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OYOYOさんの華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~の長文感想

ユーザー
OYOYO
ゲーム
華麗に悩殺♪ くのいちがイク! ~桃色ハレンチ忍法帳~
ブランド
softhouse-seal
得点
23
参照数
9262

一言コメント

久々に踏んだクレイモア地雷。指向性散弾でユーザーの精神を粉微塵。破砕粉砕大喝采。18禁の理由はHシーンではなく、「この作品を楽しめるような大人」向けという意味でしょう。なお、感想のほうもいささか皮肉・過激な発言をしております。配慮はある程度したつもりですが、悪口が苦手な方・メーカーのファンの方もおられるでしょう。その場合、恐縮ですが、自己責任にて閲覧をお願いします。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今回は申し訳ないが、赴くままに書いてそのまま投稿する。私のビミョーな感想を受け取って頂くには、特に編集しないほうが良いような気がするからである。作品の紹介をするつもりは無いので、概要説明も省いた。読みづらいかもしれないが、ご容赦いただきたい。

メーカーのロゴが流れ、タイトル画面から開始ボタンを押した瞬間、これは来たな、という予感が電流のように全身を駆け抜けた。何が来たか? 地雷である。

すぐにはそれと分からぬようカモフラージュしながら、足を置くや否や、カチッと嫌な音がした。これぞ、本物の地雷。スイッチがどんなものだったか、冒頭の一文を引用しておこう。

 ―今より昔の時代。
 ―場所はとある山の奥に、一つの忍びの里があった。

「今より昔の時代」! コレハナニカ、オカシイデスゾ? 言うまでもなく、「昔」は「今より前」であり、また過去の一時点や時代を指す語だ。つまりこの文、意味が重複しまくった世にも不自然な日本語。「頭の頭痛が痛い」と言っているようなものである。「場所はとある山の奥」も微妙にヘン。

そしておそらく、本人は自信満々。大まじめに雰囲気のある文章のつもりで書いているせいで、恥ずかしさがハンパ無い。これらを皮切りに、この後も似たようなテキストが続く。幸か不幸かテキスト量自体が多くなかったのでそれほど目立った被害にはならなかったが、一歩間違えば高名な『リアル鬼ごっこ』も真っ青の、珍妙な作品ができあがっていたかもしれない。

しかし、これはまだまだ序の口。悩殺くの一のハレンチな旅は、始まったばかりである。続いて、香澄たちが暮らす「山吹の里」についてのくだりを、ご覧頂きたい。

 ―平和で自由な暮らしをしており、
 ―里に住む若者たちは、各々が忍びの術の訓練を行っていた。

これまた冷静に考えれば、スゴイ話。平和ならば必要無いであろう、過酷な忍術修行をしているというのが、まずよくわからない。この村の伝統芸か村でブームの趣味なのだろうか。また、自由な暮らしをしているのに、若者たちが皆、自主的に修行しているというのも驚きだ。余程素直なのか、やることが無いのか……。もしかすると、美人のくの一と房中術の修行ができるからかもしれない。それなら納得である。

叙述形式に関して言えば、途中から地の文が無く会話だけで物語が進行するという、斬新なスタイル。MS-DOS時代にはいくらか見かけたが、それはフロッピーディスクに地の文を収納すると容量的問題が発生するため、泣く泣く削ったというのが真相という話を小耳に挟んだことがある。ことの真偽は定かでないが、昨今はほとんど見かけないスタイルであることには違いない。体験版や修正パッチに何ギガのファイルを配布する現代Windows社会で、このスタイルは古すぎて逆に新しい。ちなみに、こんな感じになる。

 ―【夕羽】「この場所の敵は……何とか撃退できたかしら……」
 ―【夕羽】「でも里の中にはまだまだ敵の気配があるみたい……。何て人数なの。こんなに大きな忍びの組織だなんて……」
 ―【夕羽】「……でも、戦わないと。ここで諦めたら、何も分からないまま全てが終わってしまう」
 ―【夕羽】「頑張ろう。きっと他のみんなとも、すぐに合流できるはずだわ」

誤解の無いように断っておくが、一切編集はしていない。これが、本作のオリジナルテキストである。見よ、この説明ゼリフ!! 状況説明と感情描写を、いちいち言語化して説明してくれるのだから、恐ろしく親切。そして気の毒なことに、夕羽嬢はツッコミも合いの手も入らない状況で、こんな独り言を呟いているのだ。彼女の孤独を思うと、哀しみの涙滂沱たるを禁じえない。

ちなみに、「ここで諦めたら、何も分からないまま全てが終わってしまう」とのたまっているが、ご安心あれ。相手の組織が何者であったか、最後まで一切説明は無い。諦めなくても何も分からずじまいであった。その結果、クライマックスはこうなった。

 ―【香澄】「はああッ!!」
 ―【敵頭領】「ぬう、ちょこざいな!!」
 ―【夕羽】「危ない、お姉ちゃん!」
 ―【敵頭領】「むっ!?」
 ―【香澄】「隙あり!! せぇいっ!」
 ―【敵頭領】「ちっ、ちょこまかとやり辛い奴らだ!!」
 ―【夕羽】「あっ! 逃げた!!」
 ―【香澄】「逃がさない! 追い詰めるわよ、夕羽!」
 ―【夕羽】「うん!」

驚くなかれ、これが最終戦闘場面である。今回は「ネタバレ」にチェックを入れたのだが、ラストシーンをまるまま抜き出しても、全くネタバレ感が無い。むしろ私が配慮して、一部編集しているのかと思われる方がおられるかもしれないので、改めて宣言しておこう。ありのまま起こったことをお話しております。

つまり、敵の頭領(ラスボス)に名前が無い。正確には、ラスボスの名前が「ラスボス」だったわけだ。そして、この斬新な戦闘描写。効果音も、CGすら無い。細かな描写を省き、全てをユーザーの想像力に委ねようという、前代未聞の壮大な演出である。私の目の前を何度も、恐ろしいものの片鱗を味わったポルナレフ先生が通り過ぎて行った。

ゲームの内容自体も凄い。

単純な横スクロールACTで、自キャラには遠距離・近距離の攻撃にボムとガードがある。敵は、地上に大型・中型・小型の三種、飛行敵が二種。ボスはそれぞれ一般敵と少し違う工夫が施されている……と書くとなにやら面白そうだが、要はボタンが倍になってシステムを簡略化した『スーパーマリオブラザーズ』のような内容だ。テキストの簡略化と言い、このメーカーは古典回帰運動でも始めるつもりなのだろうか。

ちなみに、初代Sマリオの発売が1985年。30年近く前に、今なお遊べる作品を作っていたNintend○の先見性は疑うべくもないが、それと肩を並べる作品を現代に甦らせたsofthouse-sealのオールドセンスをどう評価するかは、個々のユーザーの判断にお任せしたい。

ゲームパートについて、もう少し紹介しておこう。アクションゲーム中、敵忍者に捕まると犯される「やられモード」があり、それはなかなかエロいのだが、CGも無く動きも単調。バリエーションも片手の指で数えられる程度なので、正直飽きる。敵を全て倒すのはなかなか時間がかかるものの、ひたすらキーボードの「Z」と「X」を押すだけの作業で、別に面白くも何ともない。

その作業が必須だったなら、本当に救いがたいクソゲーであって私もクリアせず投げていたと思う。だが幸い本作は、そんなヌルゲーマーでも安心の裏技が存在する。ジャンプ中にアタリ判定が無いので、ひたすらジャンプしながら画面を横にスクロールさせていけば良いのだ! これで、敵を一匹も倒さなくてもステージボスのところまで進軍できる! 時々、着地判定と敵の判定が重なって被弾することもあるが、誤差の範囲だし、タイミング良くガードをいれたり空中移動できればゲームオーバーの可能性は殆ど無い。

ボスとの戦闘は回避できないが、どのボスもルーチンワークで動くだけ(ラスボスのみ、途中で攻撃パターンが一度だけ変化する)、後ろへの攻撃は一切してこないので、前後移動と攻撃をくり返すだけで、ほぼノーダメージで攻略できる。2度ほど出てくるカエルの親玉みたいなボスは、ガードとジャンプの合間に飛び道具を撃つだけで終わり。実にお手軽簡単な設定で、誰にでも攻略できるよう細やかな配慮が施されている。唯一、本当に些細な問題点を挙げるとすれば、まっっっったく面白くない作業を強いられる、ということだろうか。

Hシーンもろくに無く(というかCG付きのHシーンは無し)、脱衣麻雀のご褒美CGのようなちょいエロCGが10枚、ステージクリアのたびに出てくるだけ。スコア次第で見られるCGが変わるということもなく、何がしたかったのか本当に理解に苦しむ。グラフィックのクオリティは相当高いと思うのだが、それを活かす気が無いばかりか、台無しにするテキストをひっつけているのだから、お寒いことこの上ない。二月に入ろうかというこの時期に、ユーザーを凍死させるつもりなのだろうか。

さて、本作が正真正銘、紛うことなき駄作であることは最早疑いのない事実であるが、クソゲー慣れした人ならばここからが本番。このような場合、発売することになったブランドの、特に広報担当の苦労に想いを馳せることで、更に深く作品を味わい、楽しむことができる。折角の(駄)大作であるから、骨の髄までしゃぶりつくしてみたくなるのが人情というものだ。

メーカーHPの紹介を見ると、広報の苦心惨憺ぶりが目に浮かぶ。たとえば、「システム」の紹介。「体力がなくなるとゲームオーバー」、「ボスを倒しステージクリア」などと大文字で色まで付けて大々的に紹介しているが、よく考えてみれば(考えなくても)これは、普通のアクションゲームなら当たり前の内容である。

むしろ、体力が無くなってもゲームオーバーにならなかったり、ボスを倒してもステージがクリアできないゲームのほうが珍しい。どんだけ売りになるシステムが無いのかという話だ。

加えて、「ダメージを受けると服が脱げる!?」や、「犯される事も?」の「?」マークがまた、あわれをさそう。実際服が脱げたり犯されたりするには多少条件があるのだが、掲載段階で決まってなかったのではないかと邪推したくなる。そうでなくても、唯一この作品のゲームパートでオリジナリティがある18禁要素を、大々的に売り出すのではなく、逆に「?」を付けてその場しのぎのコマーシャルをしなければならないというのは、何とも気の毒。

そしてストーリー紹介にも書かれている、「謎の忍び集団『黒影の牙』」。はっきりと決まっていたであろうこの敵の設定が、本編でまるっきり出てこないというのがまたどうしようもない。大々的に売り出した「謎の忍び集団」が最後まで忍んで謎のままでした、というのは、もはやコントである。

乏しい素材をほとんど全て使い切り、少しでも面白い作品に見せようと工夫された紹介ページは、ある意味見事。これを見て、騙された、などと怒ってはいけない。「ウソはついていないので、どうか勘弁してください」という悲痛なメッセージを暗黙の内に了解するのが、18禁向けファンの対応というものだろう。プレイし終えてから再度見ると、スタッフの苦労が随所にうかがわれ、一層趣深い。

結局本作は、貧困なアイディアにやる気のないストーリーと、トンデモ系のテキストをひっつけ、個性がほぼゼロだけど説明的な独り言が大好きなキャラクターを文字通り右往左往させるという、突き抜けた退屈さが魅力の作品。間に合わせで仕上げた課題レポートとか、夏休みの読書感想文のようなものである。ただし、その中でも、読んでいるこちらが気の毒になるくらい内容が迷走しているというオプション付きで。

あと、くの一好きのはしくれとして一言だけ言っておくと、この作品で本当に致命的なのは、忍者への愛が感じられないこと。敵忍者のディテールもさることながら、折角出てきた敵キャラの蛙やら蛇やらを、Hシーンに絡ませなくてどうするか。それだけではなく、くの一相手なのに縄で縛ることすらしないとは、言語道断。これでは、忍者のコスプレをしたその辺の女の子と変わらない。諸々の細部は頑張って目をつぶるとしても、この点だけは看過できなかった。くの一というコンセプトは好きだし、ゲームシステムは今後改善の余地がいくらでもあると思うので、次回以降はそのあたりに配慮してほしい。

さて、色々長くなったのでこの辺で終わりにしよう。勢いに任せた感想であり、不適切な発言をしたかもしれない。また、日本語表記を巡る感想や、ゲームが楽しめるかどうかについては、異論のあるかたもおられるかもしれない。もしかすると感性がおかしいのは私の方で、本作が実に美しい日本語によって書かれた、熱中度の高い神ゲーである可能性を否定はしないが、そうであるという方がおられたら、是非その真髄をご教授頂きたい次第である。

最後に一首。

世の中に 絶えて地雷のなかりせば 月末金曜 のどけからまし
(意味:世の中に一切、地雷というものが無かったならば、月末の金曜日をのどかな気持ちで暮らせるだろうになあ。)

落ち着いて考えると、2000円でこれだけ味わえたのだから十分元をとった気もする。心底最悪な出来の作品だったと思うのだが、それでも楽しめる要素があるあたり、クソゲーとは面白いものである……などと思ったが、あまり一般的な楽しみ方では無いだろう。血迷って本作を購入して怒りを感じても、どうか私のせいにしないよう、くれぐれもお願いしておきたい。

基本点80点、CG+3、いろんな要素を考えてトータル-60。本当に地雷が無くなったら、それはそれで寂しいのかもしれませんけどね。