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November13さんのBALDR BRINGER EXTEND CODEの長文感想

ユーザー
November13
ゲーム
BALDR BRINGER EXTEND CODE
ブランド
戯画
得点
72
参照数
483

一言コメント

「おかしいなぁ……勝者こそが真実……なのに……」

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※個人の感想です。気分次第で消します。

Q.本作はどういう層向け?
A.『BALDR BRINGER』を戦闘含めてある程度しっかりと楽しめた、かつ心の広い方向け。
  癖が強く前作よりも好き嫌いがハッキリわかれます。(蛇足感強め)

■状況
高難易度ステージは戦闘狂(★3)、普通のステージは救世主(★6)でクリア。
CGフルコンプでレベル40ぐらい。
主要武器はバルト、十彩、絹花でEXは広範囲でミサイルいっぱい降ってくる装備を採用。
無限は取りあえず75ステージまでクリア。(Tなんちゃらのビーム直撃で消し飛んだ)
→道中やっかいだったのはダスク(強い)、イオタ(設置で焼けた)、
 チーナ(ステージ自体が初見殺し)辺り。
 無限よりBRINGER時代からあるベリハのボスラッシュの方が遥かにクソ鬼畜でやばい。

■良点
1.テキスト全般(特に口語文)
  インクリースの名乗り口上が恰好良かった。
2.物語の展開の仕方(ORDER4の扱い方)
  =登場人物の心理描写を読者の想像に委ねるのが巧い
   例えば一言感想のセリフ。
   これはインクリースが刷り込まれた価値観と、本来持っている情動が拮抗して
   思わず言葉が漏れてしまったシーンなんですよね。
   本作を少しでも楽しめた方には、改めて見て感じ取ってほしい。
3.白雪碧の演技力
  恰好良かったぞ。

■問題点
1.インストール(BRINGERからのアプデ)の方法がクソわかりづらくてだるい(FANZA)
2.前作主人公ヒュージの魅力が激減……というか主人公味がない
  →前作ではヒュージとエリス中心の物語+ヒュージが主体性を持って行動する構図に対して、
   本作はチーナとキニアン主役の物語+ヒュージが一歩引いている構図なので
   物語の展開と読者視点の熱量に温度差が生じてしまう。
   ぶっちゃけBRINGERの続編にしないで、独立した登場人物達で物語や舞台を再構築したほうが
   視点もすっきりする上、フリスチーナに愛着を持てたんじゃないだろうか?
  →主人公像が確立されていることと、読者に好感を抱かせる人物像であることはイコールではない。
   無理やり続編をつくった影響からなのか、ヒュージとチーナの関係性に弊害が出ている。
3.ダスク演技忘れてね?w
4.複雑すぎる世界観
  →設定があまりにも混沌としすぎている。
   大半のユーザーは、もう雰囲気で感じろみたいになっちゃう。
   BRINGERの時点でかなり難解で読者を篩に掛けていたのに、また発展させちゃったよ。
5.ORDER1について
  いやその引っ張り方はおかしいだろ!!
  続きが無いとおかしいだろ!!
  めっちゃ気になるだろ!!
6.何故キニアンがヒロイン枠じゃないのか!!
  おかしいだろ!!
  チーナよりこっちだろ!!
  エロシーンよこせや!!
7.システム面
  ADV部分で自由にセーブさせてクレメンス……。
8.コスパ
  前作『BALDR BRINGER』のボリュームと比較すると、どうしても割高感はある。


以下、自分+科ファン用 ※引用転載禁止
(「Don't Believe Everything You Read.」の意味が分からない方はブラウザバック推奨)































































VERTEX3:D.B.E.Y.R

Did you get it?
……
まぁいいや。

個人的には前作『BALDR BRINGER』の面白い部分は、
「この世界って一体何なの?」を様々な情報の断片から解き明かすところにありました。
プレイヤーはヒュージの目を借りて、どこにでも現れるジャハナムって何者やねん!?
管理体の女の子達はどの世界(過去作)のどういう立ち位置でどういう結末を迎えたの?とか
そもそもお前、クイーンビーだったのかよ(笑)、見返り美人も出してくれよ……等、
主人公目線の驚きと同時に、過去シリーズをプレイしたユーザー目線の驚きも作中で楽しめたわけです。
(透クンや門倉中尉、エドがしくじった世界か……とかいろいろ妄想できるわけです)

で、本作は完全にチーナとキニアン主役の物語
それならそれでチーナ主体の進行で良かったんじゃないでしょうか?
人工知性体であるヒュージは、学習能力があるとはいえ基本的にエリス+管理体以外は
ぶっちゃけどうでも良い存在として認識しているように描かれています。
脚本上エリスに危害を加えようとしたチーナとは、一時的に敵対関係にまで陥る始末。
どう考えてもその地点からのキニアン救出に対する動機づけが弱いです。
彼の物語はエリスを救出できた時点でほとんど終わっていますし。
補足すると、フリスチーナにとってVERTEX4:キニアンことN.M.Iと同等の存在、
ダスクブリンガー=Dusk Bringer Sower of Huge=不二=ヒュージには尊敬と畏敬の念はありますが、
ミカエリス・V・Gを除くVERTEXの管理体は完全に下に見ています。
彼女の出自を考えれば当たり前の話で、VERTEX最上位のキニアンと同等の存在である自分にとって、
VERTEXの管理体など空き地にたむろする野良猫程度の認識としか捉えられていません。
(悪意を持って見下しているのではなく、本当にその程度の認識しかない)
管理体の少女たちを大事に思うヒュージとの相性は、最初から最悪なんですよね。

■世界観と主人公の関係性
一般に主人公という存在は、製作者から予め目的意識や動機付けを与えられ、
舞台の一部分を切り取った中で、物語の先導役として違和感なく読者を導く役割を担っています。
ゆえに、世界観=物語の舞台のスケールが大きくなればなるほど、
主人公のキャパシティの限界が如実に表れてしまいます。
これは本作に限られた話ではなく、ありとあらゆる創作物についても同様です。
物凄~く雑に例えると、地球上に住んでいる田中さんより東京都在住の田中さんのほうが
我々には身近に感じられ、物語の先の展開を想像する器として容易で適しているということです。
(情報を付け足すことで世界観を広げたまま、舞台を限定的に切りだせるってこと)

本作はその舞台が拡大解釈されたまま、垂れ流しの状態で物語が進んでしまっているから
主人公としての役割を担わされたヒュージに魅力が伴なっていません。
そもそも前作『BALDR BRINGER』でヒュージ視点で解き明かされていく世界の秘密は、
あくまで「エリスの救済という目的に付随されている限定的なもの」であり、
世界の謎を解き明かすこと自体が本筋の目的ではないのです。
我々読者は、主人公の目的に沿った行動を追いかけることによって、本筋の物語の+αとして、
副次的にBALDR世界の謎を集め、本編で深く触れられなかった登場人物たちの
固有世界や過去を想像し妄想する楽しみを与えられていたわけですね。

だからこそ本懐を遂げたヒュージやエリスを継続するのではなく、
まったく別のベクトルの目的を持つ人物を主人公格としてほしかった。
もっと言えば、主人公の属性を目標達成型からまるっきり変更したほうが面白かったと思います。
唯我独尊の破天荒型とか、好奇心旺盛のサイコパス味のある人物とか。

まとめとして
主人公がダメ なのではなく
「主人公として選出されたヒュージの動機づけが、物語の本筋(フリスチーナの目的)と嚙み合っていない為、
 本作の物語の先導役としては不適切。ヒュージの目的は前作の時点で殆ど達成されているから蛇足になる」
補足として
「広大な世界観から、主人公の目的に沿った舞台を限定的に切りだすことに失敗しており、
 主人公のキャパシティに限界が生じてしまっているため、作品としてのバランスが悪い」

これが、上述の問題点2、および冒頭で記述した内容の総括です。