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Nakasanさんの失われた未来を求めての長文感想

ユーザー
Nakasan
ゲーム
失われた未来を求めて
ブランド
TRUMPLE
得点
88
参照数
1370

一言コメント

過去を変えること、それはつまりあるべき姿に変えようとする因果との戦いであった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

よく見られるループ物+学園物のADVではあります。
が、全体を通して非常に高水準な出来で満足が出来る出来であることを保証できます。

※プレイ状況:True含め全ルート攻略済み。
初回プレイ時はパッチ無しでプレイしましたが最新パッチがリリースされております。


■あらすじ
舞台はとある学園(内浜学園)の天文学部。
主人公(奏)はその天文学部に所属しているのだがその天文学部は近く行われる学園祭於いて
生徒会よりとある問題を解決してくれるよう依頼を受ける。
「眠り病」「事故多発地区」「幽霊の噂」。
その調査で出会ったのが「古川ゆい」という生徒。
色々謎に包まれたゆいはその3つの謎に何かを知っているらしいが
それがが何か、そしてなぜそこにいたのか。すべてに口を閉ざす。
彼女の知っている事とは何なのか。
すべてはあの日から歯車が動き始める。


▼ED/OP(10点満点):8
エンディングは合計9種。(BAD含む)
ヒロインのうち3名に関してGoodENDはやや尺の短さを感じましたが
全体を通してよくまとまっている構成でエンディングの数的にも十分です。
途中に挿入されてるムービーも非常に良くできあがっています。
しかし個別のルートの終わりで流れるENDテロップにはもうちょっと工夫があっても良かったと思います。


▼System(ADV:15点・SLG/ACT:30点満点):13
ADVとして十分な機能を備えております。
選択肢までスキップ、既読強制スキップ、ほどよい演出の細かさ(口の動きがあるなど)は十分といえましょう。

気になった点を上げると
・スキップ速度が遅い。
 -採用しているシステムが原因なのかもしれませんが、選択肢までとばす際のスキップの遅さが気になりました。
・もうちょっと細かいレベルでのフローチャート式のプレイ開始位置が欲しかった。
 -上記のスキップの遅さに関連して。

ここからは個人的な勝手な解釈ではありますが、とある箇所でヒロインの一人の記憶を集めていく作業があります。
もちろんすべてまた読み直すわけではないのでスキップなど多用するのですが、ふと何度も繰り返しめんどくさい作業をするのは
そりゃ記憶を集めてる位なんだから、その作業は楽々行く物ではないんだから仕方ないんじゃない?
そういう解釈をしたらその作業は苦痛じゃなくなりそれぞれのシーンを思い出させる、ある意味最後のシーンへの布石だったのかな、と。


▼Story(ADV:30点 SLG・ACT:15点満点):27
このストーリーを評価するにさしあたって、ループ物の世界観をどう持っているかによって
非常に評価が分かれやすいストーリーと感じました。
多くのループ物をプレイしたプレイヤーだと受け入れにくいのかもしれません。
物語の後半にありがちなどんでん返しの存在や、
登場するオブジェクトに対するそれぞれの意味づけが薄い、
など一般的に大作といわれてるSF物との比較をすればちょっと設定に薄さを感じます。

たとえばなぜそこにAIユニットがあったのか。
ループ物の定番であるループの一番最初には何があったのか。
過去への扉とユニットの描写の少なさ
・・・・等々。

つっこみどころと思える箇所は多くありましたが、
私は伏線のわかりやすさと全体を通して(上記に有った物を「そういう物と認識してしまう」)
わかりやすいストーリーである点を評価してこの点数にしました。
伏線の回収は取りこぼしは若干見受けられる物の、割と丁寧に行われており非常に読みやすかったです。
なぜ毎回最初はノーマルルートとしてヒロインが○○に会う結末を歩ませるのか
なぜ似たような文章を読む必要があったのかをY.U.I.Sを読み取るにあたって
復習しながら反芻して楽しみましたので、あまり繰り返しの部分を苦におもわかったのもこの点数に至った結果と思います。
物語そのものの雰囲気も非常によく、あえてBADENDを読ませることで最後のルートへの演出をはかっているのも良いです。
ややありがちなご都合的な箇所も要所に見られたので合計-3と致しました。


▼Music(10点満点):8
全曲数32曲(ショートバージョン差分含む)と曲数は満足が出来る曲数。
全体を通して非常に柔らかな曲が多く、とても心地よい曲が多かった印象です。
それぞれが演出を非常に良く際だてています。
特にゆい√に入ってからの「ひとり、ふわり」の出来が素晴らしい。
OP曲の∞未来の出来もよく、全体にゲームに対しての統一感を感じます。

良曲は多いですがその中でも日常パートなどでよく流れる「緋色の世界」
これが一番の好みで、頻度が高い曲は柔らかい曲である点もポイントが高いです。


▼Graphic(10点満点):10
全体が非常に高い水準で描かれていると思います。
差分なども丁寧に書かれており、一枚一枚がクオリティの高い出来です。
若干柔道部連中や会長の塗りに関して違和感を感じた箇所もありましたが
構図が崩れやすい弁当などの食べ物関係、戸棚の中の食器、教室のいすや机の並びなど
そういう箇所まで違和感を感じることもなく書き込まれており、非常に好感度が高かったです。
また、エロに関しても十分必要量を満たしており、非の打ち所がありません。


▼Chracter(10点満点):8
それそれが引き立ったキャラでヒロイン達はどれも魅力的です。
サブキャラでもケニーもちゃっかり良いところ持って行ったり、
物語に非常によいアクセントを与えています。
逆にサブキャラの弱さがちょっと気になった。特に副会長あたりが。
しかしそれより気になったのはモブキャラの少なさが気になりました。
一応学校・・・なんですよね?もうちょっとモブが居ても良いと思うのに。


▼other(15点満点※減点方式):14
上記に書かれている以外の欠点は見あたりませんので
全体で感じた印象から上記の点数としました。


■総評:88
準傑作。
多くの人に非常におすすめできるゲームです。
何よりも私がこのゲームをやってて思ったのはその「わかりやすさ」
こういう時空をかけたりループするるような話では、演出の一つとして訳のわからない横文字が使用される事が多々あります。
たとえば時を戻る扉などは何か特殊な横文字で表現されがちですが、非常にわかりやすい表現で書かれており、
それはたとえば「ゆい」の秘密を解き明かす際も「~~のような物」とぼかして優しい表現をすることにより
読みやすい構成にしているのが何よりも気に入りました。(無論、全く逆の厨二くさいネーミングセンスがあっても嫌いな訳じゃないですが)
加えて上の方にありましたが、この物語を語る上で「柱」になる表題が前半からしっかりしてること。
これらにより、あまりなれていない人でもすらすら話を読み解きやすいです。

絵や雰囲気も非常に高水準で描かれており満足できる出来を保証できます。