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November13さんの和香様の座する世界の長文感想

ユーザー
November13
ゲーム
和香様の座する世界
ブランド
みなとカーニバル
得点
80
参照数
1287

一言コメント

「羊を数えろ、おねむの時間だ」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

……中盤まではめっちゃ面白かった。
なんというか、物語としては「物凄く惜しい」作品。

以下、感想雑記



【キャラクター・声】 10/10点
■キャラクター (5/5点)
和香さま・琉々葉さまのダブル神様の印象がとにかく強烈。
MVPは和香さま。
其処らのキャラゲー作品なんぞ全く相手にならない程、魅力的かつ面白く描かれている。
主人公の魅せ方としては、もう一歩踏み込んだ活躍が欲しかったかな。
他のキャラクターに関しても十二分に魅力は感じられた。
気になったのは作中での扱い方。
(後述、物語の項目にて)

■声 (5/5点)
脇役に至るまで全く隙の無い配役だったが、
和香さま・琉々葉さま・日傘女(※久しぶりの北都姉さん)・お銀(※久しぶりのピカリン)が特に良かった。
MVPは琉々葉役の五行なずなさん。
「うんまっ!、これ、うんまあぁぁ……っ!!」
いや、本当上手だったよw
もう、最高でしょw
テキストが面白いおかげもあると思うけど、最後まで活き活きとした素晴らしい演技でした。


【BGM・SE】  8/10点
全21曲。
突然差し込まれる意味不明の選択肢と共に流れる「神なる力の行使」のガチ曲っぷりに笑わせてもらった。
普通に格好良いんだけどw
もう一つのお気に入りは雰囲気重視の「この世ならざる出来事」。
気になったマイナスポイントはOP・END曲。
Vocalの方は両者とも完全に声量不足。
OPの方は加えて息継ぎが致命的に下手で、
またそれを音源として拾われてしまっているのでどうしようもない。
如何に曲調に注意を払っていないかがわかる。(▲2)


【CG・背景】 10/10点
全66枚(差分含まず)
立絵の表情差分も多彩で、一枚絵も妖怪・動物(?)ロボ神など種類が豊富。
ダブル神様の角もマトゥルスみたいで格好良かった。
ビジュアル面は文句無し。
満点。


【ストーリー・構成力】 34/40点
■ストーリー (15/20点)
沖彦消失ぐらいまでは満点にしても良いぐらいの出来だったのだが……。
後半はかなりの急ぎ足。
悪く言えば、「雑」。
おそらくプロットは沢山あったのだろうが、納期の問題なのか結構強引に纏めてしまった印象を受けた。(▲3)
他、とーっても気になったのはキャラクターの扱い方。(▲2)
雑感は下記の通り。

●遼河
いやー、見せ方次第で2倍にも3倍にも魅力が膨れ上がる要素がいっぱいあったのになぁ……。
超☆絶勿体無い。
彼が依代である意味をもう少し作風の中に落とし込むべきだった。
安直過ぎる最後の展開(器の共有)については個人的には反対派。
●沖彦さん
いやいや。
本来なら物凄く物語膨らませられるめっちゃ大事な人でしょ……。
彼の存在や主人公との関係をもっと大きく深堀・展開しなかったのが、非常に残念な点。
突然の利き腕の話、大きい話が待っているのか!?とめちゃくちゃ期待していたのに……。
●都
キャラ立ちが良くもっと本筋に食い込んで活躍すると思っていたのだが、ジオラマ関連の神話以降、
最後にちょっと出番があっただけというのは非常に物足りない。
藤咲ウサさんの演技もはまっていただけに残念。
個人的には一番丁寧に扱ってほしかったキャラクター。
もっとエロシーンも欲しかったよw
●おにくん
最後に出てこやんのかーい!?w
結構尺割いたんだから、もっと彼に存在意義を持たせてくれーいw
●山形さん
いや絶対最後何かもっと深い闇があるだろ?と思ったら全く無かった残念な親父。
何でや!?
ぬらりひょん関係者ってだけじゃなく、只者じゃない何か隠していると思うだろ、普通よぉ…。
●藤子
いやいやw
もっとこう、何か……あるだろ…?
期待しちゃうだろ?w
途中から扱いが不遇なんてもんじゃないよ?w
家庭環境まで回想があったのに、何、この適当すぎる展開……。
www
幾らなんでも酷すぎるよw
こんなの絶対おかしいよ!
●根津ちゃん
何かちょっとフラグが立ったのにスルーですか?
……そうですか。
エッチなシーンも無しですか?
くわっせどろふじこっ!
●べんてん様
……えぇ?
何、この内容(活躍)の薄さ……
えぇぇ……?
薄い本も出せないよ、これじゃぁ……。
江ノ島代表頑張ってよ……。
おしりぺんぺん!
●天之御中主神
歴史に基づく神様の適当・自分勝手感の表現の仕方は良かったと思うが、物語の纏め役?としてはゴリ押しが過ぎる。
かと思えば、力業に頼った超常の存在にしては威厳が足りなく映ってしまう。
(封印時の和香さまや日傘女と比較して、見ている側に神としての「最上級の格」が伝わってこない)


■構成力 (19/20点)
文章全体が非常に面白く、かつ読みやすい。
会話文のテキストも言葉の選び方から秀逸で、読み手を飽きさせないどころか、
演じている声優陣をもいつも以上に本気にさせる恐ろしい文章力。
やっぱり田中ロミオって化け物だわ…。

気になった点は大体ストーリーの項目に重複する為省略するが、構成の面から1点だけ。
「蛭子を助ける」
という選択肢を“最後まで”全く活かさなかったことだけは物凄く大きな不満。(▲1)
序盤の遊び心とは異なり、重要な「選択肢」が意味を成さない(機能していない)のであれば
最初から設ける必要は無い。
読者へのヒントのつもりだったのだろうか?
それならば、あまりにも無粋だと思うのだが……。


【ゲーム性】  4/10点
消費者を楽しませようとする工夫が多い点は◎。
シールの種類や絵柄の意味などかなり芸が細かいが、気に入るか(面白いと感じるか)どうかは人によるだろう。
元ネタ探しや考察できる要素も多いので、再プレイでの発見も多くありそう。


【エロ度】 3/5点
回想シーン
和香さま  : 3枠
琉々葉さま : 3枠
都     : 1枠
お銀    : 1枠
藤子    : 1枠
べんてん  : 1枠
テキストは○
ただし、昨今のエロゲー業界を省みれば枠数が少ないのでは?(▲2)
あのー。
我侭言っていいですか?
和香さま、あと最低2枠欲しい。
都ちゃん、あと最低2枠欲しい。
他、+1枠は欲しい。


【システム関連】 3/5点
普通です。
ただ、突然の強制BADENDが多い点は、幾らスキップジャンプ機能が実装されていたとしても
些か不親切かな……と。(▲2)
(フローチャートジャンプのほうが親切だった)


【+α】 8/10点
高いエンタメ性による加点。
中盤までは、しっかりとした面白さを感じられる。
日本神話中心の世界観に、不意打ちでノルウェー昔話の小ネタをブッこんでくる
シナリオライターの博識さには驚かされるばかり。(笑)
ただ、終盤の雑さだけはどうしても気になるので減点。(▲2)


【総合】 80/100点
良作。
作品全体で見ると、ストーリーそのものよりテキストやキャラ付け等様々な面が高水準で纏められていると感じた。
読了感がそれほどでもないので、トータルで見て評価するのか、終わり微妙なら微妙と評価するのかで
レビュアーの点数は高低真っ二つに割れそう。
上記と重複するが、物語の纏め方やキャラクターの扱いを改善すれば
更に良くなる要素が溢れていたのが物凄く惜しい。