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November13さんのシロナガス島への帰還の長文感想

ユーザー
November13
ゲーム
シロナガス島への帰還
ブランド
旅の道
得点
79
参照数
382

一言コメント

製作者の情熱を感じられる素晴らしい作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

読者にこれだけの熱量を感じさせる作品を、
製作者の鬼虫兵庫さんが独力に近い体制で創り上げたのであれば、
この作品はもう良作の域ではなく「傑作」の評価が正しいと私は思います。
何より素晴らしいと感じたのは、読み進めるだけの一般的なADVとは異なり、
少しでも読み手に「ゲーム」として楽しんで貰いたいという
製作者の心意気(=ユーザーへの思いやり)と創造性の豊かさです。

前半:大衆用 要点
後半:自分・クリア済の人用 詳細感想(ネタバレセミオープン・分析&思考開示有)など
(※2020/11/22_の感想抹消事件により、気分次第で削除します)

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 ⌒、    _人_ノ    
  、 ""⌒⌒⌒)⌒⌒)    
【前半】
プレイ時間:7~10h程度 
オススメ :『EVE』系列の作品が好き、推理が好き
回避推奨 :×軽度グロ、×軽度ホラー
注意点  :FANZA版購入者は「DMM GAME PLAYER」が必要

■良かった点
・希少な殺人&推理系ジャンル
・凝った演出、独自のゲーム性
・BGMの質
・異次元のコスパ
・ユーザー寄りの作品愛
■気になった点
・セーブ数(30枠)の少なさ(それだけ見所が多い)
・立絵の癖が強い
・纏め方がやや強引

ザックリ点数内訳(点)
キャラクター :  5/5
声      :  ー/ー
BGM・SE :  8/10(非常に雰囲気にマッチしている、SEの使い方が丁寧)
CG     :  7/10(立絵の癖が強い、演出の活かし方が巧い)
ストーリー  : 18/25(黒幕が少し浮いているが、起承転結がはっきりとしており好印象)
構成力    : 20/20(唯のADVとして逃げず「ゲーム」として作品を成立させている)
ゲーム性   : 10/15(ドガーン!!3回爆死しましたwww)
エロ度    :  -/-
システム   :  1/5(見所の多さに対してセーブ枠が30と少ない。唯一の明確な不満点)
+α     :  10/10(コスパが異次元)
総合     : 79/100
判定:傑作


以下、自分・クリア済の人用 感想(※ネタバレSO・分析&思考開示有)
未プレイ者撤退推奨 
プレイしてほしいなぁ。
いい作品だったからなぁ。。。












































































         iニコi iニコi  (r=i)     //\ __
         |  .|| |  ||___Eヨ_   /フ\///\
         |  .ijニj  |i      \ //  //フ\/
         ゝ、____,ノ,  ─    ─ U  じ'   /
            /    (●)  (●)\`,  _ノ
          __|_     (__人__)   | ̄    / ̄/7 / ̄/7 ´
 ir-r---、  /     \    ` ⌒´   ,/__   / ̄フ7 / ̄/7
.iL_|_  `i/  ⌒  ⌒ \     r--、     \ /  // /  //    まさか、この感想を読み進めて

  ̄ ̄)) .i   ( ●)  (●)\(_{i{i{ ┼ }⌒   ⌒ \ !_し'  //  未プレイ……なんて事は無いよねぇ?
.ir--r"´ ノ  ::::::⌒(__人__)⌒:::|    ̄ ( ○)三(○).\   //
.゙==!="\      |r┬-|    ,=、  ::::::⌒(__人__)⌒:::::ト=ノノ
      ,-vミ    `ー'´ /{ ┼) 」ミL  |r┬-|   /
      !┼`i`ー、____,rく  `ーi.  { ┼ }. `ー'´ ./
      `ー'´   || rーti |    \ ̄    ,_,イ
            |L_」 |L_」       ̄i「`T´||__」
            !|__」 !L_」       i[__] !L_」


【後半】(※個人の感想です。引用&転載禁止)
ネタバレを含むので、未プレイ者はできれば撤退してください。
うひょー!!
爆弾解除最高っー!!
ドガーン!!
ドガーン!!
ドガーン!!
故・菅野ひろゆき作品の後を継ぐものが居ないのであれば、
私が挑戦しようという製作者の気概をこの作品の様々な場面から感じた。
故にシステムも彼の作品のオマージュが多く含まれており、
操作パートや犯人当てなど多様なギミックが作品の節々に散りばめられている。
更に独自性として爆弾処理や時間制限有のミニゲームなどを取り入れており、
遊びやすさやとっつき易さの面では、菅野氏の作品を上回る部分も明確に存在する。
ADVにおけるゲーム性はサジ加減を間違えると唯の作業となってしまう危険性をはらんでいるが、
本作では物語の進行を阻害しない程度に巧く作中に取り込むことに成功している。
BGMや視覚効果を合わせた演出面も素晴らしい出来栄えであり、
創造性・表現性の面でも鬼虫兵庫氏は非常に優れたクリエイターだと私は感じた。

脚本の創りは飽きさせないようにスピード感を重要視しており、
細かな描写や整合性といった要素はあまり注視していないように感じた。
(幾ら何でも「業務用カッターでブラックマンバの首を瞬間的に切断するのは無理」だろー
 セーバーソーもってこいやとか、そもそもこの一連の蛇のやりとりで
 犯人の正体まで透けちまっているじゃねぇか!!(※1)とかね)
(※1:殺人が起きている舞台で、主人を残して持ち場を離れるのは使用人の行動としてあまりに不自然)
処女作でこの完成度なら正直褒めるところしかない(褒めちぎりたい)のだが、
個人の感想として、また故・菅野ひろゆき作品を好む同好の士として一応批評の思考を開示しておく。
私が気になったのは「王道の枠に嵌りすぎている」という点。
これはさかき傘氏の手掛けた『EVE rebirth terror』にも言える事だが、
作中の登場人物の描写から「誰が悪で誰が善かが透けてしまっている」
又は「善悪の関係性が固定されてしまっている」とも言い換えることができる。
もっと噛み砕いて言えば
「得体の知れない敵が存在しない(人物の正体が二転三転しない)ので最後まで緊迫感が継続しない」
ことを指す。
2020_1122ショックで消してしまった私の『ミステリート』の感想でも触れたが、
全盛期の菅野氏の作品でもっとも魅力的だった部分は「全く先の展開が読めないこと」だった。
(『burst error』はもちろん『エクソダスギルティー』や『十次元立方体サイファー』等も含めて)
これは読者目線で「作中で登場人物の印象の善悪がガラッと反転する可能性がある」ことに起因している。
本作の場合は登場人物の過去を順番に開示していったのも悪手で、
メタ的に容疑者が絞られてしまったこともマイナスに働いてしまった。
奇を衒いすぎて変な作品になってしまうよりは遥かにマシだが、
それでもアレックスの正体はギリギリまで引っ張ったほうが良かったのではないかと思う。
(構成上ミスリードを誘う上で)
アウロラの序盤のギミックは私が『DUNAMIS15』を先にクリアしていた為
容易に透けてしまったが、初見のユーザーにはとても面白く映っただろう。
これももう少し引っ張って、構成上意味を持たせた方がより作品が面白くなったかもしれない。

ぐだぐだと書き連ねてしまったが、私のこの作品に対する評価は「傑作」で変わりない。
願わくば、少しでも多くの読者がこのような挑戦的な作品を好意的に受け止める環境?時代?であって欲しい。




(追記)■Extra だから許される選択肢について
主にアキラのトイレの話とリリィの鏡の話についてだが、
この場面の選択肢では「本来ADVでは絶対にあってはならない手法(※1)」が、
製作者によって“意図的”に用いられている。
(※1)を明文化するなら
「選択肢1つで過去の人間関係や世界観、舞台設定が変化する」
=「未来を決めるはずの選択肢が過去をも変えてしまう」 
という物語の筋道創り(辻褄あわせ)を最初から放棄した手法のことである。
悪く表現すると「工夫ではなく完全に手抜きの構成」とも言い換えられる。
但し本作の場合は、このような選択肢はExtraのみに限定されており、
ホラー重視のゲーム性を確立させる為に(一種の娯楽の延長線上として)
あえて意図的に採用しているので、手抜きの構成というニュアンスには該当しない。
実力のあるクリエイターにしか許されない、ちょっとしたお遊びのようなものだと捉えて欲しい。

ちなみに本編中にこのような手法を取る作品があれば、
私は普通に正論パンチでボロクソに扱き下ろす可能性があることをここに追記しておきます。




(どうでもよい話)
Top pageへの連投は共有スペースの私物化(荒らし)と同義だと個人的には思っていますので、
見つけ次第即NG登録いたします。投票も同じ。解除はいたしません。













































■NS版について
相変わらずコスパが良く、Voiceがついて更に品質が向上したように思われたが、
販売当初は本編にはないバグが散見され、作品の雰囲気を損なう部分も多かった。
2023年4月現在、更新データで多くの問題点が改善されているが、
バックログで音声が再生できないという令和の作品とは思えない
システム面での低品質さを露呈してしまっている。(+5の要素が▲3ぐらい削減される感じ)