タイトルがなんか微妙だし所詮は続編だろうと思い、発売当初は手出ししなかったんだけど、つり乙2が思いのほか面白かったのでやってみた結果、自分の選球眼のなさを再確認した。ここまでやって初めて「月に寄りそう乙女の作法」は完結すると思う。
●総評
大抵のエロゲの続編は・舞台を大きく変えず・ヒロインだけ入れ替えた
というオマケ程度のものだけど
この作品の場合、スタートが主人公が女装してるだけのほぼ別作品で、
ボリュームもほぼ前作と変わらない。
物語は前作のバッドエンドから始まり、
前作でほとんど触れられなかった妹・大蔵りそなと、
大蔵一族の跡目争いを基軸に話は進行する。
主人公は序盤では前作の「桜屋敷」の思い出に浸りながら新生活を乗り切っていこうとし、
日常の些細なことでも
「桜屋敷の人はこうだった」「桜屋敷ではこんなことがあった」と
頻繁に回想が差し込まれる。
けれど、次第に主人公たちは異端を排除したいパリ校の生徒や大蔵家など
外部からの直接的な悪意にさらされ、
美しい思い出だけでは大事なもの(ニート妹)を守れない、と
「桜屋敷」の思い出と決別する。
単に前作とは別の舞台を用意するだけでなく、演出としても前作を切り離し、
別作品であることを暗示している。
前作を切り捨てたことによって描かれる演出が秀逸で、
このために「乙女の作法」と「乙女理論」を分割したのではないかと思う。
(実際どういう経緯でこの作品が作られたのかは知りませんが)
続編ということもあり
前作「月に寄りそう乙女の作法」のプレイは必須。
「月に寄りそう乙女の作法」をやったのなら、絶対にやっとくべき続編。
ただ、本筋のシナリオが濃すぎて
エッテ√などはとりあえず分岐させただけのオマケ・・・というか内容的にはほぼバッドエンドで、
いわゆる√分岐型の普通のエロゲみたいのを期待すると肩透かしを食らう。
そんな人いるか知らんけど。
それと、前作よりさらに朝日の露出度の高いCGが増えてる気がするが、
あの尻は男の尻です。間違ってはいけない。
●プレイ順
言うまでもないけど「月に寄りそう乙女の作法」のプレイは必須。
あと、そんな人は滅多にいないと思うけど、
先につり乙2の初回限定についてた「従兄妹理論」をやってはいけない。
自分の場合、りそなルートだけやってとりあえず満足して
「従兄妹理論」をやっちゃったのが完全に失敗だったので。
りそなルートさえやっちゃえばもう重要なネタバレ事項なんかないだろ
とタカをくくってたのが完全にアホでした。
乙女理論内での推奨は、無難に
りそな⇒メリル⇒その他
その他は完全にオマケなのでやってもやらなくてもどっちでもいい。
●絵について
りそなメインであるものの比率的には
前作よりは西又率が高まってる。
今作で西又さんは大幅に絵柄を変えてて、
従来のファンがどう思ったかはわからないけど、
個人的には格段に可愛らしい絵柄になったと思う。
ただし、それは立ち絵限定で、
イベント絵だと絵柄の不安定さや体の描けてなさが目立つ。
脇役キャラで映える人なのかなというイメージは
あんまり変わらない。
●システムについて
相変わらずコンプしないと音楽鑑賞できないのがめんどい
●BGM
一部前作から引き継ぎ、一部追加。
個人的には前作より強化されてて良いBGMが増えてると思う。
夜のBGMの「モンパルナスで途方に暮れる」や
要所で流れる「地下アトリエのパリジェンヌ(たち)」
辺りが良い。
前作の主題歌のアレンジである「DESIR」は、
シーン補正もあって特に良い。
ただドイツ人のテーマ「ゲルマニズム・ミニマル」は
もう少しなんとかならんかったのかと。
あれはコミカルを通り越して、どんなシーンでも雰囲気をぶち壊してると感じる。
●各ルートについて
○りそな
「結婚してあげてもいいですよ」「僕は近親相姦には反対だな」
という関係が好きだったので、
恋愛モードに移ってく2人を見てると君たち本当にそれでいいのかとしか思えなかったけど
兄に迫られて「おぅふ」とか「どぅふふ」とか奇声を上げる妹もこれはこれで面白いので、まあ良し。
最後は全てがひっくり返りすぎ(特に母が)な気もするけど、
そこに至るまでで満足できるので、それもまあ良し。
・パリ校での生徒間のいざこざ
・お兄様との確執
・駿我さんのあれやこれや
・フィリコレ
などなど
盛り沢山なネタをよくきれいにまとめたもんだと思う。
○メリル
りそなルートの濃さには劣るとはいえ
メリルにも結構重要な設定が仕込まれてて、
十分楽しめる作り。
自分の場合、先に従兄妹理論やるという愚行をやらかしたので
肝心なとこを知ってしまった上で見てたけど、それでも十分に楽しめると思う。
ただ最後のほうは駿我さんが何考えて当主争いをしてたか知ってないと意味がわからないので、
りそな√を先にやってたほうがいい。
○エッテ
エッテは一応ギャラリーモードでりそな、メリルと並列のヒロインとして表示はされるけど
お話的には完全なオマケ。
りそな√の話が濃すぎるので、うまく話を分岐させられなかったのはしょうがないとは思う。
むしろエッテ√を用意したうえで無理やりその√でも大蔵家のエピソードに決着をつけるほうが全体としてはしょぼくなってしまうだろうし、大蔵家に触れないで終わらせるには共通パートが長すぎる。
ただ、それにしても、
性別バレしたことをネタにして無理やり肉体関係を持つというのはなんかこう・・・
もう少しやりようがなかったのか。
朝日がやられちゃったみたいでモヤモヤする。そこでモヤることが既になんか間違ってはいるが。
とりあえず、何の前触れもなく一晩にしてNTRれたりそなは怒っていい。
まあバッドエンドみたいなもんだし仕方ないのかな。