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Niccolumさんのさくらビットマップの長文感想

ユーザー
Niccolum
ゲーム
さくらビットマップ
ブランド
HOOKSOFT(HOOK)
得点
75
参照数
555

一言コメント

一言で言えば普通。だがそこが悪いのではなく、普通であることが良いことのように感じる。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■緒言
妹である璃子、幼馴染である小春、ゆのかに好意を寄せられている主人公が新たに神社の娘である鼎、先輩の大和撫子お嬢様千鳥と知り合いになり、それぞれのヒロイン達との日々を過ごし、仲を深めていくお話。

町で長い間生まれなかった男子という設定はたまーに使われるくらいでそれほど重要視されていません。

最初から主人公と知り合いなヒロインは初期高感度MAXです。ただそれの理由が過去話として出てくるくらいなので、好きな理由としては若干弱いというかプレイヤー側には伝わりづらい感じでした。

サブヒロインである奈乃香、みどりにもEXストーリーとしてシナリオが用意されています。しかし畑山いるかにはありません。

周囲の人間が主人公とヒロインを騙して仲を進展させたりするパターンが結構あります。

■主人公 桧山 史隆
割と頻繁にセクハラ発言を行います。むしろ大部分の会話の中でそのような発言がされていました。

千鳥と初めて会ったときもセクハラ発言してましたが、初対面で場を和ませるためとはいえそれはどうなんだろうか。ましてその後に、ああいったこと(セクハラ発言)は嫌いですか?って聞くのも無神経というか。

そんな主人公ですが、大事な場面ではしっかり主人公をやってくれます。まぁでも全ルート終わってみて考えるとセクハラ発言のほうが印象でかいかなぁ。宗次郎はあけっぴろげにセクハラ発言してますが、主人公はヒロイン勢に限っては宗次郎よりもセクハラ発言してたような気もします。主に胸に関して。

恋人ができてからの彼は彼女のことを本当に大事にしている良い主人公でした。

■室戸 鼎(3.5時間、共通含む)
最初は無口ですが、主人公と接するうちにだんだんと明るくなっていきます。彼女が変わっていくのがプレイヤー側にもしっかりと伝わってきて、みるさんの演技もあって可愛らしさがうまく表現されていました。

シナリオは大きな山場は二つで、祖母と恋咲き祭りに対する鼎の想い、そして校庭桜の話です。祖母と恋咲き祭りへの想いは鼎との距離を恋人へと昇華させる上でも非常に良い流れだったかと思います。ただ校庭桜の話は少し展開が急だったかとも思いますね。そこまで暗い話を長くされても困りますから悪くは無いんですが、若干引っかかりを覚えた箇所があります。結局校庭桜は伐採されるんですけど、それを阻止しようと立ち向かっていた学生が、伐採された瞬間に「ちゃんと桜とお別れしないと」な雰囲気になる点です。なんか急に変わりすぎだろうと違和感を感じました。また、学生がいくら邪魔でも重機で学生を散らすとか怪我とかさせたらどう考えても問題な気がするんですけどね。

とまあ言いたいことは少しありましたが、全体で見ればほのぼのとしたストーリーのなかで鼎の変化の過程を見守り、恋人になってますます魅力的になった鼎にニヤニヤし、それほど重くならないくらいに山が用意されていたということで後半は退屈せずかなり楽しめました。



初Hの時の鼎がインナーシャツを脱いだCGは正直言って破壊力抜群、胸のうちから溢れるエロスを感じてしまった。

■南条 千鳥(2.5時間)
いいところのお嬢さんらしく、ズバリ大和撫子なお嬢様って感じの先輩でした。その割には主人公に肌を見せることには最初抵抗がないんですよね。不思議だ。「エッチなのはいけません!」とか言ってるのに、つかどこのメイドさんだあなたは。


このシナリオには山というほどの山はなかったと思う。宗次郎を投げ飛ばした後の噂や、見合いとか剣道とか親父さんが倒れたくらいか?でも山とするにはちょっとモノ足りなかったかな。特に見合い話はなんか唐突で意味不明な展開になってポカーンって感じだったし。終盤の親父さんが倒れたのも結局嘘だったということで、盛り上がるべき場所であるのにも関わらずその点が気になってあまり集中できなかった。


これは中盤であったことなのですが、練習での乱取り中によそ見した千鳥を助けるために乱入して身代わりに投げられてました。何を意図してこんなことさせたのか分からん。ただの練習なのに部外者急に割って入ったら逆に邪魔だし危険だろうと。


また、恋人になった途端いきなり千鳥って呼び捨てにしたり、その後なんの葛藤も無く普通に千鳥千鳥呼び続けていたのはプレイヤー側としては違和感がハンパなかった。呼ぶにしてももう少し順序ってもんがあるだろうと。いくら恋人になったからっていきなり呼び捨ては不自然だった。


千鳥は確かに可愛かったんですが、以上のような嘘を利用した盛り上げ方や、突飛な展開、常識的に考えて不自然な行動が目立ったせい白けてしまった部分は多少ありました。

■坂崎奈乃香(0.5時間)
こういうサブキャラに対しても短いながらEXストーリーとしてシナリオが用意されているのは非常に嬉しいです。合法ロリっ子なので無問題。見た目ロリっ子なのに態度なんかはしっかりしてるのが個人的にツボでした。

シナリオは主人公が黒服になるための試練をクリアしていくもの。すぐ終わりますが、ちゃんとHシーンは一回ありますし、最後に山もあってきれいに纏まっていたので楽しめました。何より奈乃香さん可愛かったんでそれだけでもう万歳です。


しかし千鳥シナリオ同様付き合いだしたら突然呼び捨てし始めるのはどうにかならんのか。

■泉道 ゆのか(2時間)
ツンデレ・・・といっても理不尽に殴る蹴るするほうではなくて、割と自分の気持ちを言葉にしますし、からかうと子供みたいに拗ねるところが可愛らしいキャラでした。

シナリオはゆのかの不幸ノート紛失、泉道館の買収騒動と二本立てで、ノートの件で恋人になり、恋人になってから買収騒動がある感じです。前者では主人公から貰った言葉や笑顔の数などを不幸ノートに書いているというゆのかの想いの強さが知れてよかったと思います。

ただ恋人になってからの買収騒動は正直このゲームの空気には合っていなかったかなと感じます。泉道館を舞台にするとしても、もう少し楽しいというかゆのかの魅力を更に引き出すような展開が欲しかったです。このゲームはシナリオではなくキャラ萌えで勝負しているのですから、重みがあり緊張感のあるシナリオよりも軽い感じで楽しい前向きなストーリーであるほうがキャラの魅力を出しやすいはずですから。

また、畑山いるかという魅力的な姐さんキャラが出てきたのに登場が買収騒動のみだけってのも勿体無い感じでした。一応その前にも一度だけですが画面には出てましたけどね。もっと主人公達に関わらせても良かったんじゃないかなぁと少し思いました。

このシナリオにも周囲が主人公とヒロインを騙すような場面がありましたが、こちらは千鳥ルートほど悪質ではなく、笑って済ませられるレベルだったのでよかった。やっぱ人の生死に関することで嘘をつくのはいかんよね。


■桧山 璃子(2時間)
しっかり者で兄である主人公に対しても色々苦言や少々キツイことを言ってくるんですが、本当はもっと主人公に頼りたいと思っています。ああ、いい妹だなぁと思いますね。

射会と、璃子とゆのかの約束の場面辺りが大きな山でしたかね。ちなみに義理とはいえ妹と付き合うなんて云々なんてのはありません。みなさん祝福です。でも最後に先生だけはちゃんと主人公に世間の目について言ってくれました。

射会についてはちょっとアレですね。弓道って二人でやるもんじゃねぇよと。いや昔知り合いが弓道やっているのをたまに見てたんですが、二人でやって中るとかありえんだろ。

璃子とゆのかの約束では皆主人公が好きだったって暴露大会が始まるんですが、


「ふみちゃんと家族になりたかったんだ」 璃子と付き合っていることを報告した際の小春


これには小春の想いが伝わってきて胸が締め付けられましたね。最後まで小春をとっておきましたが、これまでもこんなさびしい想いをさせていたなんて!小春シナリオを早急にやらなくては。

■水原 小春(2時間)
ポンコツ幼馴染。ポヤっとした雰囲気がこのゲームに非常にマッチしていたかと思います。松田理沙さんの声に癒されました。

シナリオはまさにメインラストを飾るのに相応しい暖かいストーリーでした。小春のおじさんの引越しから始まり、同棲、農業を目指す主人公の編入学、結婚式、そしてエピローグでの子供を抱いた二人。友人や町の皆にも支えられ、また祝福されて、「家族」をテーマとした素晴らしいシナリオだったと思います。重い展開などはありません。あるのは二人の甘々な生活と家族となる未来へと向かって努力する姿でした。ゆのかシナリオでも言及しましたが、やはり後ろ向きな重いシナリオよりも、目指す先が未来へと向かう前向きなシナリオがこのゲームには合っていると思います。その点で小春シナリオは変に重くならずに小春の魅力が十分に感じられる話でした。


小春というキャラを素晴らしい声で演じて頂いた松田理沙さん、そしてこのゲームを出して頂いたHOOKSOFTさんに感謝を。

■幸村みどり(0.3時間)
さばさばした友人キャラ。嫌いではないが特別好きというキャラでもなかったんですが、クリアしてもそれは変わらず。というか菜乃香さんのシナリオより大分短かったのでキャラに対する印象が変わる以前の問題だったかも。

メインヒロインと誰とも付き合わなかったという設定らしい。開始直後に告白、デートで主人公の部屋に行きHして終了。うん、中身ねぇな。キャラが悪いわけじゃなかったのでシナリオもっとあれば印象は変わったはず。残念。


■結論
一部ルートで若干の例外はありましたが、全体的に明るい雰囲気の話で、重くなるような場面はほとんど見られませんでした。キャラ萌えに特化したゲームではありますが、小春シナリオのように感動するシナリオも用意されています。エロゲ初心者、又は重いシナリオに疲れた方、時間的な余裕がない方などに特にお勧めできるかと思います。




最後に、旅行者AB立ち絵ないのに登場頻度が凄いな。全ルートで出てくるし。