「グリザイアの果実」とは何を表していたのか。
クリア状況:全ルートBAD/TRUEクリア。(天音→蒔菜→幸→みちる→由美子)
久々に全話読むのに骨が折れるくらいの大作をプレイ致しました。
このゲームは人としてあるべき価値観という物を考えさせられます。
▼あらすじ
主人公(風見雄二)がやってきたこの学園は生徒が5人しかいない特別な学校。
そしてそこに通う者は特別な事情があり心に傷を負った物達だけであった。
無論そこに入校した主人公にも特別な事情がある。
彼の何もない従うだけの生き方が彼女たちは何を与えることが出来、何を与えられるのか。
以下採点
▼ED/OP(10点満点):9
エンディングは合計10種(BAD含む)
OPムービーは本編に出ていないシーンが多用されています。
エンディングはそれぞれ雰囲気に合わせたイメージでそれぞれに丁寧な作風になっています。
どちらも高水準で編成されており非常に好感が持てます。
▼System(ADV:15点・SLG/ACT:30点満点):14
ゲーム画面は基本的なADVのシステムとして不満がないレベルに出来ております。
また、おまけの充実ぶりが非常に素晴らしくHシーンのみに限らず
様々なシーン回想出来る配慮、アイコンファイルや壁紙の抽出が可能なシステム等々
「+α」がしっかり充実された非常に満足で来るボリュームを兼ね備えています。
ただ、ADVパートにおける演出のくどさだけは最後まで受け付けませんでした。
それ以外に関しては非常に高水準なシステムで文句の付け所がありませんでした。
▼Story(ADV:30点 SLG・ACT:15点満点):25
この作品をプレイしてまず感じるのはそのボリューム。
最近の作品ではあまりお目にかかれないほどのボリュームがあります。
基本的に共通ルート→それぞれの個別ルートの構成になっておりますが、
全体のボリュームを10としたら6.5:3.5位のボリューム比になっており、その「10」というボリュームも相当多い量です。
個別ルートにはいると今までの共通ルートの緩さから一気に緩急を付けたシリアス展開に。
どのルートでも基本的に「山」が2つ有り上手く話の上下を演出しています。
他のレビュワーの方々が各個別に関して考察なされてますし、書き出すと長くなるのでそれぞれの√に関する考察は省きますが
「空っぽの主人公」がヒロインにお互いに影響されながら歩む話が主題になっています。
また、それぞれのヒロイン達は何か欠けており、それを何とかしていく事で話が進みます。
そのために主人公は様々な手を尽くしていきますが、流石に超人過ぎるっていう印象は感じました。
(そもそも主人公は超人設定です。この表現は作中でも何度も出てきます。)
非常に長い作品の割にライターそれぞれの癖がバラバラにならずよくまとまっていますが
やはり前半部分の悠長な共通部分は流し読み多用した感じが強かったです。
それ故みちるやマキナが上手い具合にボケとツッコミで読ませるようにし向けては居ますけど
後半の盛り上がり方がどのルートでも良かった分、やっぱりもうちょっとさっぱり目の方がよかった気がします。
伏線になりそうな箇所は非常に多く、特に主人公の過去に関する伏線が多いのですが
それらに関してはあまり丁寧に拾ってる印象はありません。FDで回収するかどうかはわかりませんが
いろいろな箇所にぼんやりとした「謎」を残しています。
人の価値観やタブーに関するストーリーが多く、ユーザーを考えさせながら上手く誘導しており
多少の無茶振りはありますが後半の個別ルートに入ってはどれも大変面白く読ませていただきました。
気になったのは(特にBAD√でですが)何の理由もなく突拍子のない展開に入る箇所がいくつかあること。
後普通はそういう行動をすると思うがしてない、箇所があったりとかつっこみどころがいくつかありました。
▼Music(10点満点):9
曲数39(差分を含む)と量は十分満たしている上
全体的にメリハリのある高品質なサウンドが多いです。
ヴォーカル曲も多くそのすべてがゲームディスクで聞くことが出来ます。
作中で使われている曲としては天音√での「カサブタ」をはじめとして、
ゲーム内容をさらに引き立てる曲が数多くあり好感が持てます。
しかし、たとえば天音√での「カサブタ」の曲の印象はぴったりしましたが
他のルートでこの曲が流れても「?」と感じるくらい印象が薄かったりと
あるルートでははしっくり来るんだけど、他のルートではミスマッチ
という感じのパターンが多く見られやや微妙な印象を受けました。
「ホログラフ」「瓶詰めの空」「カサブタ」の3曲は何度も聞きたくなるほど気に入っています。
▼Graphic(10点満点):8
デザインに関して文句は付け所はなく柔らかいトーンで塗られており綺麗な出来で出来ています
また、ポンチ絵での演出含め物語を引き立てる役割を果たしています。
が、あらゆる所に作画(特に背景)がおかしい箇所が見られました。
例のジョジョ立ち以外にもたとえば本棚や家や商店街入り口のゲートのの縮尺、
床が全体的に右に傾いてる、あまりにも狭い靴箱等々・・・構図そのものがやや斜め気味になってるせいもありますが
塗りなんかは相当丁寧な分勿体ない気がします。
▼Chracter(10点満点):8
ヒロインは5名おりその一人一人が「極端」過ぎる印象を受けました。
もちろんシナリオ中で「極端」になった理由付けは済まされていますので
やっていくうちに違和感は薄れていったのですが、
今度はこの学園にマキナ・榊・天音の3人が居るとしたら
幸・みちるの2人が一緒に入学していると言うことに違和感を感じました。
こちらも作中では、みちるがとある手術を行うだけの資金力がある、
また幸も両親の経歴を見るとそれなりに、と言うのが分かるが
それでも榊の学校に入学した理由付けとしては薄い気がしました。
加えてサブキャラがちょっと薄すぎる印象がします。
たとえば天音ルートの最後のあの人とか、会長さんとかもうちょっと栄える展開があっても良かったのでは。
とはいえヒロイン達はどの子も魅力的で(ぶっ飛んでる子多いですけど)
好感もてる子が多いため8といたしました。
▼other(15点満点※減点方式):12
不満に思ったのは公開されてるOPで出てきたスカイツリー破壊とか
109のアレとか全然作中では出てこなかったシーンが多く、
あれ・・あれあれ?このシーン何処で出てくるん・・?と思いながら作品が終わってしまった事。
後さすがにBADのいくつかはちょっと強引だろ・・・という展開が見られたこと。
■総評:85
良作。但し共通パートにおける長い日常パートを苦に思わない方におすすめします。(体験版をプレイしてみると良いでしょう。)
後半個別に入ってからの展開の盛り上がり方に関しては非常に素晴らしい物を感じました。
私がプレイして印象に残ったのは一部ルートでの音楽とのシンクロ率が半端なかったこと。
あの陰鬱な先の見えない毎日を「カサブタ」がよく演出してたり
真相を打ち明けるときの「in the air」等々、気づくとぐいぐい引っ張られる物があります。
かつて過去の名作と呼ばれたソフトの中でも音楽がストーリーを引き立てたケースは多くありましたが
このソフトもそういうレベルまで達していると感じました。
無論、上にも書いてあるとおりすべてがすべて合った、というわけではありませんでしたが。
(ある曲があるストーリーでベストマッチしてるとその印象でがっちり固まってしまうため違和感を感じたのかもしれません)
さて、最初の問いですが
「彼女たちは懺悔の木に実った果実」と公式で書かれております。
懺悔の木に実った果実という表現に私は非常に惹かれました。
主人公はそれらを摘む事で何を得たのか。そしてそれは救いだったのか。
手に取りそれを考えてみるのもまた面白いかもしれません。
■
このゲームが発売されるにあたって、期日までプレイできないよう起動パスワードを設定されていました。
近年はゲームが発売されると様々なルートで期日前にプレイ動画が公開されておりこれも時代の流れかな、とそんな物を感じました。
しかしこのような良作が出てくると自然とこの手のフラゲ対策は受け入れられると思います。
(かくいう私も発売日までプレイさせないようなプロテクト仕組むくらいならば
中身はあまり自信行かないような物でそれをごまかすため何じゃない?と疑心暗鬼でした)
フロントウイングの次回作も期待しております。