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Niccolumさんのぎゃくたま2の長文感想

ユーザー
Niccolum
ゲーム
ぎゃくたま2
ブランド
DISCOVERY
得点
90
参照数
530

一言コメント

真面目でバカなんだけど、1本芯の通った主人公が素敵。また、そんな主人公と女性キャラの会話が楽しいのも重要。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■緒言
父親の会社が倒産し、家のものが差し押さえられ一ヶ月の間に金策を講じなければならなくなった主人公が、「ぎゃくたま」を狙って金持ちのお嬢様といい関係になろうとする話。

期間は一ヶ月間、25日を使ってお嬢様と仲良くなります。土日を抜かせば毎日3回の選択を行い、基本的には土日のイベントでヒロインとの距離を大きく縮め、最後の土日でひと悶着あり、そして残り2日~0日でエンドを迎えます。

上記の一日3回の選択が正直ダルイと思うときがあります。会話イベントそのものの短さや、内容がダブることが多いので。

主人公のキャラが良いので、ヒロインとの会話が非常に面白いです。特にしづると七海。

「ぎゃくたま」とは言うが、実際のところそれがクリアにはなり得ない。親の狂言だから。ですが物語の大きな部分を担っていることは確かです。シナリオのアクセントだとかエンドへ向けての起爆スイッチになってます。


■主人公 西園寺雅章
久しぶりに自分の好みの主人公に出会えたという感じです。「男性は知らん、女性には優しく」といういかにもな感じではありますが、男性との会話はほとんど無いので気にはなりませんでした。男の友人キャラとか入れたら面白そうではありましたが。また全ての女性は自分に惚れるという非常に残念な考えをお持ちではありますが、だからといって「お前は俺が好きなはずだろ!?」とかそういうみっともない真似はしないどころか、常に女性に対しては気をつかっています。相手のことを思って自発的に行動をとれる主人公でもありました。今相手は~だろうから自分は・・・とそういった行動を取りますので、非常に好感が持てます。そして自発的な行動でクサいセリフとかも頻繁に言うんですが、それがこの主人公のキャラだと違和感がなく、むしろぴったりはまる感じに見えるのがまたいいですね。


一姫シナリオでのことですが、「名家でなくてもあなたは私の友人だよ」といわれても嬉しくないと言っています。自分と家柄は不可分であり、分けて考えること自体がズレていると。多くのこの手の話では「ちゃんと自分を見て欲しい」というような流れがテンプレ化されているように見られます。主人公の考えは自身と家に誇りを持っているが故であり、ああやっぱり普通の坊ちゃんとは違うなと思わせますね。


■春日 しづる(2.5時間)
お嬢様と思っていたら実は・・・な彼女と主人公が共犯者になるところから面白くなってきましたね。それまで猫かぶってた彼女と主人公との会話が非常に軽妙で、打てば響くようなテンポの良い言葉のやり取りが最高でした。

話はしづるの本当の父親が名乗りでてきて彼女を引き取ろうとします。自分の気持ちと、親が自分を思う気持ちに揺れるしづるが最後に下した決断は・・・。まぁそれほど重くならないしグダグダ長くなったりもしないでサッパリ終われていたと思います。展開自体はありがちでしたが、「共犯者」という二人の距離感が良いアクセントになっていました。最後の最後で主人公が決断する場面なんかも「共犯者」という設定をうまく使っていると感じました。



「しずるさん以外に、しずるさんを責めてる人はいない。それはとても愚かで悲しいことだ」 しずるが主人公を騙していたことを悩んでいる時

「悩んでるだけだと解決しないから、行動しながら悩んでいるだけだ」悩まないのか?としづるに聞かれ

「大事というよりは・・・大切、だな」しづるとのデートの約束を北村に話した時

何気に主人公良いセリフ多いんですよね。しづるシナリオの主人公は男から見てもカッコイイと言わざるを得ないな。



それと思うんだけど、鼻を噛むってキスするより恥ずかしい。

■水瀬 七海(1.5時間)
お嬢様っぽくはあるんですけどね、ただメイド二人に弄られすぎて影も形も無くなってましたが。でもそれが可愛くもあるという。

話はお互いの気品や度量、言ってみればどちらがより紳士、淑女であるか勝負することから始まります。段々と距離が縮まってくるのですが、途中で金の問題が解決してから別れる形になってしまう。その後学院で二人の関係に関する悪質な噂が流れ始め、その出所を主人公が探ると実は流したのは七海本人であることが判明し、その真意に気づいた主人公が再び七海の前に姿を現す。自分の意思を曲げず主人公を突っぱねた七海が予定していたお見合いを受け、その目の前に現れたのがなんと主人公でした。以上のような流れでした。終わり方としてはなんともこの二人らしいなと思いました。

そして何よりも双子のメイドがいいキャラをしすぎだった。主人を主人とも思っていないような皮肉った発言やからかいは見ていて笑えるし、4人による会話はキレもよく飽きないで楽しめた。「敵に回すとおそろしいが、味方にすると致命的な人達」とは主人公の言葉ですがまさしくその通りだなと。




あるなの胸に顔面ダイブして、お嫁にいけないから責任とってくれといわれた時

「わ、分かった・・・責任持ってこの感触は覚えておくッ!」

これが一番笑った。やっぱこの主人公最高に面白いなと思った。

■野々宮 鈴華(3時間)
過去のことが原因で男性恐怖症になってしまったお嬢様。キャラが弱いというか、そこまで多弁なキャラではないし、サブの佳奈にしてもシナリオ中では全体に渡り会話を楽しむとかそういったキャラではないので、これまでのしずるや七海シナリオにおけるようなテンポの良い会話が見られなかったのが残念でした。

シナリオは短いながらも、鈴華の恐怖症に焦点をあてていたのでこれまでより重い雰囲気でした。三角関係的な要素もありましたが、ラストの終わり方はまぁ割とありがちな感じでしたね。



「誰かを幸せにできるなんて、そこまで思い上がったことは考えていない」
「僕が出来るのは、自分を幸せにすることだけだ。僕の大事な人が、僕を見て胸を締め付けないようにするだけだ」 遊園地の帰り、鈴華を楽しませてあげられたかについて

普通の主人公が言ったら寒いですが、この主人公はこういった発言がシックリきますね。もちろんいい意味で。


■八重垣 かなめ(3時間)
中盤まではかなめのほんわかした態度とあいまって和やかな雰囲気ではあったが、ラストはロボットとはどうあるべきなのかについて考えさせられる非常にシリアスなシナリオだった。ロボット三原則やラッダイト運動など、明らかに他ルートとは違う空気を感じた。

しかしながらストーリーにおける疑問点はいくつか。かなめを学園へと送る点からして不思議だと思った。あれだけ未知へと遭遇した際の不安定さを語りながらどうして学園だったのか。管理はただの学生一人。そして一般人との関わりを極力回避させるようなことが話されていたことからも、明らかに学園へ送り込むのはおかしいと思われる。
また、説明も無い巣箱の撤去、主人公を罵っていた碧の真意を殊更悲劇のヒロインのように描写しているのが非常に気になるんですよね。アレどう見ても碧が少し説明するだけでうまく収まると思うんですけどねぇ。碧の手際の悪さで関係悪化しているとしか思えないんだけども。「あんたは何も分かってないのよ!」って普通の学生分かりませんよ。

でもかなめは終始可愛かったし、最後の展開におけるかなめの行動も好きだったので疑問、不満はあったが良かった。



なぜにロボットって女性体(美少女)なんだろうか?あ、エロゲだからですね、わかります。

■篠生 沙樹(2時間)
エロ担当の後輩です。保健室常駐。

ノーマルエンドで沙樹の母親が出てきたので、トゥルーエンドでも出てくるのかと思いきや、金の問題が解決したことによる沙樹と主人公のすれ違いだけで終わってしまったのは肩透かしでしたかね。他のキャラにおいてそのヒロイン用のサブキャラや学園外でもイベントがあったのに対し、沙樹シナリオではほぼ沙樹と主人公のみの会話、そして場所も保健室固定で成り立っていたのも印象的でした。いや、クラスメイトとか保険の先生も数回出番はありましたけどね。

なのでどうもこじんまりした感じを受けるというか、あれ、これで終わり?と思ってしまいました。


「何もしなかった後悔は、多分一生引きずる。それに比べたら、行動した末の後悔なんて、大したものじゃない」

この主人公だからこその言葉ですかね。ぎゃくたま狙っているのなんかも、学生の自分にはそれほどのことはできないけれど、何かしなければ絶対に後悔すると思ってのことだし。



■長岑 一姫(3時間)
幼馴染ということで、長年の付き合いがあるためか非常に会話のテンポが良かったですね。それでもしづるほどでは無かったんですが。

ラストは気持ちのいい終わり方だった・・・とは思うのですが、なんともキャラの心情が掴み辛かったです。これは前作をやってないからなのか、特に一姫の母親が何を考えてんのか正直不明でした。まぁ娘を大事にしているってのは分かったんですけど。一姫にしても、なんとも些細なこと(本人にとってはそうじゃないんでしょうけど)を終始に渡り悩むなぁと思ってました。その割りにラストでいつの間にか、というより一瞬でそんな悩みふっ飛ばしてるのがなんとも。エンド付近とエピローグで180度思考が変わってるし。それに母親と自分とを比べていたはずなのにその肝心の母親と対峙する場面が無いってのはどういうことですか。

■結論
絵は今となっては古臭いような感じを受けますが、やはり会話の素晴らしさが群を抜いてますね。それは決してプレイせずに分かることではないので、ぜひ一度プレイして欲しくはあります。一人似た逸してそれほど時間のかかるゲームではないので、しづる、七海だけでもやってみれば楽しさが分かるかと思います。