この物語は、熱い情熱を抱き、使命感に燃えて、数々の作業と不具合に立ち向かった、無名の男たちの知られざる物語である。 ――プロジェクトXゲーム ……というわけで、数々のトライ&エラーをくり返した結果、不具合で不可能と思いこんでいたユリアが攻略できましたので、報告がてらレビューいたします。中盤、どうしても強い気持ちを抑えられなくなり、多少お見苦しいかもしれませんがご容赦ください。なお当方はDL版で、DL版だとパッチを充てなくても一応(かなり特殊な条件をクリアしないといけませんが)フルコン可能です。コツがわかれば3時間くらいで終わるので、後半は攻略情報などもネタバレにならない程度に記載しました。もう誰もこれやらないような気がしますが……。それでも諦められない、迷える子羊たちに捧げます。
実直な職人・カルマは妻・アイナと慎ましいながらも幸せな生活を送っていた。ところが、村の組織に属さず力を付けるカルマを敵視する街の有力者が陰謀でカルマを陥れる。大量の借金を背負い、目の前でアイナを凌辱されたカルマは復讐の鬼と化し、村の有力者たちと縁が深い女性を攫い、彼女達を利用して復讐することを誓うのだった。
ゲームは1日を午前・午後・夜の3つに分割し、3回のコマンドを実行。アイテム捜索、アイテム作成、店舗拡張、調教、売春、会話だが、アイテム作成と店舗拡張はコマンドを消費しない。また、売春は夜にしか・会話は日曜にしか実行できない。つまり基本的に平日は、アイテムを捜索するか調教するかの二択。それを繰り返し、一週間経つと決算。決算で赤字を出さなければ翌週に遷り、最終的には一ヶ月でゲームは終わる。個別EDが3種、個別にいけなかった場合の共通ED(ハーレム)が1種。BADは破産と体力切れのみ。
さて、本作はsofthouse-sealの系列Devil-sealが放つ調教SLG。sealはご存知、低価格帯で比較的良質なADVゲームを出してきたブランド。最近はどうも「遊べるゲーム」へのこだわりが垣間見える。ただ、その結果はいまいち芳しくない。
以前感想を書いた『発情退散!』もゲーム部分はいまみっつくらいだったし、RPG『学園迷宮エロはぷにんぐ!』はトンデモバグ満載。ならばと出したACTゲーム『華麗に悩殺 くのいちがイク!』に至っては、驚きのフラッシュゲーム。しかもエロゲーなのにエロシーン無しと、華麗に逝ったきり帰らずじまい。果敢な挑戦はすべて見事な討ち死に終わった。
そんなわけで、目先を変えてブランドもかえて、調教SLGと相成った本作。昨年末発売された『淫刻の虜姫』も調教要素を含んだSLG。もとよりADVと相性も良く、悪くない選択肢だと思ったのだが、予想通りというか何というか、世界同時多発バグによって大混乱に陥った。内容はともかく、爆発ぶりはある種の期待にキッチリ応えてくれたと言える。むろん、全く嬉しくは無いが。
肝心のゲーム自体が、どんなものだったか。説明はやぶさかでない。ただ文字でするとやたら説明的で長くなるうえに、トゲトゲしい言い方になってしまう恐れがある。ここは寸劇でイメージを作って頂きたい。登場人物はオタク学生のオヨヨ君と、カリスマ超教師・シール先生の二人である。
シール先生 :では、「獣ノ躾」のテストをはじめます。質問がある人は挙手してください。
オヨヨ君 :先生、この試験、アイテムが作成できたかどうか分かりません。作成報告も無く、効果音も鳴らないのですが……。
シール先生 :それは仕様です。
オヨヨ君 :えっ……そうですか、すみません。
シール先生 :勉強不足ですよ。赤チャートからやりなおしますか?
オヨヨ君 :勘弁してください。ところで先生、材料が必要個数より多くないと作れないとか、一定の手順を踏まないと材料が揃っても作れないアイテムがあります。これも仕様ですか?
シール先生 :それは不具合です。
オヨヨ君 :えっ……そうなのですか。
シール先生 :修正パッチを配布しました。ちゃんと読んでください。
オヨヨ君 :でも先生、プリントのどこにもそのことが書いていません。分かりにくくて困ります。
シール先生 :書いていなくても雰囲気で察してください。行間を読むのを怠った、自分の不手際を棚に上げて文句をつけないように。
オヨヨ君 :左様でございますか。申し訳ありません。
シール先生 :いいのです。先生、素直な子には寛容です。
オヨヨ君 :あれ、先生。プリントでは「魔力モーター」が制作できない不具合の修正となっていますが、魔力モーターは作れます。作れなかったのは、触手粘液とかだったような気がしますが……。
シール先生 :気のせいです。夢でも見たのでしょう。オヨヨ君は夢見がちですね。
オヨヨ君 :夢見る少年でごめんなさい。
シール先生 :構いません。少年は一度くらい夢を見るものです。
オヨヨ君 :ところで先生、まだいくつか問題におかしなところが……。
シール先生 :おっと、時間のようです。答案用紙を回収しますよ。
オヨヨ君 :えぇ……?
とまあ、こんな感じだろうか。感想としては一言、「しんどい」。テキスト、ストーリー……。全体的にしんどいことだらけなのだが、親玉は何と言ってもシステムに尽きる。
とにかくアイテム作成がつらい。探索によって素材を集め、そこからアイテムを制作する。ただ驚いたことに、まとめて制作できない。つまり、100個作るには100回クリックしなければならない。高橋名人でも呼んでこいというのか。
また、作成したアイテムの個数と材料の残りを、制作画面で確認できない。いちいち画面を切り替えて素材の残り数と、できあがったアイテム数を確認しては制作画面に戻る……という作業を何回もくり返さなくてはいけないのだ。しかも驚いたことに、この作業をくり返すことで何も考えなくてもゲームがクリアできる。『くのいちがイク』はジャンプだけの作業だったが、『獣ノ躾』は金の指輪を作るだけの作業。ちょっとは工夫させてほしい。
世の中には作業ゲーというのがあり、私自身は比較的作業ゲーが好きなほうだと自任する。ただあれはLvアップやステータス吟味のために、本来はしなくても構わない作業を、あえて進んでやるのが楽しいのだ。やりたくもない作業を無理強いされるのは、作業ゲーではない。人はそれを、ただの苦行という。釈尊はバラモンの行者を前に、苦行とはいたずらに心身消耗するのみで、求めていたものは得られぬものだと説いたそうだ。2500年経っても変わらぬ真理を語るとは、さすがお釈迦様である。
なお、致命的なエラー(「魔力モーター」の制作不可)がVer1.01パッチで修正されたことになっている。しかしDL版では、「魔力モーター」は元々制作可能であった。ただ、モーターをもとに作るキーアイテム「特製ローター」が、制作条件を満たしているのに表示できないことがある(他アイテムを作った後だと表示できたりもする)という不具合があった。他にも似たような不具合がいくつかあったのだが、それはVer1.01で修正されていた。
修正ファイルで何が修正されたか正確に記述されていないというのは、何を修正したのか把握できていないのか、それとも不具合の多さを隠しておきたいのかと勘繰りたくなる。あまり歓迎できない態度だろう。また、その他のこまごました不具合は未だに残っている。たとえば、ラヴィのプランC調教Lv3を選ぶとゲームが止まる。アイテムの個数は3桁以上が表示されない。調教プランDの内容説明が表示されない(ユリアだけ希に表示されるのを確認したので、本来は表示されるものだと思われる)、等である。なおす気があるのか無いのか分からないが、アフターケアも含め、いささかお粗末と言わざるを得ない。
それでも、さすがはsealと言うべきか、Hシーンの出来映えは大したもの。ケモミミ少女たちは可愛く、エロく、過激に悶える。シーンの丈が短いのがいささか気になるが、シチュエーションの量はそれなりで十分実用に耐える。とくにユリアちゃんは表情がいちいちツボで、彼女に2000円払ったと思えばまあ仕方ないかなという感じ。
ただ、回想で各調教プランのLv1しか見られない(他にLv1EX、Lv2、Lv2EX、Lv3、Lv3EXの合計6種類があり、後半ほど内容がハードになる)のは残念。調教ゲームで、一番責めがハードになるシーンを回想できないというのはどういうコトなのか正気を疑う。確かにセーブデータで補完できなくはないのだが。
ともあれ、これぞsealの真骨頂。どんなにゲームをハズしても、テキストが微妙でも、エロシーンだけはきっちり一定の水準に仕上げてくる。買う側も、ある程度分かって買うのがお約束。他が良かったらラッキーってなもんである。この質のまま普通のADVだったなら、誰も文句は言わなかっただろう。
しかし惜しいかな、今回も進行不可能なトラブルが発生し、告知もなければパッチの配布も遅れた。結局厳しい言い方をするが、正直、これは作品としての完成度云々以前の問題だ。
とにかく進行に問題があるレベルのトラブルが頻発したことと、それを数時間とはいえ放置したこと、そして修正内容の正確な情報を提出しないことがいただけない。やむにやまれぬ事情はあったのだろうし、幸い発売当日のお昼頃にパッチが配布されたようだが、たとえば0時にDL購入した私は、数時間を無駄な作業に費やすハメになった。同様の人が何名かはいるはずだが、勘弁してほしいというのが本音だろう。そして彼らには、自分たちが何故そういう状態に立たされたか、知る権利がある。いつの間にか数々の不具合を無かったことにして、そのことに対する説明責任を果たさないというのは、いくらなんでもユーザーを軽く見すぎだ。
私は友人から、「sealなんだし早めに見切らなかったのが悪い」といったニュアンスのことを言われたが、それはブランドとして余りにも屈辱的なコメントのはずである。たとえ作品自体が失敗していても、そのあたりできちんと誠意を見せてくれれば次も信じてみようという気になるのだが、これでは信頼の失墜は取り戻すべくもない。
OHPの作品紹介には、「……絶対に許さない!」、「これは復讐だ !! 俺と同じように、あいつらの大切なものを奪ってやる !!」というカルマの叫びが載っている。同じセリフがいつか、ブランド自体に向けられるかもしれない。なにせクリアできない作品を販売すしたのだとすれば、パッチなり告知がでるなりまでの間、ユーザーの貴重な時間を奪うということなのだから。ブランドには、金銭以上の被害を与えたということを、もう少し真摯に受け止めて欲しい。さもなくば、いきり立ったユーザーの「復讐」が待っている。
あるいは、こうした一連の作品群でsealに対するハードルはどんどん下がっていることを考えると、躾られる獣とは実はユーザーのことだったのだろうか……。だとしたらとんでもなく奥深いタイトルである。
ともあれ作品に罪はないし、これからプレイする人には余り関係のないことだと思うので採点には余り反映させないが、ブランドの姿勢、メーカーの誠意が問われる対応であったと思う。システム的な部分はブラックボックスなので、私の解釈が誤っているかもしれないが、もしそのあたりがハッキリと分かる修正情報がsealさんから発表されたら、それは大変望ましいことだ。私は喜んで頭を下げようと思う。
なお私自身は確認していない伝聞情報だが、どうやらパッケージ版とDL版では内容が多少異なるという話もある(魔力モーターの修正も、もしかするとパッケ版用なのかもしれない)。他の方の感想等を拝見している限り、パッケージ版はDL版と違い、ゲームそのものがそもそも成立していないうえ、パッチをあてると落ちるといった類のトラブルが頻発している模様。パッケ版とDL版の中味が違うというのがなぜか、良くわからないのだが、本当ならパッケ版を購入した人はお気の毒と言うしかない。
システム以外の内容面にももう少し触れておこう。相変わらずと言うべきか、やはりストーリーやテキストに難がある。たとえばラヴィルートの最後の会話はこんな感じ。
―ラヴィ 「カルマさん、教えて下さいっ……何がどうなってるんですか? 私たち、どうなるんですか!?」
―カルマ 「さあな。俺にもわからないよ」
―説明するのも面倒なので、さも面倒くさげにあしらってやる。
―だが、これから先のことは、物語の結末は、俺にもわからない。
―ラヴィ 「カルマさん……!」
―本当に、わからないのだ。
説明できるのか分からないのかどっちだ、とツッコミを入れた人は、恐らく正しい。本当にわからないのなら「説明するのも面倒なので」あしらったというのは単純に矛盾であり、おかしい。心情や行為の繋がりが分かりにくい程度にテキストは雑で唐突。ここだけ特別というわけではなく、全体的にこの様子。物語も場面と設定とが羅列されるばかりで、展開する感じは無い。
キャッチフレーズである「美しい牝は淫らな獣に成り果てる」というのも、何となく意味がわかるようで、よく考えるとおかしい。タイトルが「獣ノ躾」なのだから、普通は獣を躾て牝にするはず。恐らくフレーズのほうは、「獣」を性欲に狂ったけだもの、のような意味で使っているのだろう。ただそれだと今度は、タイトルとミスマッチ。言葉の意味や内容に気を遣った作品でないことは確か。同価格帯の抜きゲーブランドでそこそこちゃんとしているところもあるので、システムを凝るよりまず、基本のテキストに目を向けるべきではないかという気もする。
ゲームと直接関係ないが、「readme」テキストにも「不具合当のお問い合わせは……」と誤字があった(不具合「等」だろう)。そんな細かいところにこだわらなくても、と言われるかもしれない。だが、プロの仕事としてこれは、やや心許ない。バグの洗い出しやバランス調整は、誤字脱字チェックなどとは比較にならない神経を使うはずだ。案の定本作は、パッチがでても大量の不具合が放置されて残っている。この程度の表面的な部分すらきちんと整えられないブランドが、果たしてゲーム性のある作品を作ることができるだろうか? と不安に思われても仕方がないだろう。
まあひらきなおって、『孤高の低価格ゲームブランドがキモオタにクレーム付けされまくる!~無駄だ!幾ら評判を汚されようとも屈するものか!~』という作品を発売するという路線も残されているのかもしれないが、そんなことにならぬよう祈るばかりである。
基本点80点(低価格)、H+3、不具合-5、不具合対応-3、システム-15、回想-2、テキスト-5。Hのクオリティは高いが、他の見所は微妙。せめてマニュアルが充実していればと思ったが、ついていても内容自体がさほど面白くは無いのが悲しいところ。クソゲーを求める人にとっても、さほど突き抜けた作品というわけでもなくお薦めしづらい。獣娘とえっちぃことがしたい人か、sealのチャレンジ精神に乾杯したい人以外、積極的に突っ込む理由もないだろう。Hシーンは魅力的なだけにいたく残念だ。
▼攻略アドバイス
以下は、これからプレイする方に向けて、私の経験に基づく簡単なアドバイス。どこかの攻略サイトさんが攻略情報掲載してくださっていたら良いのですが、一応保険がてら、簡単な道標として残しておきます。行き詰まった方はご参照ください。自力で絶対解く、という人はスルーでお願いします。
進行の基本スタンス
・ 攻略キャラ一人に絞って、客は全てそのキャラにとらせる。
・ 攻略キャラはLv1調教を体力の限界まで続け、収入を増やす。
・ 攻略キャラの体力が減ったら別キャラを1度ずつ調教し、客をとれるようにしておく。
・ 金が貯まったらスラムに金をばらまいて店の知名度をMAXにあげる。
・ 洞窟で採集し、金の指輪を量産。以降、探索と客取りをくり返して金を貯める。
・ 一定値金が貯まったら、各場所で2回ずつ採集し、材料を溜める。
・ 最終週に突入したら、アイテムを制作し、調教イベントを埋める(最終週に入る前にアイテムを制作すると、週末に全部売却されるので注意)
・ ハーレムルートは、最後の日曜日に攻略キャラと喋らなければOK。
(個別EDの見方)
各キャラの調教をプランDまで進行し、プランDを二回実行。日曜の会話で攻略対象との会話を行っていれば個別EDを見られた。各キャラのプラン閲覧条件は以下。
ユリア
プランA Lv1:なし
プランB Lv1:ユリア・プランAのLv1を実行+麻縄1、特製ローター3(※材料に魔力モーター)
プランC Lv1:特製触手生物3
プランD Lv1:プランCLv1実行のみ。材料はなし(プランD説明表示で確認済)。
ラヴィ
プランA Lv1:なし
プランB Lv1:ラヴィ・プランAのLv1を実行
プランC Lv1:拘束用チェア1、特製拘束セット1、特製アナルバール1
プランD Lv1:プランCLv1実行。材料は表示されないため不明。画像的にバイブとかは必要そう。とりあえず全調教用アイテム1つずつ作成しておけば実行可能。
フローネ
プランA Lv1:なし
プランB Lv1:フローネ・プランAのLv1を実行
プランC Lv1:特製拘束セット1
プランD Lv1:プランCLv1実行。こちらも表示されないため不明。全調教用アイテム1つずつ作成しておけば実行可能。
一覧すればおわかりのように、ユリアだけプランB実行にローターが3つ必要。他キャラが1つずつのアイテムで一応クリアできたため、アイテムはひとつで良いと思い込み、ユリアのプランBがいつまで経っても出現しませんでした。同じようなトラブルに見舞われている人が多いのではないかしら。それとも、そんな手抜きの間抜けは私だけ? それならば良いのですが……(なお、EXイベントの中にも、アイテムが複数個必要なものがあるので注意)。
とにかく、本作の説明書がわりになれば幸いです。行き届いた説明書があれば、アイテム作成の意味も分かるしイベント条件を探す楽しみもできるはず。もちろん、イベントのフルコンプも可能なはず。EXイベントは見なくても回想等は埋まりますが、単純な総当たり作業で済むのでこれから挑む人は是非とも頑張って頂きたいです。
しかし、悪評が広まり敬遠されがちになるだろう本作に、相当な労力をつぎ込んだ自分を自分で褒めてあげたい気分。もう、ゴールしてもいいよね……。