俺たちは空を飛べないけど、この地上で羽ばたくことができる。いい歳して号泣しちゃったよ。
全力で笑いを取りにくるファンキーなテキストは照れ隠しなんじゃないかな。
『おれつば』は生きにくい現代に生きる若者へ贈る、気恥ずかしいくらいまっすぐなエールだった。
人を選ぶ絵柄と、わかるようでわからんあらすじのため、既存ファン以外とっつきにくいのが残念。
実は私はアニメから入ったのですが、肝心のアニメもエンタメ重視の視聴者にはそっぽ向かれちゃうかな。
もっともアニメ・ゲームともにわかりにくいのは序盤だけで、中盤からはどんどん面白くなる。
アニメのラストなんて泣きっぱなしでしたよ。DJコンドルの粋な口上と、バックで流れる主題歌『Spread Wings.』で決壊した。
その後速攻ゲームを買ってプレイしたけど、こりゃすげえエロゲがあったもんだと。絵が苦手だしぃとか言ってた自分をぶん殴りたい。
劇的な展開が待ち受けている感動巨編じゃない。
地に足の着いたメルヘンを語る大勢のキャラクターの中に、必ず共感できる奴がいると思う。
そいつらがそいつらなりに必死に羽ばたこうとしている姿に自分を重ねて、涙してしまうんだと思う。
お気に入りの主人公は隼人。ヒロインは鳴。
隼人先輩マジかっけーっす。戦闘力も高いけど、なにげに一番彼氏力高くね?
野郎のくせにツンデレの萌えキャラとか誰得…超萌えました。
鳴に「隼人さん」呼びされてキョドってるとことか可愛すぎでしょ。
鳴はね、わかる、いるよこういう子。
人なつこいかと思いきや臆病で、ちょっとでも相手の迷惑かな? 嫌がられたかな? と思うとぱっと身を引いちゃう。
そのぶんパーソナルスペースをしっかり持ってて、変わり者であることにめげない。
だから隼人もいっぺんに好きになったんでしょう。そりゃ可愛いし面白いし守りたくなるわ。
ストーリー的にも隼人編が一番好きかな。転がるほど萌えたし、夜のギバラの雰囲気とYFBの面々が最高に良い。
「俺たちに翼はある」ではなく「俺たちに翼はないこともない」で締めくくるのが憎らしい。
空は飛べないけど羽ばたくことはできる。
ひどかどの人間になって社会に羽ばたくという意味でしょうね。
だからこそ、オトナになりきれない“社会に生きる隠れオタク”の心にも沁み入る。
逃げたっていい。真っ向勝負ばかりが人生じゃない。
世界は変えられないけれど自分が変われば、楽しく生きられる世界を見つけられるかもしれない。
いつかは羽ばたけるかもしれない。
そういう希望に満ちたエールだった。
たかがゲーム、されどゲーム。
笑って、萌えて、泣いて、さあ明日もがんばろうと奮い立たせてくれる。
たいしたやつです。ありがとう。世界が平和でありますように。