セックスを題材にしたバトルもの、というジャンル的な視点からは厳しい見方も出ているようだが、そういう玄人はだしのスタンスをとらない私のようなユーザーもいると思われる。そこで、ジャンルには余りこだわらず内容について触れた。敢えて規定すれば、和姦系痴漢ゲーくらいの気持ちで臨むのが適当だろうか。
本作はsofthouse-sealというブランドの長所と短所が綺麗に出た作品であった。
長所とは何か。言うまでもなく、常軌を逸したおバカなノリ。私も何回かsealブランドの感想を書いてきたが、このブランドの生き生きした作品には例外なく、どこかバカなノリがある。
「臀部シーロール」、「ヨガリフレイム」、「ペロ・フィナーレ」などなど、パク……インスパイアネタで他作品にぶら下がる必殺前戯。民明書房も真っ青のデタラメとトンデモで細部まで構成された、確信的なC級臭。機知に富んだスマートさなど微塵も感じさせないHでオゲレツなギャグ。整合性などなんのその、タライが降ってきたらそれがオチという、潔いまでの不条理ぶり。それなのにチープさなど微塵も感じさせないクオリティで、尋常ならざる熱意を感じさせる、馬鹿馬鹿しいCGやムービー。ずらり並べた豪華な素材を惜しげもなくネタにつぎ込んで、「ツッコミどころが多すぎてどこから何を突っ込んでいいか分からないのでとりあえずナニをつっこんどくか」とユーザーに思わせられたら大成功、と言わんばかりである。
では、短所とは何か。それは、息切れのしやすさ。バカなノリというのは途中から挿入したり、途中で止めるわけにはいかない。そんなことをすれば、ユーザーは正気に返ってしまう。バカは貫いてこそバカ。したがってseal作品が「素敵なバカ」であるためには、バカに徹しきらねばならない。そして、sealというブランドはそうすることができる力を持っている。これはかなり希有な能力である。
だがしかし、そのやり方はたとえるなら短距離走。早い段階でトップスピードにのって、そのまま走り抜けるには適しているが、中距離~長距離になるとどうしても失速する。ロケットスタートが得意のseal、低価格作品のプレイ時間ならバカなノリ一本で維持できた勢いも、フルプライスになるとかなりしんどい。
バカなノリというのはある意味、落差が売り物だ。「当たり前」からの乖離。その距離が面白さを誘う。けれど、延々バカなノリを続けられるとそちらが当たり前になって、次第に落差が感じられなくなってしまう。シュールなギャグも続けば鬱陶しいだけ。やみつきになる麻薬的な魅力を持った作品が無いではないが、本作はそこまで行かない。また、ギャグとは別に物語を支えるストーリー性がしっかりしているわけでもない。つまり、長距離走を支える土台が無い。
システムは単純な選択式ADVの形式に、アイテムやバトルファック要素を盛り込んで「遊べる」工夫を施してある。しかし、バトルは余りに単純で難易度が低く、工夫する余地もほとんどないために早晩作業に成り下がる。余り難度が高すぎるのも考え物だが、『最終痴漢電車』のような凝ったシステムの作品と比べると見劣りするのは否めない。そして何より、蓄積がされない。
誰かを堕として他キャラと絡ませるとか、主人公がレベルアップして特殊なプレイが出来るようになる、といった積み重ねが活きる要素が殆ど無いので、作業をくり返す楽しみが薄れ、結果としてエロシーンを見る・EDを見るのに対する単なる邪魔要素になってしまった。
結果論になるが、2000円台の低価格作品をそのまま量だけ増やしてフルプライスにした、という感じ。質的な変化は余り無い。そして量は増えても密度という意味では、上記のような理由から物足りない部分があるし、何よりウリであるおバカ具合が萎んでいくのが痛い。
ただ、もう一つのウリ、Hシーンに関してはハイレベル。シーン数は67で低価格の3倍程度、30シーンほどはムービーが付いている。また、単純にキャラ一人に対するシーン数も増えているのでそこは確かに魅力。Hシーンも攻めに受けにと幅広く、特に体位と表情へのこだわりが凄い。舞と梗子に関しては表情だけでごはん三杯はいけるくらい良い表情だった。惜しむらくはキャラによって服装のバリエーションが違いすぎることなのだが、これは設定的にある程度諦めざるを得ないだろう。
またメインヒロインたちのキャラをしっかり描く時間も増え、そのぶん魅力はUP。妄想が加速して暴走になる義妹・愛莉や、真剣勝負で次第に「男らしさ」に惹かれていくツンデレくのいち・舞のキャラは、このくらいの丈が無ければ味が出なかったと思う。その意味で、フルプライスの強みを生かし切った点は評価できる。
あと評価したいのは、ムービーのつくりだろうか。似たり寄ったりの見せ方が多いムービーの中、本作はかなり独特なアニメチックムービーで面白かった。演奏シーンの手の動きはどうかと思うが、あのチープさも一つの味と考えれば、まあアリかな、というレベル。
というわけで、長所と短所がはっきりと出た本作。三月月末商戦の前哨戦、派手に上がった打ち上げ花火……になるかと思われたが、残念ながら失速息切れ。されど無下に捨てるには惜しい。そんな、いわく言い難い微妙な作品。ひとしきり笑った後でのエロ目当てなら上々だが、それ以上に大きなセールスポイントは見あたらない。ただ、買ってもそれほど損した気分にはならないだろうという、奥歯に物が挟まったような言い方で締めくくることを、ご容赦頂きたい。
基本点90点、バカ+3、エロ+5、システム-8、息切れ-8、価格-4。スケスケパッチその他は採点に含めず。ただ、入れたら2点くらい足しても良いかもしれない。