食事しながらこのゲームやっていたら、食欲が無くなりました。食べ物系のタイトルなのに!
ミステリー部所属の女学生、狩野悠里、柚木まみ、高階琴音の三人は、廃墟を探す途中で山道に迷った挙げ句、驟雨に追われて遭難寸前だった。ようやく駆け込んだ旧い洋館。そこには法条秋夜と名乗る若い男性が、二人の妹と使用人と四人で暮らしていた。秋夜の厚意に甘え、一泊することになった少女たち。同じような境遇に陥った男子大学生二人も交え、賑やかな夕食が開かれる。しかしそれは、恐ろしい夜の幕開けであった。
本作は『淫妖蟲』のように、戦う女の子がズタボロにされる作品ではない。無力な女学生が、秋夜たちの張り巡らせた罠に絡め取られ、嬲られていく物語。したがって、「戦う力があるにもかかわらず抵抗できない」といった制約ゆえに引き出される、無力感や絶望感は無い。かわっておしだされるのは、秋夜たちの不気味さだ。嬲られる側ではなく嬲る側の存在感で嗜虐心をあおって凌辱の質を高めるのは古くからある手法だが、作品に応じて使い分けるあたり、さすがは老舗の凌辱ブランド。分かっているなあという感じである。
このところ低迷気味だったHシーンも、本作はなかなか良い。理由の一つは恐らく、キャラクターにあわせたシチュエーションが用意されていたことにある。
髪型や服装、口調に、キャラとの相性があるように、キャラに相応しいシチュやあえぎ声、イキ顔というのがある。何でもかんでも白目剥いて舌つきだして、「らめぇ」とか言ってアヘアヘしてたって、そりゃらめぇなのである。バイブが似合うとかローターが良いとか、縛るにしても縄かベルトか触手かで、イメージが変わる。そういう細かいところにこだわってこそのプロ。そして本作は、間違いなくプロの仕事であった。
たとえば、性格の違う三人娘にはそれぞれ全く違うシチュエーションが用意されている。男嫌いで高飛車な琴音は、外から来た大学生を操って恋愛をさせてから仕留める。元気で明るく責任感の強い悠里は、他の仲間を楯に取り、妹たちのおもちゃに。秋夜に惚れているおっとり系少女・まみは、惚れた弱みを最大限利用してずぶずぶの泥沼にはめていく……。キャラを選んでシーンだけ分岐する抜きゲーが多い中、こうして丁寧にキャラにあったシチュエーションを作っていく態度には好感が持てる。
服装や小道具なども、種類こそ多くないもののきっちりと峻別されており(パンツのずらし方などを見てください!)、行き届いたHシーンを披露してくれる。さすがはあおじる大先生、人をおっ勃てるのが上手。これ以上は無粋なので言及しないが、こんなのを若い頃から見て育ったら、将来興奮のハードルが上がりまくって大変になること請け合いである。少子化問題解決のためにもこの作品、18歳未満の若人にみだりに触れさせてはなるまい。
ストーリーのほうもなかなか気合いが入っている。通常、凌辱ものの多くは、Hシーンに力を入れるあまり物語が完全に背景と化しておざなりになってしまいがち。結果、「回想シーンだけで良い」のような発言を耳にすることも多いのだが、本作に関しては心配無用だ。
双子の幼女の処女膜が、クラッチシールドよろしく再生するなど、言動の端々からただの人間ではないことを漂わせる宝条兄妹。しかし、その「正体」については明かされない。彼らは何者なのか、なぜ人里離れた山奥にひっそりと暮らしているのか。その不気味さが物語を駆動する原動力となる。
ヒロインたちと秋夜の視点を交互に入れ替えながら進行するザッピングで、情報を適度に制限しつつ、各ヒロインのルートで全体像が補完される。秋夜との関わりによってキャラの個性を演出するだけでなく、「H以外全部同じ」の物語と違い、各ルートを完走するモチベーションも捻出できる仕掛けであった。
また、先にも述べたが、凌辱する側の造形が良い。秋夜は「私はね、好意や信頼が、一転して絶望と嫌悪に変わる……あの瞬間が、たまらなく好きなんだよ」と笑いながら言ってのけるような、底知れぬ悪意の塊でありながら、時折、妙な哀愁や歪な優しさを見せるときがある。それが何に由来するかは作中明らかになるのでここでは語らないが、彼らはまさに、タイトル通り人を「喰フ」、現代の「鬼」なのだ。
「鬼」とは、単なる妖魔怪異の類ではない。世阿弥は「鬼」に触れ、「形は鬼なれども、心は人」と想定したと言う。日頃姿をあらわさない「鬼」が、ふとしたきっかけで少女らに手を伸ばした。その手の意味は何であったか。一時の戯れだったのか、抑え得ぬ欲望だったのか、止みがたい孤独だったのか。それぞれのヒロインの物語が、人の心を棄てかねた秋夜たちに去来する想いと重なり合っている。秋夜があるルートの終盤漏らす、「私が……どんな生き物でも、あなたは私が……好きですか……?」という一言に籠めた意味を想うとき、破滅しつつ現世を生きながらえる「鬼」たちの運命が、まことに哀れに感じられるのである。
………って
そ ん な わ け な い だ ろ J K 。
この作品はそんな『アトラク=ナクア』みたいなしっとり良い話ではないですごめんなさい。いや、嘘を書いたつもりはありませんよ。割とそういう雰囲気はありますし、私はそんな風に読みました。特にまみルートはバリバリの良い雰囲気でしたし、「ラスボス」こと悠里とハーレムEDは、まさに復讐から生まれた「鬼」を体現するに相応しい話。ただ、相当頑張って読むとこんな感じになるかな~? ってくらいです。過度な期待はNG(あ、Hに関しては大丈夫)。
そもそも、TinkerBellである。あおじるである。エロセンター試験があったらでる順Aくらいの必修単元に、そんな眼から汁が出るような内容は不要なのである。汁は下半身と蟲の体液だけでよろしい。実際の内容は、およそ以下のような感じだと思えば大過ない。
家臣:殿! 3Pでござる!
殿 :(・∀・)イイネ!!
家臣:殿! 触手がきたでござる!
殿 :(・∀・)イイネ!!
家臣:殿! 糞尿ひりだしながら絶頂でござる!
殿 :(・∀・)イイネ!!
家臣:殿! 電気ビリビリでござる!
殿 :(・∀・)イイネ!!
家臣:殿!
殿 :( ´□`)ま、まだあるの?
ともあれ、恋愛譚としてのエッセンスを内包しつつ、最後まで凌辱で押し切った、潔いような勿体ないような作品。特に悠里とハーレムルートのEDは秀逸で、うまく膨らませていたらとんでもない作品になったのではないかと思うのだが、そこをきっちり抜きゲーで落とすのがTinkerBellの真骨頂(褒めています)。
他には、声優陣の熱演が印象的。特にまみ役の葵時緒さんは、『無限煉姦』のイメージもあってちょっとどきっとした。恒例の、ルートクリア後の声優トークも楽しく、ファンなら必聴といったところ。
短所としては、相変わらず不親切なシステムに、いささか迫力に欠けるエフェクトや音楽。また、ストーリー自体は魅力的なものの、構成のまずさが目に付いた。たとえば複雑な選択肢でルートが分岐するのだが、その際、物語の中に選択肢を選ぶ手掛かりが殆ど無い。せめてヒントがあれば、それを探す楽しみでテキストを読めるのだが、これでは事実上、単なる総当たりである。
それだけでも手間なのに、何度も同じHシーンを見るはめになるのはさすがに辟易。謎を提示してサスペンスとしての体裁を整えているのに、構成がそれに追いつかず宝の持ち腐れになっている感が否めなかった。フローチャートなどで分かりやすいように見えるが、分岐の確定要因もはっきりしないので、あっても無くても似たようなものというのはいつも通り。このあたりが修正できれば、だいぶやりやすい作品だったと思う。
なおルート制限は無いのだが、攻略順は「琴音→悠里→まみ→ハーレム」を強くお薦めする。ハーレムへの入り方は少々分かりにくいが、チャートをじっくり見れば分岐箇所が分かるはずだ。
基本点90点、エロ+5、内容+3、CG+2、声+2、演出-5、システム-5、構成-10、ボリューム-5。体操服の股間がやたらとハイレグなのが最後まで気になった。登録ユーザーには後日、追加ディスクが届くそうなので、期待したい。