ErogameScape -エロゲー批評空間-

OULENさんのゴア・スクリーミング・ショウの長文感想

ユーザー
OULEN
ゲーム
ゴア・スクリーミング・ショウ
ブランド
BLACKCyc
得点
94
参照数
1881

一言コメント

すべてを許して あなたと二人還るの 

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

その筋では割と有名なグロゲー。苦手な人のためにグロ描写へのフィルターが三段階ほどあって、所詮はただの絵だと舐めてかかると本気で引くレベルにまで極めているように感じた。
できることならばフィルター抜きでやって欲しいし、フィルターかけないと見るに耐えないというのならいっそ見なければいい。理由は後述する。


このゲームはおおまかに前半・後半に分かれている。

①前半(あかね、葵、希衣佳ルート):ひたすらに残虐。選択肢を一歩間違えるとヒロインが惨殺される。そのことに関してライター側は意図的に情報を小出しにしかしないため、ユカの理不尽さに多くのユーザーは怒りあるいは不快感を抱く。

②後半(闇子・紫ルート):舞台設定・背景がようやく明かされはじめる。小さな悪意が大きな悪魔生み出したのだった。誰が悪かったというわけでもなく、誰もが悪かった。誰も責められるべきではなかったけれど、誰もが責められるべきだった。皆が加害者で、皆が被害者だったからだ(前半ヒロイン三人は明らかに100%被害者だが)

さて、ここでなぜフィルターを通さずに直視して欲しいと前述したか。文章でうまく伝えるのは難しい。「文章だけではうまく伝えることができない」ということこそが、まさしくフィルターを通さずに直視して欲しいという理由に繋がっているからだ。

愛憎は紙一重である。その差異は感情の性質がプラスの方向かマイナスの方向かに傾いている、ということでしか判断はできない。これはいわゆる「嫌よ嫌よも好きのうち」というのとは少し違う。憎いということは、本当に憎いということだ。そこに裏はない。ただひたすらに憎い。
このゲームは、はっきりいって前半部分の要素は巷でよく見かけるギャルゲーと大差ない(葵はちと歪だが)。主人公はヒロインと恋に落ち、付き合うことになる。
と思ったら紫の悪魔に惨殺されてゲームオーバー(笑)。なにこれどういうことなのどうしてこうなったとユーザーは叫びたくなる。
「こいつさえいなければ……」と誰もが思ったろう。それでいい。大いに怒りを覚えてもらいたい。そのためにもきちんと用意された一枚絵を見るべきだ。
この辺の感覚は実際にプレイして味わってもらいたいところである。絵について文章で書き並べても、まさに「百聞は一見にしかず」
そして前半を終えて迎えるは惨殺描写がないラッキーなさいたま闇子さんルート。彼女は物語の中枢を担う人物だったりするので、このヒロインを終えた段階でほのかに紫の悪魔への感情が揺れ動いているかもしれない。
「いやまだだ、まだ終わらんよ」と意気込んで紫ルートをプレイ。「あれ……なんだかちょっとかわいいかも……」と思い始めたらもう敗北確定。完全にライターの狙い通りギャップの心理につけこまれたユーザーはマイナス方向の針を緩やかにプラス方向へとシフトさせていってしまうのであった。気がつけば「あれ、紫って普通にかわいそうな子じゃん……」とほだされる始末。

もしも一連の描写なく、紫ルートのみを描かれていたとしたら、同じように感情移入できただろうか? 少なくとも自分にはその自信がまったくない。「なんだこいつは」から「あれかわいい」への大胆な方向転換っぷりに洗脳されてしまっていたように思う。
ギャップ心理自体は非常によく使われる古典的な手口の一つではあるものの、まさしく18禁ならではのハードグロ・エロスを交えて構成した辺り、ブラックサイクというメーカーは本気でエロゲに取り組んでいるように見受けられた。

最後になるが、エピローグで流れるEDテーマ「時果つる夢」
ゴア・スクリーミング・ショウというゲームを歌詞の隅々にいたるまで表現したこの曲は、単体で聴くよりも本作品を頭に浮かべながら聴いて欲しい。
まあエロゲソングなんて大抵内容と合わせて聴くべきだとは思うが。