「ナカナカ良かった!」という感想を考えていたのだけれど残念ながら不発。結局、この作品がアピールしたかった「お姉ちゃん」の魅力(いわば「翠子の完成型」)が、ついに像を結ばなかったことが、本作の中途半端さを物語っている。
付き合いやら何やらで人気芸能人をずらりと並べてつくられただけで中身がスカスカの映画を観ると、ああ時間の無駄だったなあ、と思う。レンタルDVDならまだマシで、映画館まで出かけていたりすると尚更だ。
とはいえ、それは私の事情。イケメン俳優や美人女優に心躍らせる人からすれば、彼ら/彼女らが登場しているだけで楽しめるのだし、監督の熱烈なファンという場合もある。人によっては、ゾンビ万歳、ホラー最高とジャンルを堪能しているかもしれない。
そんな風に作品外のきっかけがあれば良かったが、私は本作に対し、特にそうしたモチベーションが無かったせいだろう。少々しょっぱい出来に映った。
主人公は、両親不在の斑鳩姉弟の弟・征司。そんな実弟にぞっこんの姉・斑鳩翠子(りこ姉)と、2人の保護者役で父親の元同僚・津見茜(処女)。征司は茜に淡い憧れを抱き、茜は亡き父を慕っており、翠子は実弟の征司を愛している――そんな複雑な「家族」の物語なのだが、正直、焦点が定まっていない。
翠子の奇天烈なキャラクターや過剰なまでの弟への愛情は見ていて面白いし、やや天然ボケ気味の堅物、茜さんとのかみ合い方は絶妙で、かなり良い味をだしている。しかし、単純なコメディというにはちょっと雰囲気が暗いし、インモラル姉弟ゲーにしては背徳感が足りない。三角関係を軸にするには緊張感が無いし、イチャラブゲーにしては征司が翠子を拒絶しすぎている。着地点をどこにしたかったのか、いまだによくわからない。魅力的なキャラや設定を、十分にいかしきれていない感じがする。
弟いじりが大好きな姉と逃げ回る弟という図式そのものは、(姉に包容力を求める人にとってどうかはさて措き)それなりに新鮮で面白いのは事実。ただこのシチュエーションだと、どうして翠子は征司がそんなに好きなのか、なぜ征司は翠子を避けるのか、そしてどんな理由で征司が翠子を受け入れるのか。この辺りにどれだけパンチの効いた設定を用意できるかで、話の面白さは随分と変わってくる。
私の見た限り征司が翠子を苦手とするのは、からかわれてきたトラウマと、翠子が血縁だからという常識ゆえ。付け加えるなら、身内にベタベタされる生理的嫌悪みたいなのもあったかもしれない。けれど、それはどうクリアーされたのか。結局、翠子のお乳をモミモミしたり、おぱんちゅを穿かせたりという色仕掛けでコロんだだけに見える。これでは緊張感が無い。
また、翠子が征司のどこが好きなのか、直接には語られないが、それならそれで翠子にとっての幸せが何なのかを示して欲しかった。たとえば、征司とヤれたらそれで良かったのか。征司と両想いになりたかったのか。征司を支配したかったのか。征司に支配されたかったのか。或いは、茜に勝ちたかったという可能性もある。メインヒロインであるはずの翠子は、自分の欲望をひたすら口と態度で示すけれど、望みの成就した形が漠然としか見えてこない。茜の立ち位置も、ライバルなのか障害なのかはっきりしない。物語の牽引役の行き先が見えないため、全体の輪郭までぼやけた印象になってしまった。
お気軽抜きゲーなのだから「細けぇことは良いんだよ!」と言われるだろうか。でも、それなら尚のこと、ミドルプライス作品としてCG集との違いは求めたい。その差は、Hシーンにどれだけ興奮できる要素を付与できるかにかかっている。設定と名前だけの女キャラではなく、時間をかけて掘り下げられた「あんなことをしたりこんなことを言っていた女の子」とHをするからこそ興奮する部分もあるはずだ。そしてミドルプライス以上の作品には、その要素をこそ求めたい。そうでないなら、CG集を2つ3つ買えば事足りるのだから。
会話はウィットに富んでいるし、テンポも良い。キャラも立っていて、パーツを見るとレベルは高い方だと思う。だが、全体としてみると良くも悪くもない、宙ぶらりんな位置に収まってしまう。マニュアルには「元はこんな設定だった!」という話が書かれているが、どうせならいっそそこにあるように、開いた口がふさがらなくなるようなぶっ飛んだ内容にしたほうが、エンターテインメント性は高まっただろう。
七Gさんのイラストはクセがあるものの丁寧。特に前屈みになるシーンの色っぽさが良い。バニーりこ姉は、個人的には本作のスマッシュヒット。Hシーンのバリエーションは多く、フェラパイズリは勿論、自慰、足コキ、立ちバック、お尻等スタンダードなラインは一通り完備。ローターや縛りのような攻め系も含めて全部で28シーン(翠子22、茜4、3Pが2)、CG差分抜き29枚。量は少ないが実用面では充実。
前作『エロゲーしようよっ!』が非常に好印象だったこともあって、今作もと秘かに楽しみにしていたのだけれど、思ったほどの爆発力が無くて残念。とはいえ相変わらず面白さの片鱗は見えているので、次回作に期待したい。