play時間4時間と話は短い。しかし、伝えるべきことはしっかりと書かれていて、考えさせられるゲームだった。
細かいことを書かず「死とは何か?」の一点に絞ったシナリオは心に残りました。
日常の描写不足はありますが、こういう「伝えたいことだけを伝える」書き方は好きですね。
この作品は一本道です。その中でヒロインの三人の死を知り関わっていきます。そして、そのヒロイン達にどういう態度をとるかによってEDが変わっていきます。意外と攻略は難しかったです。
では、ヒロインごとに(完全なネタバレです)
玉梓冬美
主人公が2年前に働いていたバイトの先輩です。
テーマはしばらく関係が途絶えていた人の死。
主人公の二つ上ということで包容力が凄まじいです(天国EDも含めて)
死を受け入れている態度も含め大人だなぁと思いました。
安芸月依子
2番目のヒロインです。
テーマは生とは何か?
生きることに対して関心がない彼女が、主人公の優しさに触れどんどん変わっていきます。
そして最後には「死にたくない」と言って旅立っていきます。
彼女は最後の最後で幸せを手にいれたのでしょう。
ちょっとうるうるしてしまったシナリオでした。
平坂いずみ
主人公とは幼馴染です。
テーマはごく身近な死。
彼女は、冬実のように死の病でもなく、依子のように死んでもいいと思っていません。
生きたいと思っています。そんな彼女を生かしたい主人公は助けるために奔走します。
そして3つの選択肢によってEDが変わっていきます。では、以下EDごとに
①いずみの側にいる
これが正規ルートだと思います。
助けるために色々と奔走しますが死というものは逃げられません。
最後に彼女が生前に書いた死神の絵を見る場面があります。
命をただ導くことしか出来ない死神はああいう表情をするのでしょうか。
非常に印象に残りました。
②悪魔に助けてもらう
悪魔になること、死神を差し出すことを条件にいずみを助けてもらいます。
助かりますが主人公のことを忘れてしまうので何ともいえないシナリオでした。
あと、死神の漢っぷりがかっこいいです。
③誰かが身代わりになる。
いずみの変わりに主人公が身代わりになります。
現実にはこういうことは無理です。助けたいと思う気持ちはありますが…
もし助けられたとしたら、やはり、死の代償には死が必要なのでしょうか。
また、これまでの主人公が通った道によって依子や冬実の天国EDのあるなしが決まってきます。
おまけ
最初の主人公設定で夏梅栄寿と入力すると開放されます。
先生とHするだけで、本編には全く関係がありません。
■音楽、ムービー
BGM、主題歌、ムービーどれをとっても素晴らしいです。
この作品の言いたいことが詰まってます。
シナリオをplayしてから見ると益々良く見えます。
■総評
この作品は色々と考えさせられました。まず思ったのは、死の病にかかっている人、死んでもいいと思っている人、生きたいと思っている人、全ての人に対して死は平等であるということです。そして、それは決して避けることの出来ない出来事だということです。また、主人公も新しいヒロインとどんどん付き合っていくように、彼女たちが死んだあとも世界はなに一つ変わることなく進んでいきます。それでも主人公の中にはその人が生きていているのだろうと思います。
私は若輩者ながら、友人の死、身内の死など色々と体験してきました。そういうのを考えてシナリオをやると何とも儚い気持ちになりますね。
天いな、タペストリー、そしてアズラエル。
シナリオの質、ゲームの面白さで考えるのであればこれ以上の作品はあります。だけど、私の心に響いたメッセージ性という点ではこれ以上の作品はありません。これも私的名作の仲間入りです。