タイトル「吸しゅ~」が示すとおりのSTG。ユーザーは魔王デルゼビュビュを操り、敵を倒しながらヒロインの服を脱がす。中ボス終了までに下着にできないとゲームオーバー。最後はHして淫力を吸う。射ったり吸ったり大忙しである。細かいシステムに関しては体験版が公開されているので、そちらを参照して頂きたい。私はSTGを余りやらないので専門的な言及はできないが、それをことわった上で、素人としては手軽で結構楽しめた。
これまでRPGやアクションゲームにも挑戦してきた softhouse-seal が、なんと次はシューティングゲームに挑戦!
詳細は不明だが、きっといつも通りノリの良い、エッチでおバカな内容になるのは間違いなし !?
今後の続報に期待しよう!
この簡素な紹介がげっちゅ屋に載ったのを見て、私は思わず吹き出した。同時に、こりゃ酷いとも思った。sealのRPGやアクションへの「挑戦」がどんな結果に終わったかは多くの人が知るところであり、「なんと次は」と言われてもギャグにしか見えない(※1)。続きに至っては言うも更なり。要約すれば、「新しいことやってるけど、どうせいつも通りでしょ。内容なんて見なくてもわかりますし。おすし」ということである。提灯記事を装った皮肉と言われても納得してしまう。
だが幸いにも、本作は素直に良くできたゲームだった。
個人的には脱衣がヒット。ステージ中延々敵を倒すだけでなく、配置された魔法陣を破壊することで、背景のヒロインの絵の制服が少しずつ破壊されて下着姿になっていくのがエロくて楽しいのだ。下着にこだわった描写もかなりの効果を発揮している。ちなみにボス戦では脱衣の量に応じてHシーンの絵が変化するので、「半脱ぎじゃなきゃヤ!」という人は、頑張って下着の破壊を調整してほしい。
一方、純粋なSTGとして見ると物足りなさを感じる。たとえば、スコアが飾りで味気ない。またいわゆるやりこみ系STGには敵のパターン等を研究して腕を磨く楽しみがあるが、本作は逆で、Hardでもすぐに何とかなりそうな感じがする。要素が単純でやりこみ甲斐も無い。私程度の初心者の手慰みには上出来だが、STGだけを売り物にできる程かどうか。
恐らく、本作の想定ユーザーは2種類あるのだろう。まず、sealのノリを楽しみつつも「挑戦」を期待しているブランドのファン。これはSTG慣れしていない可能性が高い。次に、エロだけではなくゲームもそれなりに楽しみたい、コストパフォーマンス重視の低価格帯購買層。両方に配慮した結果、このような形になったのではないだろうか。
実際、ステージ音楽はsealの過去作のヴォーカル曲がランダム再生される(本作のオリジナルもある)。手抜きととることもできるが、ファンサービスにはうってつけの贅沢でもある。スピーディーでノリの良いsealのテーマソング群はSTGのBGMとして親和性が高く、思わず口ずさみながら機体を操っていた。ただし夜中に鼻歌歌いながらエロゲーしているのを見られたらどん引かれ間違いなしなので、ご家族とお過ごしの方はくれぐれもご注意あれ。
難度はEasy、Normal、Hardの3つ。初期条件に差がある(※2)。弾は通常弾、貫通レーザー、拡散弾の3種。Easyのみ敵を自動追尾するホーミング弾が用意されており、これが恐ろしく便利。Stage1-1で取得できるので、とったら他弾に上書きせずに維持すればクリアは楽。そこそこのやり応えを残しつつ、初心者に優しいお手軽さも忘れない親切設計。
ストーリーは簡素でsealらしいバカ一直線だが、テキストを含め構成は上々。無軌道に騒ぐだけでなくお約束をおさえ、そこからの距離感がきちんと計算された巧妙なバカ。キャラ名をはじめ、適度に力が抜けているのも良い。げらげら笑うよりもにやにや笑いたい人向けだ。
ただ、魔法世界にいる時精霊たちは人間に憑依していないはずなのに、画面には憑依相手の名前が表示されていたり、主人公を踏みつけている光が「勝ち誇ったように被虐的な笑い声を上げる」など、わざととは思われないミスが散見される。小さなことだがゲームの完成度というだけではなく、バカの巧妙さに対するインパクトが半減してしまうのが残念だった。
Hは各キャラ2+全体ED1の合計11シーンと、同ブランドの標準な作品と比べると半分程度でやや物足りない。ただし行為の質は高く、主人公が最初は小さなコウモリで、そのままHをするなど笑いもとりにきている。私のイチオシは、責め系Mの光ちゃん。押し倒したり踏まれたり、めまぐるしい主導権の取り合いはなかなか楽しかった。息子も満足です。
気になったのはシステム。FLASHゲームなのでセーブ・ロードやテキストスピードの調整ができないのは仕方ないにしても、「次へ進む」を使うとステージ画面が大混乱を引き起こす。要は、進行制御が不十分。一度クリア直前に誤って「巻戻し」を選んでしまい、最初からやりなおしになった時は心が折れそうになった。普通に進めるには問題ないのでギリギリ許容するが、やはり不親切である。
また、サウンドモードが無いのも惜しい。もちろん仕様を含め事情があるのは察する。だが、STGの醍醐味の一つにステージ音楽を挙げる人は少なくない。アレンジ曲を収録するなり、もうワンサービスしてほしかった。
ソツなくまとまった良作だが、同時にそこどまりという感もある。突き抜けたポイントが無いのだ。ゲーム部分については既に述べたとおりだし、他はたとえばキャラ。絵も可愛いく、ギャグも切れて、CVも良い。しかし、ではこのキャラで二次創作が流行っている姿を想像できるかと言われるとちょっと辛い。描写や分量に限界があるというのは解るが、多分問題はそこではない。
MAIKAブランドの『ジャスティスブレイド』は勢いだけのご都合主義に見えて、設定資料を見ると本編に使われない裏設定が山のように存在していることがわかる。裏付けがあるからシリーズを次々に作ることができるし、キャラも立つ。『JB』に限らず良い作品というのは大なり小なり、そういう奥行きを隠し持っていると思う。
翻って本作はどうか。本作は、詰め込みがたりないどころか、要素を過不足無い程に詰め込んで作られているように見える。だが逆に言えば、描かれている以上の背景が存在しないということでもある。良く言えば全力投球、悪く言えば余裕が無い。魔法世界と現実世界の関係や、精霊たちと魔王の確執などに、どこまで奥があったか。少なくともその余白を見せようとはしていない。辛うじて魔王が過去の事情から「美少女達の服を破る能力」を宿らせる薬を開発していたこと等が語られるが、魔王を掘り下げるよりはストーリー進行の材料として機能していた。使わない設定を全力で考えて世界を作るような遊び心が企画にあれば、より楽しめた気がする。
ただこれは、ひとり本作のみの問題ではなく、seal作品に概ね共通することのようにも思う。無駄を省きすぎて骨格標本みたいと言えば良いだろうか。しっかりしているけれどどこか味気なく、どの作品も似通って見える。今後はどんな肉づけをしてくるかを期待したい。
※1……勿論げっちゅ屋に悪気があってのこととは思わないが、気になる方は『変態勇者の中出し英雄記』、『華麗に悩殺♪ くのいちがイク!』辺りを検索してみると、何が言いたいかご理解頂けると思う。ちなみにこのサイトで、中央値25点、20点。(2012年7月23日現在)
※2……ライフ・ボム数やコンティニュー回数の減少、機体死亡時にパワーが復活しないなど、難度があがると自機の条件が厳しくなる。