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November13さんのあけいろ怪奇譚の長文感想

ユーザー
November13
ゲーム
あけいろ怪奇譚
ブランド
シルキーズプラスWASABI
得点
90
参照数
233

一言コメント

I need a savior to heal my pain When I become my worst enemy

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

故人の感想です。(幽霊か!!)

このヒロインを選択したからこういう未来につながる……(分枝世界の差別化)
ドラマチックに言い換えると「運命の路線変更」が結末まで丁寧に描かれている。
2次元の表現の良さ(可愛さ等)を残しつつ、3次元寄りの行動や思考に近い登場人物達の動かし方が巧い。
前述を高水準で満たしつつ、演出(視覚や音響)面でも手を抜かない徹底した監修体制や、
作風を強く意識したCGや回想も素晴らしく、フローチャート・ジャンプスキップ完備等システム廻りも最高の出来。

☆November13が選ぶ現時点で最高水準のADV☆の一つ。
一応、批評目線で幾つか弱点(※1)もあるんだけど……知りたい?

あと本作どころかエロゲー自体に微塵も関係ないんだけど、最近知った
『呪いのビデオvs種付けおじさん』のタイトルくっそ笑ったwww  なぁにこれぇ
















































(※1)
 前提として、かずきふみ氏は読者の目線に意識を向けながら、
 エンタメ性を含む物語を高い水準で構築&展開できる
 非常に優れたクリエイターの一人であると私は感じています。

その上で私が気になった点(ぶっちゃけ弱点とまでは言い切れませんが…)は、
情動や想像の選択肢を作品の外へ持ち出しにくいという特徴です。
これは、彼の作品は「主人公=読者」の配役(所謂、同一視点)で固定されてしまっている為です。
ものすごぉーく雑な言い方をすれば、目的にしているわけではないけど、
その主人公じゃアニメ化するのは無理でしょ?ってことです。
(ヒロインの個性を獲得するのは巧いのに、主人公の個性の薄さが足枷になっているってこと)
ゲームという媒体では、上述の配役を用いるのは脚本家としては正しい。
なにも間違ってはいない。
プレイヤーに常に選択を強いること、それも大きな正解(魅せ方)の一つです。
でも個性を割く分、読者へ訴えかけるものは薄くなっちゃうよねってことです。
(別にゲームってエンタメだから、読者もメッセージ性まで求めているわけではないんだけどさ、
 かずきふみ氏は良い子ちゃんすぎて自分の作品へのエゴイズムが少々足りないんだと思うの。
 ファッキンみたいになれって意味でもないんだけどサw)

一方、例えば
『ランス10』のランス、『BALDR SKY Zero 2』のエドワード、『Steins;Gate』の岡部倫太郎、
『レイジングループ』の房石陽明、『うたわれるもの 二人の白皇』のハクなどの主人公は
読者が共感を抱くことはあっても、基本的に主人公と自分を同一視して物語を追うことはありません。
それぞれ、洗練された物語の中で一層際立つその強烈な個性が、
物語の外にいる我々読者に、ゲームの内だけに留まらない想像と熱量、
時には感動の余地を齎すのだと私は思うのです。
(主人公が我々の想像の中で生き続けているように感じられるってこと、
 そう感じさせるために一流ライター達は、時には作為的に、
 時にはエゴイスティックに主人公を巧く物語の枠の外へ誘導しているってこと)

つづく?消す?