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Niccolumさんのさらさらささらの長文感想

ユーザー
Niccolum
ゲーム
さらさらささら
ブランド
アトリエかぐや
得点
75
参照数
1442

一言コメント

藤沢プランニングの本気(笑)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

■緒言
巳各務村再開発計画を巡って大企業藤沢プランニングと争うことになった若手ベンチャー企業社長の主人公が、フィールドワークとして身分を学生と偽り村で生活をし、田舎の自然を体感したり村の人間やヒロインと交流する様を描くストーリー。ヒロインの一人が神であることから若干ファンタジーが入っているが、おそらくこれは前回のプリマステラで主人公が共通ルートでヒロイン全員の処女を頂くということが一部ユーザーに不評だったことに配慮し、夢想という空間を用意することでHはするが現実に酷似した夢という形にしたのだと思う。私自身はプリマステラでのことに際し特に思うところはなかったのだが、こういったブランドのユーザーに対する配慮はより素晴らしいものを作ろうという気が伝わってきて良いと思う。


■主人公 吾妻 裕殻
ベンチャー企業『吾妻不動産』社長。相手を大切に思うからこそ本気で怒る事の出来る人。これができない主人公の多いこと多いこと。懐の広さも感じ、社長として振舞うときは普段のナリを潜めて大人なカッコよさを感じる。良い主人公だと思います。


■天戸沙織
神社の元気系巫女さん。他は特に無し。

個別シナリオについて、問題という問題は主人公の正体が判明した時に沙織との間でひと悶着あったくらい、あっという間に解決だけど。再開発計画に関して、村の住民の投票で再開発業者が吾妻不動産に決まるなんてのは出来レースでしかなく、あとは沙織とのイチャラブ。かといってそれが良かったかといえば別にそうでもなく。平坦なシナリオと全ヒロイン最初から好感度が高いことから何の変化もないグダグダした日常を見せられてもなぁと感じた。

皆に正体がバレて沙織が逃走するんですが、見つけられなかった主人公を心配して亜弥とまひるが見に来ます。まひるは主人公が社長と聞かされていまいち距離感が掴めていませんでした。嫌いになってなかったらこれまで通り接してほしいと言われ、咄嗟に嫌いになんてなってない!と怒ってから本当だよ?というように主人公の手をそっと握るときのまひるはこのゲームで一番可愛かった。これは誰にも譲れない。


■白妙亜弥
病弱系巫女さん。後は・・・やっぱり特になし。

このシナリオは村の再開発計画よりも亜弥の病気が主題になっています。再開発計画は中盤までで、それ以降は亜弥の病気の話のみです。適度にイチャイチャするんですけど、ちらちら病気の話題出されてそれどころじゃねーよみたいな。終盤で亜弥は一度死にます。まぁ魂は死んでないって月巳は言ってましたがあれは死んだとしていいと思います。んでそれを月巳が自分を犠牲にして助けるんですが・・・

正直私は亜弥が死んで泣きました。ヒロインとして見てきたのでそりゃ当然のことではあるんですが、人を殺して泣かせるこの手法には疑問を感じざるを得ません。果たしてこの物語で人を殺す必要があったのか。私はこのゲームは萌えゲーでありこの手のシナリオはキャラを引き立たせるためのモノという考えです。だから主人公とのイチャラブを見せたり、何かしら問題を起こしてそれに立ち向かうなど、キャラとしての魅力を上げることが前提にあると思っているのですが、このシナリオは何をしたかったんでしょうか?病弱な彼女が必死に病と立ち向かう姿でも見せたかったんでしょうか?残念ながら私は読んでてそんな気分にはなりませんでした。むしろ原因不明の病気を使うことでラストでの「死」による安易な感動を誘っているようにしか感じられませんでした。そしてその後反魂の法による神様を犠牲とした復活。なぜこんなご都合主義な手法があるのにそれをもっと早く出せなかったのか。神様なんて御都合の塊なんだから亜弥を殺さなくてもいい方法は幾らでもあったはずです。これは、病弱なヒロインを出し最後に死なせて感動させるという確定事項のもとにそこまでのシナリオが描かれ、そのままだと萌えゲーとして後味が悪いので、神様という設定を使いその神様を犠牲にして生き返らせる、そこでまた感動させるというような思考が透けて見えるような気がします。もちろんこれは私の勝手な考えでライターさんがそう思って書いたかどうかは定かではありません。ですので今の文章で不快になった方がおりましたら本当に申し訳ありません。


■各務月巳
巳各務村の神様。大人状態と子供状態があるので一粒で二度おいしい的な。普段は大人な言動ですが、個別に入ると完全に主人公に惚れますので普段とのギャップが可愛いです。ヒロインで一番魅力的だった。


地脈だまりを開放して月巳に代わる依り代を置くという儀式を行ったのですが、


再開発計画に敗れた紫帆が上司から降格の話をされ、イラついて投げ捨てた携帯電話が祠を破損させて儀式が失敗します。

やべぇ、こ、これが藤沢プランニングの本気(笑)か!やってくれるぜ。


ちなみにお魂が消えます。
最後は魂の共鳴と融合によって二人は同位体、まぁ月巳が人間になって終わります。お魂は最後に生き返ったりしません。



■結論
前作プリマステラで不評だった共通で全ヒロインの処女を奪う点を改善してきた、のは良いのですが、夢想でHをして現実でやっと本番だね!って言われてもプレイヤーは夢想でのHを何度か見てるので現実で初めての・・・とか言われてもねぇ。個人的にはそこがちょっと気分が乗らなかったかな。だって夢とはいえもうヤッてるし。あとはプリマステラでは立ち絵キャラ全てHシーンが用意されていましたが、いましたが!今回何とまひるは攻略不可です。でもFDで攻略できるので気になる方はそちらへ。話としては月巳が一番良かったかな。ヒロインも魅力的でしたし、お魂が消えたことはショック(でもFDでヒロイン昇格)でしたがストーリーも一番面白かったと思います。



藤沢プランニングがこの再開発計画に力を入れているというのは紫帆の電話からも窺えるのですが、村の住民投票で決まるのが分かっているのに、その村人に向かって「こんな村」とかよく言えますよね。心証って大事じゃないでしょうか。


タイトルのさらさらささら、軽い感じですが実際中身も軽いというか薄かったですね。
アトリエかぐやBerkshireYorkshireさんにはプリマステラほどのモノを今後に期待したいです。