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Niccolumさんのキスアトの長文感想

ユーザー
Niccolum
ゲーム
キスアト
ブランド
戯画
得点
80
参照数
898

一言コメント

シナリオは可もなく不可もなく。キャラは魅力的。なによりも良かったのはゲームの雰囲気。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■緒言
美術の学校に通う主人公が、学年末制作の為にとある場所を訪れ、
そこで出会う女の子と仲良くなって・・・と言う話。

以下簡単な要点
○キャラクター同士の会話の雰囲気が良い。しっとり落ち着く感じで、意味のない会話でもいいからずっと聞いていたくなる。

○Hシーンに気合いを感じる。特に梓と有紗。

×エピローグ、もしくはその前から主人公不在のルートがある

×偶に肝心な部分を数クリックで飛ばすことがある


■主人公
周りの空気を読んで行動できる気の利く人間。
行動的かというとそれほどではなかったですけど、このゲーム美術学園という設定上ヒロインはある程度自分というものを持っていて、
それぞれ異なる分野での世界だから必要以上に主人公が助けるとか出しゃばるような展開はないです。
ただ、彼女としてヒロインがピンチになった時にはズバッと行動できる奴です。


キャラ、シナリオ感想
■棗 梓
真面目で物事をそれなりにこなすことはできるけどそれまで。
所謂天才ではなく凡人。
そしてエロい。
真面目とのギャップもあるかもしれないけど、彼氏の為に際どい水着着たり保健室でHしたりとエロ方面への強調が半端なかった。

シナリオは学園内展の話が出てきた所で終わりが見えてたけど、結構あっさり終わった感じ。
梓が非常にエロ可愛いキャラクターなのでもっと見ていたかっただけに残念。
内容としては梓、主人公共に才能のない人間と言うことで、天才と凡人の差が中心に扱われていたと思う。
ただしエピローグ通して一応テーマ的にそのような感じだったけど、
肝心の美術部分に関してはそこまでメインとして据えていたかというとそうでも無い感じで、
例えば学園内展までの10日間が数クリックで進行したり、
まだ半分も完成していなかった作品が次の瞬間には完成して提出していたりで、
過程はそれほど重要視せず、天才と凡人の差に悩む梓がどういう考えを持ってどのような答え(将来)を掴んだか
というのをわりかしあっさりと描いた印象。

むしろエロ可愛い梓さんもっと見たかったですはい。

このルートに関しては月夜、有紗共に主人公のことを男として好きな状態で梓と付き合います。(主人公は友人、兄としてと思っていたようですが)
そして二人とも自分の気持ちに対して主人公と話すことできっちりケジメをつけるような描写があります。
普通だったらスルーして何事もなかったように祝福するパターンが多い中で結構珍しいし、好印象でした。



■小鳥遊 まどか
こういう飄々としたキャラが彼女になった途端デレデレになるギャップというのは良いもので、
それを期待していたんだけどちょっと外れた感じかな。
キャラが変わるようなデレる様子はなく、いやそもそもイチャラブ自体が然程なかった。
夢の為に主人公と遠く離れて(海外で)暮らすか、それとも夢は諦めて主人公の傍にいるか、
ということをメインにしていましたが、まぁ結論は彼女らしいというか分かってましたような展開で、
特にそれに関して葛藤するような描写も無し、時間が飛ぶのも早すぎて、普通そこでイチャラブでも入れないか
ってところをばっさり省いてくる。
というわけで当然シナリオは弱く、だからといってキャラクターで押し切れたかというとそこまでは、何せ付き合う前と
後でまどかがあまり変わらない(もちろん好きという意思や態度はしますが)ので新鮮味がない。

よって、もったいない感じのするルートでした。



■藍川 有紗
このキャラクターの声聞いてると声優さんの偉大さが分かる気がします。
クォーターの微妙にカタコトな日本語が凄いそれっぽく聞こえるし、一つの文章でも感情のこもり方が違ってて、
なによりあじ秋刀魚さんの透き通るような声がずっと聞いてて飽きない。

シナリオに関しては、ちょっとお粗末というか、有紗の成長物語のはずだったと思うんだけど、肝心の成長過程は
変わろうと決意するエンド~下級生に慕われるエピローグですっとばしちゃうし、
なにより主人公が終盤からフェードアウトしてその後エピローグ含め一切出ずに終了。
個人的にやっぱりエロゲは主人公とヒロインの物語なわけだから、エピローグ出すなら「その後の二人」を書いてもらいたいな。

終わってみるとシナリオは然程記憶に残らない代わりにキャラクターが強烈に印象に残りました。
付き合う前の有紗の懐きっぷりや無防備さについては、有紗の口からそれこそ何度も男として好意を持っている
ような発言が出てくるので、兄妹だから故かそれとも男として好意を持っているのかいい感じにこちらをもやもやさせてくれますね。
これが恋人になった後だともう至る所で甘えてくるのが可愛すぎて、絶対自分の顔だらしなくなってたはず。
ベタベタしてくるというのではなく、控え目なんですけどしっかり主張して甘えてくるのが有紗らしくて良かったです。


■星見 月夜
自分の好きなように自由な絵を描くか、それとも見られる人を意識して高い評価を受けられる絵を描くか、というテーマ。
元々が元々だけに心の成長という意味では一番成長したのではないかと思います。
結果的には成長前と後でやっていることに違いはないのですが、
自分の思ったようにただ描きたい絵を描いていたのが、自分の描き方を模索した結果今の自分に合っている描き方に終着したという意味で、
以前のふわふわした危うい感じから心の芯の強さが見えるようになったと思います。

もちろん好きなことやって結果が付いてくるわけじゃないので語られない未来については分かりませんが、
(まぁ好きなことやって結果が付いてくるなんて一握りだし、現実問題絵には明るくない主人公が月夜をサポートできるかは微妙だけど)
そんな悪い意味でリアリティのある将来を書くなんて蛇足以外の何物でもないし、
何か起きても二人なら大丈夫だろうと思えるようなエピローグだったのでこれでOKであると思います。


このシナリオに限っては月夜のキャラクターよりもテーマ性が強く出ていたかなと感じました。


■狩野 ひじり
これはFDでヒロイン昇格待ったなしですね。
主に有紗、月夜シナリオで絡んできます。
月夜とはライバル、有紗とは互いに認め合った友人といった感じに収まりますが、
特に有紗のシナリオでは主人公とも割と絡んで全裸にもなったりするのでもうこれはFDを期待していいんじゃないでしょうか。
有紗のエピローグでは主人公との関係を掘り起こされてビクビクしてるひじりがなんかすっかり角がとれて和んでる感じで可愛いです。

また月夜と同じ天才枠ながらも、月夜が感性の天才だとするとひじりは天才よりは秀才と言った方が近い。
最初は何かメンドそうな女だと思ってましたが、天才と凡人に関する持論や、天才として持たなくちゃいけない責任について語ったり、
天才と凡人を上と下の関係でなく右か左の棲み分けとして考えているようなところ等、
何というかいい意味で天才は言うことが違うというか清々しい気持ちになりました。

逆に、自分の描きたい絵を描いているだけです。評価なんて考えてないです。でも高い評価されてます。っていう月夜は、
正直現実にいたら自分も嫌味を言っちゃいそうだな。


■総活
雰囲気を楽しむためのゲームです。
ヒロインも一人一人魅力的でしたが、みんなで集まっての会話の雰囲気が凄く癒されます。
音楽もそれに合っており、なんか作業部屋の会話をドラマCDにして聞いていたくなります。

個人的には特に梓と有紗がお気に入りで、この二人はルート中で特にキャラクターの魅力を前面に押していましたので、
この二人が気に入ったらお勧めです。

BGMに関して一つだけ、
不安を感じを表現するBGM(Etoiles pas briller)がなんか場の雰囲気に合わないというか、そこまで重い雰囲気じゃないのにBGMのせいで無駄にすごく重く感じる。