練が必要だった。
とにかくこの「落とし穴回避」と「キー入力のタイミング」が恐ろしくシビアで、ゲーム開始から約2時間が経過してなお、エルメロスのステージ1すらクリアーできていないというとんでもない状態に陥ってしまっていた。sealさんの作品で2時間エロ無しでゲームをしているとは……。
このままの調子でいくならクリアまでにもの凄い時間がかかるのではないかと危惧されたのだが、意外なことにこの問題の片方はあっさりと片が付いてしまった。
どうやらこのゲームには、「見えない床」があることが判明したのである。そのスペースを使えば落とし穴は楽々回避できる……というか、むしろそのスペースで飛ぶのが前提だったようで、崖の終点近くからジャンプしていた私は、ただのせっかちさんだったみたい。
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《補足》
崖の終点だと思っていたところの先に存在する、見えない踏切スペース。ことばでの説明が困難なため、下に図示したので参照されたい。
(図) ■=地面 □=穴 ▲=グラフィック的には穴だが実は地面。
■■■(1)■■(2)■▲▲(3)▲□□□□□□
とまあ、こういう感じになっており、(1)のあたりで踏み切るとアウト。(2)ならギリギリセーフだが、アウトになる穴もある。(3)で踏み切るのが正解、というわけ。気付いたとき誰もが「そこ地面ねぇよ!」と叫んだだろう。何せ1キャラぶん完全に宙に浮くスペースがあるのだから。正直、よくもこんなシステムを採用できたものだと思う。
なお、フリー走行モードでは、見えない床が踏み切り地点から着地地点に移動している場合がある。つまり、
■■■■■■□□□□□□▲▲▲■■■
という感じになっているわけ。……めんどくせぇ(;´Д`)。
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『カイジ』のガラスの階段を彷彿とさせるこの仕掛けから得られる教訓はさしずめ、「見えざるものを見よ」といったところか。攻撃は早めに、ジャンプは遅めにというコントラストで観察眼を試そうということだろう。普通の人なら怒り出すところかもしれないが、私はsealさんの深謀遠慮に感心するばかりである。ふざけんな。
しかしタネが判ってしまえばあとは楽。特に、一発即死の落とし穴を高確率で回避できるようになったのはかなりの進歩。変なところから倒しようのない速度で敵が飛来した場合はさっさとあきらめて、配置に恵まれることを祈りながらリトライすること数度、とうとうステージ1をクリアーすることに成功した! そして待望のHシーンへ(半ばどうでもよくなりかけていた)!!
…………ふぅ。(賢者)
Hはエルメロス5、セレンティウス5の合計10シーン。2人の位置関係は、(1)王都→(2)砂漠→(3)機械の街→(4)地底人の洞窟→(5)エルメロスの住む村(の前の平原)となっていて、セレンティウスは(1)から(5)へ。エルメロスは(5)から(1)へと移動。それぞれの場所がステージマップ。クリアーするとHシーンに突入する。内容は基本全て無理姦り。ステージクリアーしたのになぜ……とつっこみたくなるが、他の要素のぶっとび具合と比べれば些細なことなので、エロが見られれば何でもいいやと割り切るのが正解。ただ、ワカンスキーの人には我慢がならないかもしれない。
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《補足》
シーンを一応下にリスト化してみた。CGもシーンと同じく10枚。
◆エルメロス
(1)兵士姦(乱交)
(2)ツル植物に捕まってM字開脚。
(3)分娩台にのせられて機械に攻められる
(4)地底人に媚薬を盛られて騎乗位
(5)兵士姦(処女)
◆セレンティウス
(1)自慰+兵士姦(処女)
(2)ワームに捕まって媚薬アナル。
(3)機械姦(股間で綱渡り)
(4)地底人を足コキ攻め
(5)兵士姦(乱交)
ちなみに、アクションシーンでの脱衣や凌辱は無し。
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さて、いよいよステージ2。ステージ1があれだけ難しかったのだからどんなに……と思っていたら、何か知らんがノーミスでステージ2をクリアーしてしまった……。あれれ、おかしいな?
一応ステージ2に入ると敵や地形が変化していたり、スクロールのスピードがあがったりしているのだが……。どうもあの鬼のような落とし穴の判定が減っていたのか慣れたのか、良くわからないけれどサックリ終わってしまった。
あっれー(*´・Д・)?
そしてそのままアクションとエロを交互に眺めながら最終ステージ5へ。
ここもあっさり終了し、いよいよ感動のエンディング……にはならず、打ち切り漫画も真っ青なやる気のないうっちゃりでいきなり物語終了。ヤマもオチもイミも無い、ある意味見事な幕切れ。終わりがないのが終わり。
もうなんとなーく本作がどんなもんだか解ってしまったのだが、一応折角買ったんだし好みとしてはセレンティウスのほうが好みなので、彼女でもプレイしてみることに。
魔法使いというだけあって、攻撃が遠距離。そして駿足というキャラ付けのためか、マップのスクロールスピードがエルメロスの倍くらい早い。でも、この遠距離攻撃というのがかなり凄くて、なんと先行入力で画面の外にいる見えない敵も倒してくれる。これは酷い……。
というわけで、あんなに苦労したエルメロス編が嘘のようにサックリ終わってしまったのでした。ちゃんちゃん♪
見えない床があるって知ってから1時間半くらいしか経ってないんだけど、あの苦労何だったの。・゚・(ノД`)・゚・。
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プレイレポートとしては概ね以上なのだが、購入を検討しておられる方、あるいはもう少し情報が欲しいという方の為に、内容の紹介とそれに対する所見を書いていく。お付き合いいただければ幸いである。
▼システム
まずシステム面。ゲーム自体は恐ろしく単純で、勝手にMAPがスクロールしていくのにあわせて攻撃とジャンプを繰り返すだけ。ファミコン繋がりで言えば今は昔の1986年、バンダイから発売されたファミコンソフト『ファミリートレーナー・アスレチックワールド』という作品があった。マットでなくキーボード操作だが、あれに攻撃ボタンをつけた感じだと思ってだいたい問題ない。『くのいちがイクッ!』にも思ったが二十余年を経た現代にファミコン当時のプレイ感を甦らせようというsealブランドの復古主義には並々ならぬ決意が感じられる。この調子で、次は是非ハードの発売にまで踏み切って欲しい。
▼エロ
次にHシーンについて。性格的にはエルメロスが天然系、セレンティウスが傲慢強気なんだけど凌辱願望もちのエロ妄想大好きという迷走キャラ。評価できるのはHシーンのボリュームがかなり長く、しかもそこそこエロい。この辺はグラフィックの良さと、(作中でキャラが「気が狂いそう」と言っているけれど、それが誇張ではなく聞こえるくらい)凄まじいアヘ声を躊躇無く出しておられる声優さんの頑張りに依るところが大きい。またセレンティウスは凌辱願望もちだけあって、レイープされている最中は勝手に盛り上がって独り言がすんごいことになるので見応えがある。特に機械攻めで連続絶頂させられた時のぶっとびっぷりは良かった。ぶっちゃけ3回くらい抜けました。
総じてHシーンは(数こそ少ないものの)優秀。というか、18禁なのにまさかのHシーンゼロだった『くのいちがイクッ!』をやっていたら、本番Hがある時点で文句を言ってはいけない気になる。寛容さを忘れた現代人は、seal作品をプレイして堪忍袋のヒモを強化すべきではないだろうか。
ただ、「くのいち」シリーズと違いMAP上でのSDキャラ凌辱が無くて、その点は残念だった。
▼sealさんの挑戦
単なるネタの宝庫だけでは終わっていないのが本作のsealらしさというか、良いところ。目立たないけれど随所に新たな試みの痕が見える。
中でも注目したいのは、ストーリーとは関係なくゲームだけを楽しむ「フリー」モードがついたこと。しかも、歴代シール作品のヒロインを操作できるオマケつき。この辺はSTG(『淫力吸しゅ~』)を作った経験が活きている印象を受ける。ただ、遠距離/近距離の差以外には大きな違いは無い。遠距離系キャラは、穴がなければZボタンを連打しているだけでステージクリアできる。次からはユニットの個性をもっと出して貰えたらな、と思う。レーザーだけ貫通ぽい感じがするのだが、実際貫通しているかどうかは仕様上よく判らないので何ともかんとも。
ちなみにフリー走行で使えるキャラは、本編のヒロイン2人に以下の4名を加えた合計6名。チョイスの基準はようわからん。
・アイリーン(『魔物っ娘ふぁんたじ~』)
・香澄(『くのいちがイク!』)
・オンディーヌ(『セーエキ!』)
・風花(『轟け性紀の大発明』)
sealファンの私としては楽しい……と言いたいところなのだが、何せゲーム自体が微塵も面白くないので続けようという気にならない。とりあえず各キャラ1回ずつやって終わりにした。
▼ゲーム攻略法
とにかく「早めに攻撃」と「遅めにジャンプ」(見えない床の認識)を心がければ、ACTド下手の私でも攻略できたので、だいたい何とかなるんじゃないかと思う。そもそもキー2つしか使わないし……。
どうしても無理という人は、いつものsealゲームのお約束。FLASHゲーなので、ACTモード中に「制御」→「次へ進む」を2度選ぶとACTをクリアーしたことになってHイベントへ突入する。ぶっちゃけACTはフリーモードで楽しむと割り切って、さっさとHだけ見るのもアリだろう。
ただ個人的には、どんな内容であってもスタッフの方が心血注いで作った作品なので一度はレールに沿って攻略に挑んでみたいという気持ちがあるので、正直あんまりお薦めしない。というか、この作品でそういうことをしてしまうと本当にただの憎むべきクソゲーになってしまう。勿体ないでござるよ。
▼言わずもがなの結び
以上、オリジナリティ溢れる作風に触れた私たちユーザーは、幾つものメッセージを読み取ることができる。たとえば適当を通りこして投げたとしか思えないようなストーリーからは、物語とは自らの想像力で創り出すものだというメッセージを。古すぎて逆に斬新なシステムからは、「温故知新」という格言を思い出すことができよう。
見えない床の存在は「見えているものが真実ではない」ことを。攻撃タイミングは常に一歩先を読み備えておくことの重要性を教えてくれる。何より本作の「キャラが思い通りに動かせない」という特徴は、人生の縮図を表現しているかのようで趣深い。昔の某有名シンガー達も、「思うようにはいかないもんだな」と歌の中で言っていた。
自キャラが思うように動かないというのはACTゲームとしてはもう致命的以外何者でもない欠点だと思うのだが、そんな常識を敢然と打ち破ってみせるsealブランドの発想力と勇気に、ただただ舌を巻くばかり。
……まあエロがあるぶん、『くのいちがイク!』よりゃマシだけど、ゲームの面白く無さで言ったらこっちのほうが酷いですな。(身も蓋もない)
もともとsealさんは「人はどこまでのバカゲーを作れるのか」(『嗚呼、素晴らしき孕ま世界』)というスローガンを掲げ、果敢にバカゲーの通り道を切り開き、舗装してきたパイオニア。ブランドが存続する限りもっともっと斜め上に脱線する作品を生産して頂き、ゆくゆくはお尻とおっぱいの力でソフ倫とメディ倫の調停を行い、エロゲー世界の審査統一規格を打ち立て、最後はNASAを乗っ取って月面に社屋を建てるくらいのところまでトマランナーしていただきたいものである。