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November13さんのEVE rebirth terrorの長文感想

ユーザー
November13
ゲーム
EVE rebirth terror
ブランド
El Dia
得点
78
参照数
2341

一言コメント

「Aマイナスをあげる、杏子」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※『burst error』は最低限プレイしましょう。


シナリオのさかき傘氏始め製作に関わった人達が、『burst error』含め他のEVEシリーズにも
十分な愛着・愛情を持って創ってくれたんだな……と、シリーズファンとして感謝しています。
ありがとう。

個人的な評価(好感度)は、上記の面を踏まえると『EVE new generation』よりも上です。
特に主人公の片割れである法条まりなの描き方は、実に格好良い魅せ方だと感じました。

作品への配慮の為、極力大きなネタバレを避けながら、
またちょっとだけ内容に触れながら感想を残したいと思います。






【キャラクター・声】 10/10点
■キャラクター (5/5点)
物語のメインで活躍する主人公サイド、小次郎・まりな・弥生・氷室に関しては
『burst error』と比較しても違和感が少なく大変素晴らしかったと思います。
本部長に関しては、「普段は飄々としているが、鋭い牙を隠しているダンディーな親父」から
唯の「渋いおっさん」にランクダウンしてしまったのがちょっと残念でしたw

ヒロインについて
橘花ちゃんを『EVE new generation』のアルトや『EVE zero』のトア=ノバルティス・榊原 真(♂)と比較すると、
見ている側の最後まで絶対護ってあげたい感じ(愛らしさ?保護欲?)は少々足りなかったかなと。
(後述の敵側の力不足の影響も大きい)

暗躍する敵側陣営については、『burst error』『EVE zero』『EVE The Fatal Attraction』と比較すると
狡猾な強敵が不足しており、全体的に迫力不足を感じました。
特に公式キャラ紹介の「謎の女A」は『EVE zero』のルース・ブラッチフォード にビジュアルが酷似していたので、
もっと冷徹でヤバい奴だと勝手に推測・期待していたんだけどなぁ……。

あ、プリンちゃんは今回出番無しです。

■声 (5/5点)
驚いたのは弥生役の、行成とあさんの演技のピッタリ具合。
キャラクターイメージを壊さない、故・本多 知恵子さんとはまた少し異なる魅力があって非常に良かったです。
杏子役の大橋彩香(new)さんの声もバッチリでした。
シリーズ継続のベテラン勢の演技にも安定感がありました。


【BGM・SE】  8/10点
全34曲。
過去シリーズを体験しているファンの方には懐かしい音楽も。
ただ全体的には『burst error』『EVE zero』『EVE The Fatal Attraction』と比較すると印象・迫力不足に感じました。
緊張感や迫力のある場面が全体的に控えめな為、その構成に引っ張られた結果だと思います。(▲2)
(ちなみにサウンド関連は『EVE zero』が一番好きです。END(※PS版)が神掛かってる……)


【CG・背景】  8/10点
全82枚(差分含まず)
立絵、雰囲気は○
煙草の煙も素敵でしたw
ただし、グロが良いとは言わないけれど、ちょっとシリーズとしては恐怖心を煽るCGが控えめ(迫力不足)かな。(▲1)
あと、まりなのおっぱいを遮ったのは、いったい、何の光!?(▲1)


【ストーリー・構成力】 35/45点
■ストーリー (18/25点)
超展開が無く、一つ一つが丁寧に描写された作品だったと思います。

ただ、これはもう完全に好みの問題なんですが、全体として物語が綺麗に流れ過ぎたかなぁ
……というのが気になりました。
私が過去作『burst error』で一番好きだった要素は、「全く先の展開が読めないこと」でした。
黒幕がわからず、推理が二点三点するワクワク感・緊張感が、本作には足りなかったかなぁ……と。(▲4)

〈その他、気になった点〉
序盤でリバーが海に花を手向けていることから、一瞬で前作の誰の関係者か読み手に透けてしまう(▲3)
キア君の活躍も、設定に対して後半が空気で今一歩(▲1)
ジェス・カスターの強キャラ臭からの超がっかり小物感w プリーチャーぐらい頑張ってよw(▲3)
何だよ小次郎、跳弾撃ちってw シティハンターかよw(▲1)
『EVE The Lost One』へのリスペクト(?)がちょっと過剰すぎる(▲2)

〈好印象だった点〉
美ノ神みなとの正体。(+1)
実にEVEっぽい小次郎編の最初の殺人(遺体発見)の演出。特に小次郎が事件に関わる動機付けの面でも◎(+2)
謎の女B・杏子が可愛いw(+1)
ナースの正体(+1)
氷室恭子 (*´Д`)ハァハァ 視点の物語(+1)
シリーズで一番格好良い法条まりな(+1)


■構成力 (17/20点)
作品の節々から『burst error』や他EVEシリーズへのリスペクトを感じる、
「シリーズファンへの思いやり度の高い作品」だと感じました。
シリーズ恒例の愉快な選択肢、踊る・叫ぶ・脱ぐ・襲う・休む・座る・触診する・寝る……など、
非常に面白かったです。
どうせなら電柱をよじ登ったり、バーで牛丼を注文する選択肢も欲しかったかな。
個人的には学校の警備員がお気に入り。
また、煩わしさを極力排除した、ユーザー目線の快適な仕様変更も◎。

〈氷室恭子〉
氷室さんをしっかり最後まで描写した作品は、本作が初めてだったのではないでしょうか?
ありがとうございます。
ありがとうございます。
(めっちゃ関係ないけど私が予約購入したのは、氷室さんのおパンツが拝めるワンダーグー特典付きの限定版です)




      ,,、,、、,,,';i;'i,}、,、
       ヾ、'i,';||i !} 'i, ゙〃
        ゙、';|i,!  'i i"i,       、__人_从_人__/し、_人_入
         `、||i |i i l|,      、_)
          ',||i }i | ;,〃,,     _) 当たり前なんだよなァッ!!
          .}.|||| | ! l-'~、ミ    `)
         ,<.}||| il/,‐'liヾ;;ミ   '´⌒V^'^Y⌒V^V⌒W^Y⌒
        .{/゙'、}|||//  .i| };;;ミ
        Y,;-   ー、  .i|,];;彡
        iil|||||liill||||||||li!=H;;;ミミ
        {  く;ァソ  '';;,;'' ゙};;彡ミ
         ゙i [`'''~ヾ. ''~ ||^!,彡ミ   _,,__
          ゙i }~~ } ';;:;li, ゙iミミミ=三=-;;;;;;;;;''
,,,,-‐‐''''''} ̄~フハ,“二゙´ ,;/;;'_,;,7''~~,-''::;;;;;;;;;;;;;'',,=''
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〈気になった点〉
・例のホテルを訪れた際の弥生の無反応っぷり
 「1年前」の事件で、○○○が殺害されているのに、全く何にも触れられていないのはなぁ……(▲1)
 ついでに言わせてもらうと、弥生が優秀……という構成には『burst error』との比較から、
 やっぱり引っかかるものがある。
(本作では理由付けはされていたが)
 管野氏の『ミステリート』に置き換えれば、クラスC~B相当の探偵……という能力・表現が妥当だと思うのだが。
・サスペンス性の低さ
 上述ストーリーの項目と重複するが、やっぱりワクワク感・緊張感が圧倒的に足りなかったように感じた。
 『burst error』『EVE zero』『EVE The Fatal Attraction』にはあった、
 死体を状況検分する注視モードが無かった事にはがっかり。(▲1)
・敵側の力不足(設定・構成面での意味)
 得体の知れない敵が存在しない(敵の正体が二転三転しない)ので、最後まで全く緊迫感を感じない。
 『burst error』『EVE zero』のような衝撃を受ける場面が存在せず、また、
 『EVE new generation』のようにプレイヤーが考察・推理できる要素が非常に少ない。(▲1)


〈誤字(一例)〉
(※×が本文)
×すーごい
○すごーい(音声)

×頼るでなく
△頼るのではなく
○頼らず


〈シリーズ比較〉※個人の感想です。
・物語の面白さ(熱中度)
『burst error』>『EVE zero』>『rebirth terror(本作)』
 >『EVE new generation』>『EVE The Fatal Attraction』>『EVE The Lost One』

・物語全体の展開力・収束力
『burst error』>『rebirth terror(本作)』>『EVE zero』=『EVE new generation』
 >『EVE The Fatal Attraction』>『EVE The Lost One』

・文章の巧さ
『burst error』>『EVE zero』=『EVE The Fatal Attraction』>『EVE The Lost One』
 >『rebirth terror(本作)』=『EVE new generation』

・ハッピーエン“度”
『rebirth terror(本作)』>『EVE new generation』>『burst error』>『EVE The Fatal Attraction』
 >>>>『EVE zero』(※『EVE The Lost One』は超展開すぎて除外)

・快適度
『rebirth terror(本作)』>>>>他



【ゲーム性】 4/10点
愉快な選択肢&テキストの分、加点。(+4)
プレイヤー自身が与えられている情報内で推理・考察できる要素が減った分、
ゲーム性自体は『burst error』より下。



【システム関連】 3/5点
フリーズ2回(▲2)
その他、仕様に関しては問題なし。



【+α】  10/10点
EVEシリーズの新作を丁寧に描いてくれただけでも、大変感謝しています。



【総合】   78/100点
クリエイター陣の熱意がしっかりと伝わる、丁寧につくられた良作。
シリーズファンなら「買い」です。

































































【考察】(※個人の妄想です)
〈『burst error』の「続編」として〉

前作、御堂真弥子の最後の願い

「笑ってよ……ねぇ。そうしたら、私、幸せになれる……。――」

それに対してのさかき傘氏の解釈は、

“やっぱり貴方(真弥子)が居なければ、私(まりな=プレイヤー)は心から笑えない”

……という答えだった(と推測した)。
一部のユーザーから安直と指摘される危険性を承知の上で、本作では明確なハッピーエンドにて物語を終える。

かつて過ごした御堂真弥子との邂逅を、悲しい記憶として置き去りにするのではなく、
「悲劇的な結末自体を救いたい」という思いを胸に、法条まりなの強靭な意志と行動によって「取り戻す」結末。

『burst error』からの問題提起に、「一つの可能性」として真正面から向き合った本作は、
EVEシリーズで最も正当な続編だったという見方も出来る。



■『EVE The Fatal Attraction』との比較
真弥子を助けたいと法条まりなが自発的なアクションを起こす流れは、最終的には手段は異なるが重なる面もある。
上記との決定的な違いは、

“貴方(真弥子)が幸せを取り戻せるのなら、私(まりな)は笑わなくていい。”

という「覚悟」の違いか。
『rebirth terror』より、まりなの歩む道そのものが困難(ダーティー)で、『burst error』の続編として見た時、
より現実的な路線には感じられる。

ただし『TFA』は『burst error』以降のまりなの行動を明確な文章ではなく、
文脈から読者の想像に委ねる部分がやや多いのが難点かな……。
足りない描写も本作と比較すると格段に多い。
(小次郎編の超☆絶投げっぱなしENDの是正、まりな・第三者編の描写補完さえしっかり行えば、
『TFA』を『burst error』の続編として捉える視点・考察も十分面白い)

ちなみに『TFA』の最後の亜美ちゃんとの会話では、私の考察とは真逆の回答でまりなは応えている。
正直者の読者は、自分が一人勝ちする為に邁進するまりなの発言は、
私の考察と真逆ではないかと考えるかもしれないが、
『TFA』の随所で挟まれるまりなの心の内や彼女の目的&行動を頭から追っていけば、
何人かは私と同じ考え方に辿りつくと信じている。