ErogameScape -エロゲー批評空間-

Medotsuさんのマレビト ~そして世界は色を失う~の長文感想

ユーザー
Medotsu
ゲーム
マレビト ~そして世界は色を失う~
ブランド
ユノ
得点
70
参照数
19

一言コメント

ルートの整合が取れないことは致命的だけど、全体を通して見ると伝奇物としては悪くない出来。感動するエンディングもあり。惜しむらくはプレミア化により入手困難な点。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

同じ世界観でありながら、選択肢毎にヒロインの設定がまるで異なるというシュレディンガー型。
タイトルのマレビトとは吸血鬼のような物なのだが、ルートによってマレビトになるのが名探偵コナンの歩ちゃんだったり、妹だったり、幼馴染みだったりする。
選択肢1つで元の設定と先の展開が変わるという矛盾が生じるため、好みは分かれると思う。
ルートによってはマレビトは妄想の産物だってことにされたりするし。

後半で片倉家の謎が明らかになるのだが「外から神を迎え入れて種付けをしたら月に帰る」と言う伝承だったので、過去編の回想が入りつつ、作中で幾度となく推されている月に帰った住人との邂逅何かあるのかと思ったら全然違った。都合よく「神」とされた人物はただの犠牲者で、「月に帰る」は殺されたことの置き換えだったとは。
まあ予想とは違ったけど面白いのは間違いなかった。
1周目の強制エンディングでは10年間待ち続けた親友の献身が光るし、老人となった主人公が映見に看取られるエンディングに至っては感動で切なくなった。この手の展開にはいつになっても弱い。

絵は微妙だし、イベントの整合が取れない展開はあるし、選択肢セーブが出来ないのに25個もエンドを見せられるし、欠点も相当多い。しかしそれを上回る出来であると思う。
特に音楽は非常に良かった。

立絵、CG共に最もクオリティが高い真里が1番安定しているヒロインだった(メインヒロインではないけど)。

1980年代が舞台なのに親友が没収されるゲームに、ニンテンドーDSがあるのがよく分からない。
現代が舞台でも良かったと思う。

色々と問題はありつつも、学園生活という青春の1ページと、伝奇物というジャンルを上手く融合させた作品だと思う。