崩落 ――――― 人を一瞬にして下界へと落とす災害。例え死ぬべきではない人でさえ一瞬にして命を刈り取る。人だけでなく家や、勿論遺品さえも消えてしまう。作中の人物たちはこの理不尽な災害(人災)に怯え、また憤りを感じていたが、画面の前のプレイヤーもまた感じていたと思う。何故彼女が死ななければならなかったのか。シナリオの中で彼女が死んだことについて語られることはわずかばかりしかない。ならばこそ思ってしまう、彼女が死んだ意味とはなんだったのか、と。
■緒言
空中都市ノーヴァスアイテルに住む主人公のカイムが、ユースティアを保護したことを始めとして様々な事件に巻き込まれていき、ヒロインとの出会いを通して成長し、大崩落を含む都市の謎に迫っていく話。
主人公は声ありです。
シナリオは、ユースティアルートを一本のシナリオとして、途中からの分岐により各ヒロインのルートへと派生します。
主人公は基本かっこいいですが、ユースティアルートのかっこ悪さは異常。
全員ではないですが、サブヒロインにもHがおまけとして用意されています。
今までのオーガストではあまり見られなかったと思いますが、結構暴力シーンが多かったり人が死んだりします。特にサブのメルトさんが死ぬのは涙です。
■主人公 カイム=アストレア
リシアルートまでは牢獄で生活してきただけあってシビアな性格をしており、戦闘はかなり強いほう、ヒロインに対しても自分から切り込んでいくところが多いので気持ちよく見ていられるのですが、まぁユースティアルートの彼については後ほど語ります。
特に親しくない人間に対しては興味を持たなかったり殴ったり平気でしますが、知り合いにはツンデレというかツンデレデレくらいです。
なお、敬虔な牢獄信者の模様。
■フィオナ
皆さん言われているように確かに個別が短い。いや短すぎる。Hシーン抜いたら30分もないだろ。ただフィオナは可愛かった!微妙に某英霊のセイバーっぽいなぁと感じたけれど、同じように堅物でも自分の任務と兄を天秤にかけて主人公を取引を持ちかけたところは個人的によかった。例え任務であっても自分の兄を何としてでも助けたい、普通の人間らしさがでていてますますフィオナが好きになった。個別に入ってからの彼女は背負うものが無くなり自由になったのか、真面目というよりは可愛らしさが前面に出てきてこんな彼女との生活をもっと見ていたいなぁ・・・とか思ってたらなんか半年後とかもう終わる雰囲気が出てきたぞ、結婚!FIN!!終わりかよ!!?
おまけでHシーンはありますが、こう・・・フィオナとのいちゃいちゃが見たかった自分としては残念です。
ちなみに物語は黒羽が全て。それも個別に入る前に解決しますがね。治癒院とかに関しては語られなかったなぁ。以降のシナリオで語られるんでしょうね。
なんかキャラがツボに入ったんですよね~。今までにもいたようなキャラだとは思うんですが、短すぎる個別のフィオナが可愛くて可愛くて死にそうです。
■エリス
やっぱり個別が(以下略)。物語の流れは、不蝕金鎖と風錆の決着までが語られる。しかしなんといっても肝心のエリスが自分的には合わなかった。弱ヤンデレのような感じでしたが、ちょっと自分にはそっち方面の耐性は強くないもので。終盤にかけて終始エリスはそんな感じでしたので楽しめず。かといって個別に入ればHシーンとわずかに日常が挟まれて終わりなので。その前に自分はエリスの問題がアレでかたがついたなんてどうしても思えないのでエンドにしてもなんだかなぁという気分でした。というかエリスエンドも結婚と子供ができるってフィオナと似た終わり方とはね。けよりな、FAではそんなことなかったと思うのだがなにかライターさんの心変わりでもあったのだろうか。まぁ娼婦街の話だし結婚というのは作中で語られているように特別な意味を持つからってことなのかな。
にしてもあの花嫁衣裳でカイムとエリスがHしてるけど、メルトと先代もHしてるのかとか、そしてそれを次の結婚をする女性に渡していくのかとか、なんか考えたくも無いこと思ってしまった。
■コレット(聖女イレーヌ)&ラヴィリア
舞台は牢獄から下層へと移っていきます。なので、必然的にこれまでの牢獄メンバーとの絡みは無くなっていきます。暗い牢獄の中でメルトやジーク、娼婦三人娘との会話は軽い感じで好きだったのですが。
話は天使の御子についてと都市が浮遊に関する聖女の真実、二度目の崩落から聖女の処刑まで。相変わらずの個別に加えて、共通ではイレーヌ、ラヴィリア共に聖女とそのお付であることから読んでて特別面白いと感じることは稀でしたが、たまに恋愛方面でむきになったり、慌てたりするのは可愛いと思いました。惜しむらくは聖女、そのお付という役目から開放された二人とのこれからをもう少し見てみたかった、ってさっきからなんかそんなことばっかり言ってますね。
また、このシナリオではシスティナさんが割りと主人公に絡んでくるんですが、雨の日の友で照れて赤くなるシスティナさんは良かった!
そしてメルトさんのあまりにも早すぎる退場。主人公の初恋相手だったのに・・・。自分も恥ずかしながら画面の前で涙流しました。あの牢獄でメルトさんはまさに太陽のような明るさを持っていたのに、もう彼女との会話を楽しむことができないなんて。
蛇足
コレットがナダル神官長に見せたあの人を蔑むような冷たい目線が好きな俺はMなのだろうか。
■リシア
リシアルートは上層での話になります。このルートでは、最終的にリシアが国王となり初めて都市に巣食う問題にメスが入った話でした。
リシアは子供っぽくもあり、父のような立派な国王になろうともする強い意志を持った少女で、カイムに牢獄の現状を見せられながら徐々に前へと進もうとしていくのが見ていて気持ちよかったです。
政治を牛耳り意のままに都市を操る執政公に対して武力蜂起を起こし、ついにはリシアが国王となって国を導いていくとかもう胸が熱くなる展開でした。特にリシアがヴァリウスを説得し、ヴァリウスがそれを受けるシーンは心に残っています。結局都市が浮いている原因やユースティアの力の謎については分かりませんでしたが、エンドとしてはこれからに希望の持てる終わり方でした。まぁメルトさんがいないんですけどね。
■ユースティア
今まで不明だった謎が色々明らかになるルート。ではあるのですが、正直序盤からスキップ多用をしていたので飛ばし飛ばしでしかストーリー分かりません。まぁ最後どうなったのか以外別に見なくてもいいかって思いました。というのも主人公のカイムが酷い。これまでのルートとは別人がシナリオ書いているとしか思えないほどの豹変振りです。
まず自分が牢獄の人間であることをすっかり忘れて上層の民から目線になりました。
牢獄に人を殺してしまう黒い粘液が現れたときの発言
「なんとかしてやりたいが、頼みの綱のティアはあの調子だ。」
もうなんか俺は上層にいるから実害ないけどなんとかしてやりたいって感じが伝わってくるのですが、これは俺が穿ちすぎなんですかね。
ティアを研究にやらせるのを止めなかったり、牢獄の住民を説得、鎮圧したことについて、
「俺は、やるべきことをしているんだ」
やるべきことって・・・なんかこういう発言するなら筋が一本通っていればいいのに、このカイムは自分の意思がフラフラで、ティアについて研究の過酷さに憤慨したと思ったらルキウスに説き伏せられて仕方が無いんだとかぬかす始末だし、その場限りの言い訳を毎回言っているに過ぎないと思ってしまいました。
牢獄の問題では研究を進めなければ都市が落ちるのにとか語っているくせに牢獄のトップであるジークにすらまともに説明してないし、結局牢獄が武力蜂起した原因はギルバルトが武力蜂起された原因となんら変わらないように思った。結局ジークたちからしてみたらカイム達が自分らに重大なことを隠して何かしでかそうとしていると思われたところもあるだろうし。
今更ですがティアもあまりヒロインとしては好きじゃありませんでした。サブなら別にいいのですがちょっとこういうポヤポヤ、何らかの強い意志を持っている(ティアなら生まれてきた意味を探すことについて)、人としてありえない力を持つ、というのはヒロインに対して主人公が置いていかれるパターンが多いと思います。ましてこのカイムはナイフの腕がたつただの人間ですからなおさらです。結果としてカイムがヘタレというか酷く映ってしまったのかもしれません。
ルキウス、システィナもこのルートではあまり好きじゃなかったな。これはごく個人的な話ですが、なんかルキウスもやるならやるでカイムへの対応もハッキリさせて欲しかった。コソコソやる必要があるからだろって言われればそれまでなんですが、なんか騙して隠れて裏でコソコソしてるってのは見ていると不愉快だなぁと。まったく必要の無いAnother viewがあるせいで特に。まぁこう思うのは自分だけだと思いますが。カイムの態度と相俟ってイライラが溜まった。
この物語に出てくるキャラは何かしら自分が生きている意味というものに執着していましたね。この作品のテーマでもあること思います。フィオナは羽狩りであること、エリスは人は必ず生きている意味があるならば、それが無い自分はただの人形であると思っていること、コレットは天使への信仰らへんかな、リシアは特に生きる意味についてはなかったかな。強いて言えば国王として父のように民を導くことって感じだと思います。ユースティアは最終的に都市を守ること、カイムは立派な人間になることっぽいですが、それも兄貴からの受け売りだしちょっと分からなかったです。この生きる意味が結果としてその人の強い意思となることもあれば、逆に固執しすぎて自分を見失ってしまったり。そのような意味で、作中でも述べられたようにもはや呪いといっても過言じゃないなぁと思いました。
■結論
ヒロインは魅力的だし、サブも可愛いキャラ、カッコいい男が多い。シナリオもリシアルートまでは次が気になってどんどん読み進められる。特にリシアルートは手に汗にぎる熱い展開で面白かった。牢獄という暗い雰囲気ではあるけれど、2章くらいまではキャラとの会話が軽快で楽しい。メルトが死ぬのは結構きついけれど、主人公に近い人が死んでも許容できるならいいかも。リシアルートまでなら確実にお勧めできます。