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Niccolumさんの百花繚乱エリクシルの長文感想

ユーザー
Niccolum
ゲーム
百花繚乱エリクシル
ブランド
AXL
得点
85
参照数
2555

一言コメント

王道。奇を衒った感はないけれど、手堅くまとまった良作。王道とは多くの人に支持されているからこそ王道なのだと再確認した。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■緒言
AXLのゲームは恋楯、プリフロに続いて三作目。今回は帝国の威信を一身に背負い、皇帝の耳目として地方領主を監督する権限を持つ「巡察使」という職業の主人公が、ある貴族の不正を暴いたことで左遷され、その左遷された辺境の村を立て直していく話となっている。共通シナリオで村おこしを成功させた主人公を、このまま村から出すまいと村長以下が画策し、ヒロインが猛烈なアタックを仕掛けていく所から個別シナリオに入る。個別シナリオでもヒロインとの絡み(萌え)が主だが、ミルトスでの生活を通して主人公が英雄と呼ばれるに至る出発点を描いています。

以下簡単な要点など

ゲーム説明には、村の住民には最初嫌われている、ユッカが目の仇にしているとありますが、そのような描写はほとんどありません。最初のほうにちょこっとあるだけです。マーガレットに関しては最初に少し嫌っている、というよりは信用していない描写が何度かありました。

AXLでお馴染みの濃い男キャラによる掛け合いは今回無し。

悪役たる悪役は出てきません。居ても小悪党です。

無意味に暴力を振るうヒロインがいない。

どのルートでも最終的に主人公が英雄となることがエピローグで語られます。

■主人公
最近のエロゲにはあり得ないくらい自分をしっかりと持っている主人公。巡察使には妻を持てないという規定があるため、全てのシナリオで必然的に主人公が巡察使をやめるか否かという問題が起こるが、どのシナリオでも最終的に巡察使を続けている。多くのエロゲにみられる主体性のない、ヒロインの事情に引っ張られっぱなしの情けない主人公とは大違いである。事前情報で鈍感というのが若干気になったが、この主人公は真面目という言葉を体現したようなキャラクターで作中でもそれは前面に押し出されているし、地の文で主人公の考えがはっきりと述べられるので、あまり気にならない程度だった。確かに鈍感であるが、それを真面目という強いカラーで塗りつぶしていると言っていいと思う。


■マーガレット・デルフィニウム・ミルトス(9h、共通含む)
これぞ王道といったシナリオ。領主の娘であるマーガレットと領地運営を助け合いながら行い、その中で二人が・・・というか主人公がマーガレットを女性として好きになり、マーガレットとのこれからと巡察使との立場とに板挟みになりながらも二人で答えを見つけていく。最終的には巡察使が妻を持てないという法律まで変えて、二人は夫婦になりながらも巡察使を続けられるようになる。彼女のシナリオは一番巡察使としての主人公にスポットを当てていたように思う。シナリオの全てを通して主人公が巡察使であることがキーになって動いていたように思うし、最後の最後、結婚して巡察使をやめることを決意した後の陛下とのやり取りも良かった。

ヒロインのマーガレットも良いツンデレでした。まぁルートに入るとツン要素ははっきり言って殆ど無いですが。ルート確定後は逆に自分の気持ちをハッキリといってくれるのでこちらも非常にニヤニヤしながら可愛さをお堪能してました。

■ジャスミン・ヒヤシンス(2h)
トリロバ卿ってこんなにいいキャラしていたのか。
もうこれだけでいい気がします。他のルートでは出てこないトリロバ卿がこのシナリオでは出てきますが、不正を働いたにしてもいいキャラしてるよなーと思いました。というか、もうちょっと主人公と卿の絡みを入れても良かったんじゃないかと思いました。主人公は卿の不正を暴いたくらいですし、二人だけで絡ませても面白かったんじゃないかなぁと思います。会うときはいつもジャスミンと一緒でしたからね。

で、シナリオですが、ちょっと自分の好みからは外れたかなと。ジャスミンが帝都で歌姫になることが核となっているのですが、このシナリオについては主人公がヒロインに引っ張られてしまったと感じます。終盤まではホントに金魚の糞かよと思うほどジャスミンが~だからという理由で付き添っていたので、はっきり言ってしまうとつまらなかったです。

個人的にですが、ぽわぽわした元気系のキャラクターは共通や他ヒロインのルートではサブとしてあまり出しゃばらない程度に動いてくれるのに、メインになると途端に一人で突っ走りはじめて主人公を置いてけぼりにするようなパターンが多いように思うんですよね。


■バジル・マリーゴールド(2.5h)
強欲シスターが己の利益のために主人公を色仕掛けで籠絡しようと思ったら、逆に籠絡されちゃいました。まぁよくあり得る展開ですがバジルのキャラと合わせて面白かったです。ちょっとシスターアベリアの下りは中だるみした感じでしたが、実はシスターアベリアがあんなに愉快なキャラだったなんて。彼女ももっと形を変えて関わってたら面白かったと思うんだけどなぁ。

■カトレア・ムーンフラワー(3h)
共通とか他シナリオで既に予測はついてましたが、やっぱり遺跡、魔法帝国の関係者でした。一応それ関係がシナリオのメインにはなってきます。

ただそんなことよりもカトレア可愛い。期待はしてましたが恋人になった後は想像以上の壊れっぷり(良い意味で)で普段とのギャップにかなり萌えさせていただきました。正体が主人公にバレたときは普段は隠していた弱さを見せてくれたり、恋人になった後では周囲を全く気にしない惚気っぷりを見せたりと、共通や他ルートでは御茶目な年齢不詳お姉さんキャラで通ってたので個別のギャップは計り知れないものがありました。

■アンドロメダ・ヘリオトロープ(2.5h)
マーガレットのシナリオが、ヒロインと巡察使としての立場をメインに据えたものだとしたら、アンドロメダのシナリオは巡察使としての主人公をメインに据えたシナリオでした。彼女が護衛使なので結婚に悩む描写も無かったですし。長年主人公を思い続けてきたアンと主人公がやっと結ばれ、霊薬の売り込みとして帝都のギルドを訪れた所を他の霊薬工房の罠に嵌められて命の危機に晒されますが、そこはカトレアの救助により間一髪で助かり不正を働いた工房を摘発して霊薬の売り込みも上手くいって万歳終了。彼女のシナリオにおいてのみ主人公の育った孤児院も出てきて、ミルトスの霊薬で助かった子供たちが出てきたときは暖かくなりましたね。というかCGすらでてきたラーレとサニーはもうちょっと出番あってもと思わずには・・・。

やっぱり彼女のシナリオは最後に残して良かったですね。唯一ゲーム開始前から主人公が好きだった彼女と主人公が結ばれるのを見た後では他のルートをやるのは忍びなくて。


■ノーマルエンド
ノーマルとして、誰ともくっつかずに英雄祭後に次の領地に向かうエンドもありました。とはいうものの全員の好感度はかなり高いようで、マーガレットに至ってはキスもしてましたので短いですがちょっとニヤッとできるシナリオです。主にマーガレットの可愛さに。

■結論
シナリオはあまり気にしないから萌えが欲しい、時間が無い、鬱は勘弁といった方に推奨できると思います。
トリロバ卿、ラーレ、サニーに関してはもうちょっと出番があっても。他ハードに移植されるならぜひサニーのルート作ってほしいです。というかサニー含めた孤児院ルートを。まぁこのゲームの設定を考えると非常に難しいとは思いますが。

ちなみに、誰でも気づきますが各ヒロインの名前は全て花の名前になっています。花言葉を調べるとなるほどそのヒロインにぴったしの花となっていますので、調べてみるのも楽しいかも。

キャラクター:マーガレット=カトレア>アンドロメダ>バジル=ジャスミン
シナリオ:マーガレット>アンドロメダ>カトレア>バジル>>ジャスミン