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Nakasanさんのeuphoriaの長文感想

ユーザー
Nakasan
ゲーム
euphoria
ブランド
CLOCKUP
得点
84
参照数
1755

一言コメント

ただのエログロ系ゲームだと思ってるといつの間にかシリアスなストーリー展開へ引き込まれます。グロやスカが苦手でなければ是非。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


クリア状況:全シナリオクリア (合歓→凛音→菜月→梨香→(合歓再回収)→叶)
パッチ状況:1.02


以下採点<採点基準:ADV>

▼ED/OP(10点満点):9
OP/EDムービー有り。特にOPムービーの雰囲気は非常によい。エグいけど。
トゥルーエンドのムービーも非常によし。
エンドの種類は各キャラ1の他に多数のBADも用意されており
多岐にわたる結末を見ることが可能。ただトゥルー以外は薄目のエンドが多いと思う。


▼System(抜きゲ:15点・ADV:15点・SLG/ACT:30点満点):14
システム周りは非常に良く、使いやすいインターフェイスと好感が持てました。
細かい設定が非常に多くかゆいところまで手が届き
設定に関してはあまり他のゲームでは見ないような気配りが感じられました。
ウインドウが可変であるというのが特に素晴らしい。(若干荒くなるが)

しかし、唯一にして最大の難点はスキップにあると思います。
ストーリーが結構長いため、通常スキップでは時間がかかるのに加え
他のキャラのルートに入ったときに中途半端に未読部分が細かく入ってきて
いちいちスキップを押すのが手間に感じられました。(※ショートカットキーはあります。)
出来たらここは「次の選択肢まで一瞬でスキップ」機能ないし、
回収時にスムーズに次の選択肢まで飛べる工夫が欲しいところでした・・。


▼Story(抜きゲ:15点・ADV:30点 SLG・ACT:15点満点):24
読者が考えれば考えるほど泥沼に嵌っていくストーリーが素晴らしい。
構成は2部構成みたいな感じになっており施設を脱出するまでとその後で話がぐっと変わってきます。
(もちろん施設内での行動は後の伏線になってる箇所が多々ありますが。)

※以下ネタバレを多く含みます。
話を進めていくと多くのルートで「?」が頭の中に残る。
書いていけばきりがないのだが
たとえば凛音√でなぜ「お父様」なのか、このルート一つだけだとしっくり来る説明が出来ない。
そもそもなぜ教祖なのか、あの台詞はどこから来ているのか、
そして正式なルートでなぜ夢落ちなのか。あれだけ引っ張っておいて夢落ちという結果に疑問が湧いてくる
そういうところの伏線をトゥルーできちんと拾っているのが好感もてたが、さらにここで「?」が浮かぶ。
じゃぁ、これまで繰り返してきたことは果たしてどこから何処までが現実でどこから何処までが楽園なのか。
それを一つ一つ考察していくことでもまた楽しめるようになっている。
上手くちゃぶ台を何回かひっくりがえしているのがまた楽しい。
ただ、これらの感情がわいてくるのはトゥルーありきの結末で、
個人的にはそれぞれ単体のルートの〆はちょっといまいち無理がありすぎる箇所が多すぎるのでは、という感じだった。
前半の陵辱パートも動機付けがちょっと無理がある箇所があるのも難。


▼Music(10点満点):9
全曲数20曲。うちヴォーカル曲1曲、ヴォーカルアレンジ5曲。
曲数はやや満足できる曲数ではあるがアレンジが多めな印象を受ける。
曲は全体を通して統一感があり雰囲気を十分に盛り上げている。
柔らかめな曲調が多い一方雰囲気は全体に暗く
それがシーンにマッチしている箇所が多く見られ非常に良かった。
ヴォーカル曲も非常に良く特にOPに使われている「楽園の扉」のインストバージョンは秀逸。

シーン的に印象深いところで使われてる事が多いせいか「悲壮」や「狂気」などの
一般シーンで使われている曲がとてもよく感じられた。


▼Graphic(10点満点):8
モブの顔がアレなのはちょっといただけないな、というのが一番の印象。
後一部で縮尺がおかしい箇所があったのがちょっと。
それ以外に関しては非常に丁寧に書かれてる印象を受けました。
絵そのものは好みの問題もありますが鼻フックさん以外は割と好みかな。

この作品はグロテスクな表現が多く、それに耐性がないと厳しいと感じた。
具体的にはゲロやスカ。しかし、このグロ表現がより作品を際だたせているため
表現を含め非常に良しと感じました。


▼Chracter(抜きゲ:25点・他10点満点):8
個性的なキャラが多めですけどいまいちティンと来るキャラがなかったかなぁ。
合歓と叶は結構好きだったんですが。
登場人物もほぼこの主人公+ヒロインで構成されています。

エロシーンは非常に多い。しかし一番印象残ったのは声。
本当に声優さんの演技にはほんと職人魂を感じました・・。
いや、マジで。ガチすぎる。
それゆえ気になったのはエロシーンにおいての台詞のくどさ。
ちょっと卑語?の繰り返しが多すぎ。
エロシーンが多いからさらにそれが気になる悪循環。
いや、まぁ、絶叫シーンみたいなのは嫌いじゃないですけど
やはり限度という物があるかもしれない。


▼other(15点満点※減点方式):12
個人的な採点として12としました。



■総評:84
良作。スカやSM耐性があるのであれば是非プレイして欲しい。
グロ差分をカットするオプションはありますが、個人的には全く駄目という人以外なら
ちょっとだけ無理して有りでプレイするとより狂気が増して良い気がする。
全体を通してもシステムが丁寧で比較的軽いのも好印象。

最終的にこのゲームの題名「ユーフォリア」、つまり多幸感について考えることになった。
きっかけは変わり果てた凛音が主人公に対して最後去り際に言う一言。
彼女にとっての幸せとは何なのだったのだろう。やはり個別ルートのBADエンドなのか。
他のルートにおける幸せの結末が楽園の結末だとしたら、それは夢幻だったのだろうか。

考えたのは「知らないことこそが幸福」なのだろう、ということ。
合歓のトゥルーの結末で記憶がないこと、楽園の中の個別ルートの結末、本当のお父様、
一部のBAD何かも含めて、真実を知らないで居ることが幸せであるような印象を受けるシーンが
多いのがとても印象深かった。

噛めば噛むほど謎が出てきて非常に面白い作品だと思います。