情より先はない
マノの力への意思をかき乱す肉親のミルカと、マノを好きになってしまったシエの二者択一がこのシナリオの主軸となっている。
迷い続けていたマノだったが、シエに危険が迫り決断を余儀なくされ、冷静さを奪われた状況でシエを選んだ。
それによりミルカは知らぬ地に一人残され、兵士に捕まりマノを庇って死んでしまう。
シエはミルカとマノの仲を引き裂いたことを悔やみ、彼を深淵から解き放つために何千年もの時を生き続けることとなり誰も救われない結果となった。
マノがシエを求めたことで迎えた悲惨な結末や、マナのバッドエンドからわかるように青い涙は性欲からくる愛を否定している。
また長い時を供に生きた夫婦が持ちうるような性欲的な愛と共存するに至った情、つまり作中で言われていた真の愛についてもまた語られてはいない。
そんな真の愛には至らない情が青い涙のテーマとなっている。
そのテーマを示すものにマナと供に永遠の時を過ごしていくエンドがあり、これには彼女が自身に内在する性的な欲求を拒む事でたどり着く事が出来る。
このエンディングでは恋人としてでなく、家族のように共存していく2人が見られる。
これはマナの中でシエがした過ちがもはや禁忌となり、性欲的な愛が情と交じり合うことすら許されていないからで、それはマノであった勇介も同様の所感だと考えられる。
夢幻では願望をそのまま実現できるにも関わらず、彼らの関係はそのように家族であった。
あの過ちで出来た傷から、マナは勇介の恋人になることを願えず、ミルカのように家族として勇介と生きていくことしか出来ない。
シエのトゥルーエンドにおいて、彼女は自身の傷を癒すことで、呪いから解き放たれ消失してしまう。
これによりマノとシエの真の愛が示されることはなくなってしまったわけで、話は情までに留まり、それより先についてこの物語は沈黙するのみである。
青い涙は彼女たちの情までを描いたゲームと言える。