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Nus2014さんの恋する彼女の不器用な舞台の長文感想

ユーザー
Nus2014
ゲーム
恋する彼女の不器用な舞台
ブランド
CUBE
得点
73
参照数
1068

一言コメント

オサレなタイトルと引き込まれる導入でつい期待してしまうがシナリオは凡庸。むしろイマイチ。ただHシーンはキャラごとに5~6とこの手のゲームでは多め。ストーリーには目を向けずカントクさんの可愛らしい絵だけをありがたがれば幸せにはなれる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

●シナリオについて
プロローグからOPムービーに至るまでの引き込み方が上手く、
これはシナリオとしても期待できるかなと思ってしまったのが余計な勘違いで、
良かったのは最初だけだった。


シナリオが物足りなかった原因は2つ。


・主人公
ヒロインの好意に鈍感な主人公というありがちではあるけど
序盤からどんなにヒロインがアピールしても
「幼馴染としての好意だよな」の一言だけで
どう見てもあからさまな好意までないことにしてしまうのは
鈍感主人公の中でもたちの悪い部類。


主人公を過剰な朴念仁にするシナリオしか書けないのなら
無理して看板ヒロインなんか作らないほうがいい。



真優についてはキャラデザも悪影響を与えてたと思う。
もちろん真優単体で見れば凄くかわいい。

だけど、主人公が恋愛感情を抱かないキャラとして見ると
正統派ヒロイン風のキャラデザが説得力を失わせる一因になってたとも思う。

たとえばYourDiaryのゆあみたいなチンチクリンであれば
(幼女しか恋愛対象として見られない方々の意見は置いとくとして)
主人公の言い分についても多少は印象変わってたのではなかろうか。



ただし、これはあくまで「シナリオを重視した場合」に「多少はマシになる」という話で、
結局最終的にはシナリオはどうでもよくなったので、真優は今のままのほうが良い。




・部活
「弱小部の救済」という話でもあるんだけど、
エロゲの場合、顧客層を考慮してか「少人数でダラダラやってたぬるま湯みたいな部活」というパターンが多い。
でもこういうのは「そんな部なら潰すほうが妥当じゃん」と呼んでて思ってしまう。

この作品の演劇部もご多聞に漏れずそんな感じで、
部員が2人しかいないうえ演劇さえやらず真優のDVD見てお茶飲んでるだけなら
別につぶしても問題ないと思う。






●絵について
カントクさんの絵はいつもどおり良いんだけど、
今回の絵は過去作と比べても良くなってるように感じる。
絵というより塗りの違いなんだろうか。

たまにイラスト仕事をしてる人がエロゲに参入するとあれれ?ってなることがあって、
過去作の「夏ノ雨」や「your diary」の絵がそんな感じだったんだけど
今回は特に気にならなかった。





●システム周り
セーブデータの場所が豊富で、ページごとにテキスト入力できるのがすごく便利。
そんなにたくさんセーブする需要ねーだろという説もあるけど、多いに越したことはない。



●各ヒロイン√について
・真優
最初にやった√で、このころはまだシナリオとして見られるものかなーと期待してたため
いろいろガッカリしてしまった。


主人公と一緒にいたい、半同棲状態で毎朝おんぶ登校してて
それでも恋愛感情じゃないと言い張る主人公にはいくらなんでも無理があり、
その無理がある部分・・・主人公が真優に恋愛感情を抱くのを頑なに否定することに
なんか理由があるかと思って読み進めたけど特に何もなく
「今のは幼馴染としてだよな」の一点突破で終了してしまったのはガッカリ。


最初の演劇を終えた後、注目を集めたことに怯える真優を見て
主人公が「ひょっとして演劇をやらせるべきじゃなかったのか」と
今更なこと言い始めたのはビックリした。

今まで真優が普通に登校できなくなってたのはなぜかとか
この主人公はまるで考えてなかったんだろうか。

本当に主人公は真優のことを今まで、恋愛感情のみでなく全てにおいて、
何も見てなかったんだなと感じさせられるシナリオで、
看板ヒロインのルートがこんなんじゃダメだと思う。



他にも物足りないのは
真優が演劇をやりたいんだかどうなんだか最後までよくわからないことで、
「一吾のため」の一点しかないなら復帰する必要ないんじゃないかと思う。

なんか作中で演劇やってる真優を見たがってたのが百花とモブしかいなかったような気さえする。



あと、日常パートでのヤキモチ描写はちょっとやりすぎで、
主人公が他の女の子とちょっとしゃべるだけで毎回所有権を主張するのはさすがに鬱陶しいし、
ついでに、真優がそんななのにそれでも恋愛感情じゃないよとしか言わない主人公もどうかしてる。




・アリス
金髪で胸がでかい。
これ以上の説明はいらないと思う。



・百花
アリス会長に課題を出されて真っ先に他人に助けを求めた第一印象が自分にはかなり悪かったので、なんか微妙。
そもそも部員2人でお茶会してるだけの演劇部なんか存続させる必要はあるんだろうか。
声もちょっとキャラ作りすぎで知障になってるのでオフにした。



シナリオについて少し触れておく・・・といっても真面目には読んでなかったんで、飛ばし飛ばし読んでた部分でだけど、

百花を元気づけるための主要な役割を真優にやらせたりしていて、
相変わらずこの主人公は他人の気持ちのわからんやつだなあという印象を強くした。
プラネタリウムの後、真優を別室に追いやってヤリ始めたのも酷い。

百花は百花で真優の片思いの相手を知ってて寝取りながら
エピローグで性懲りもなく演劇部に真優を勧誘してるのだからどうかしてる。



キャラには全く期待してなかったけど
最初のHで普通にマリアさんも混ざってきたりする節操のなさは素晴らしい。
(最初だけだったが)

もはやピュア☆ラブとは程遠いこんな√を入れるのなら
最初から演劇なんか投げ捨ててエロ特化してるほうが自分は評価した。




・千奈
エロ漫画でよく見るシチュだなと思いました。
いいんじゃないでしょうか。




●総評
一通り終えてからこの作品でいらない部分は何かと考えたら
けっきょく「演劇」ではないかという気がする。

演劇を題材としてるのに
演劇に真面目に打ち込んでる登場人物が皆無では
話としては面白くなりようがない。


絵、キャラ、BGM、システムなど
個々の構成要素は良い。

シナリオ要素は薄くして固定ヒロインもなくして
分岐ありきのキャラゲーにしたほうが
素直に楽しめるものができたのではないかと思う。