チクショー、こんな青春送れ(て)たらなあ! とニヤニヤしたい方へ。
宮下恭也、18歳。高校時代最後の夏を迎えて、彼は焦っていた。――このままでは、「ひとなつの経験」すら味わわずに高校時代が終わってしまう! そこで何を間違えたか、恭也は「バイト先で恋をしよう」と思い立つ。折しも、昨年バイトしたリゾート地の旅館から「今年も来てくれないか」という電話が。「かわいい子が来る」と聞いた恭也は意気揚々と旅支度を調え、孤島の旅館「海景館」へと向かうのだった。
タイトルの「りぞば」とは、「リゾートバイト」の略。離島のリゾート地でしかも日本旅館とくれば、経営難に陥ったところを金満富豪に目を付けられ、女将と仲居が中出しされまくるMiel的展開を予想してしまうが、幸か不幸か本作には凌辱も寝取られも無し。方向性はむしろ真逆で、青春の甘酸っぱい恋が描かれている。
公式にもあるとおり、本作は基本一本道。たまたま同じくバイトにやってきた、隣のクラスの美少女、皆本愛莉とのラブ・ストーリーだ。サブヒロインとのHはあるが、Hを選ぶと即座にそのヒロインとのEDに直行して終了するパターン。事実上のBADEND扱いとなっている。性欲に負けず、愛莉への想いを貫きなさい、ということだろう。至極ごもっとも。速攻で操さんに浮気してすみませんでしたぁ(土下寝)!!!
クールでとっつきにくい印象の愛莉だが、実は大変なロマンチストで恋愛にも興味津々。ただ、男が苦手でそれをなおすため、一念発起して僻地の接客業に赴いたということが明らかになるにつれ、恭也との距離が少しずつ縮まっていく。本作では、その様子がとても丁寧に描かれている。
不器用な二人が、バイトを通してお互いを支え合いながら理解を深めていく。重苦しい設定や劇的なきっかけは何もない、典型的なボーイ・ミーツ・ガールものではあるけれど、そんな等身大の二人の恋は、見ていて思わず応援したくなる。次々明らかになっていく愛莉の魅力に、恭也ならずとも「愛莉タンかわいいにゃあ」と思うこと請け合いだ。
また、恭也と愛莉のラブストーリーという軸をしっかり固定してあるため、作品全体がフラフラぶれずに引き締まっている点も良い。サブキャラも自分の「領分」をきちんと弁えていて、「これ以上出しゃばるとしつこいな」というあたりでサッと身を翻してユーザーの手をすり抜ける。こんな風にきちんと自分の役割を果たしているサブキャラというのは得てして大変魅力的で、思わず追いかけたくなる。ただし前述したように、追いかけるとアウトなのだが。(とはいえ、別に誰が不幸になるわけでもないので一応浮気をしても安心です)
描かれている恋の内容はちょっと年齢層低めというか、甘酸っぱすぎて背中がかゆくなるレベル。「浮気Hしたらアウト」という設定が逆照射している通り、恭也と愛莉、2人の恋愛は基本的に性欲と切り離されたプラトニックなもの。そのぶん描写は観念的……を通りこして半ばファンタジックな恋愛になっているが、これはそういうものなのだからケチをつけるのはご無理ご無体というものだろう。むしろ、そういうロマンチックな恋愛の理想像を楽しめる人にきっちり狙いを絞って作品を完成させたところを積極的に評価したい。ちなみに矛盾するようだが、Hシーンは決して薄くはなく、割とエロ濃い目。抑えていたリビドーが解放されたのだろうか。
操が操る(ギャグじゃないよ!)関西弁の「コレじゃない」感であるとか、サブキャラとのHの唐突さだとか、つっこみどころも無くはないが基本的には些事。妙なヒネリ方をせず、恭也と愛莉の一途な恋愛という中心軸をずどんと通し、その周辺に魅力的なサブキャラクターを配置するという形で非常にスッキリとまとまった良作と言っていいだろう。
ドラマチックな展開や大感動を求める人・思春期の恋愛話など眠くて読んでいられないといったタイプの人には向かないが、前向きでさわやかな話を味わいたい人、不器用で人見知りで、ちょっぴりやきもち焼きのヒロインをニヤニヤしながら愛でたい人にはお薦め。目立って良い脚本というわけではないものの、ストーリーよりもキャラクターを追いかけるタイプの作品で、そのキャラクターの魅力を丁寧に膨らませている。充分楽しめる完成度だ。
CGは差分無し29枚。osa氏の描くキャラはどれも可愛らしく魅力的。また、愛莉は私服2、制服、寝間着、仲居服と衣装の多彩なバリエーションがあるし、サブヒロインもCGごとに普段着が変わるなど、シチュエーションに併せて地味だがこまめな工夫が行われていて心憎い。これだけとっても、キャラクターを細かく演出することにこだわっている様子がうかがわれるだろう。
基本点80点、キャラ+5、雰囲気+2、演出-5、細かいツッコミ-3。