美しい。とにかく美しい作品だ。
美しい。とにかく美しい作品だ。
背景が美しい。
見たこともない景色というのは表現しづらいものだが、ここでは見事に描き出されている。スタッフに卓越した想像力と表現力を持った方がそろっているのであろう。宇宙図書館を見た時私はエンデの小説を思い出してしまった。また、アルカディアの景色も壮大で素晴らしいものだった。
逆に日常的な風景にしても、これはこれで一切の見劣りはなかった。日常であるにもかかわらず、何処か理想的な雰囲気が漂っている。大したものである。
言葉が美しい。
全編を通して各種言葉遊びがふんだんに散りばめられていた。特にキツネが出てくる世界では美しい日本語に出会えた。今や忘れ去られたあれらの技巧を、ライターはどのようにして身に付けたのであろう。知識として持っているだけでは無理なはずだ。なおかつセンスも持ち合わせていなくてはならないだろうに。
背景音が美しい。
BGMが無いといっても、無音であるわけではなかった。ともすれば聞き逃してしまいそうなほどにさりげなく、背景音が織り込まれていた。虫の声、犬の遠吠え、遠くの汽車の音、時計の音、鐘の響き。どれも美しくシーンに溶け込んでいた。これらはBGMがあっては生かされない。ささやかな音で清楚な雰囲気を醸し出す。素晴らしい試みだ。
画面効果が美しい。
場面の移り変わり、クリック対象ボタン等、細かなところにも気を遣っていることが分かる。これら小道具のたぐいは動的に視覚へ訴えるものであり、製作サイドの心意気がダイレクトで現れる。この作品においてはその辺に抜かりはない。
ストーリーが美しい。
オムニバス方式をとり、さらに笑いで煙に巻かれ、この作品を難解に感じる方もいるかもしれない。が、よくよく整理してみると、主題が首尾一貫しているのが分かるだろう。難しい手法による話の組み立てはかなりの技量を要するが、見事にそれを成し遂げている。
また、容易く人気を得られる「お涙頂戴もの」にせず、その逆を選択した勇気も買いたい。
……実際にストーリーがどう美しいかはネタバレ防止のために書かないでおく。
主人公が美しい。
……いや、容姿ではなくて、心が。(何せ主人公、「ぼろぞうきん」ですから。)
へたれな主人公が多このジャンルにおいて、なかなか骨のある奴だった。(布きれなのに。)
人物絵が美しい。
これに関しては何も言うまい。原画はCARNELIAN氏である。
全体を通して。
随分と笑わせていただいた。素直に面白かったと言える作品である。そして何より美しかった。完成度はかなりのハイレベルであるといえよう。丁寧に作り上げたのが、ハッキリと分かる作品でもあった。「顔のない月」と比べられる方もいるが、その事に意味はないであろうと思う。方向性がまるで違うのだから。
そして、特筆すべきはその「仕掛け」の多さだ。まるでCL○MPの漫画のようだ。オービットファンならたまらないであろう。これからの作品が楽しみだ。相も変わらず倉木家は大変そうである。
以上、減点対象は見出せなかった。よって、絶対評価で100点。