付き合うまでの過程をすっ飛ばしていきなり恋人状態からスタートという企画倒れしそうなコンセプトでありながらもいつものSMEEらしさを貫いており、非常にレベルの高い萌えゲー。SMEEの発想力には毎度の事ながら感心させられる。これからもこのスタンスは崩さずに頑張って欲しい。
昔からラブコメや純愛物が好きだった自分、少年漫画の恋愛物や少女漫画の延長としてギャルゲーをプレイするようになったので最初はほとんど萌えゲーしかやっていなかった。
しかし、ここ最近はRPG、デスゲーム、ミステリー、伝奇、レトロゲー、kotyeクラスのクソゲー、電波ゲーなど尖った作品のプレイが多く、年齢的にも昔みたいに萌えゲーにドはまりするのは段々厳しくなってきたかなとそう思いかけていたが、この作品のように「質の高い萌えゲー」ならまだまだ楽しめると再認識した。
自分はラブラブル→フレラバ→ハーレムキングダムの順にSMEE作品をプレイしてきたので今回は4作目となる。
ハーレムキングダムは設定が特殊なのであれだが、ラブラブル、フレラバは恋人になるまでの「過程」、恋人になってからの「ダダ甘」が特徴であり、これがSMEEの屋台骨だと思っていた。
しかし、今回はその「過程」の部分がほぼ省略されており、いきなり個別ルートからのスタートとなっている。
正直な話、今までの売りを捨てて斬新な設定を加えるというパターンは多くのブランドが失敗していることなのでかなり不安要素があった。
しかし、大体のヒロインは恋人と言っても「何となくフィーリングが合いそうな恋人レベル1」からのスタートである(長年妹をやってて好感度が積み上がっている亜子は除く)。
この恋人レベル1から恋人レベルMAXに至るまでの流れを、いつものSMEEテイストのギャグや好感の持てる主人公を上手く使って演出しているので、知り合い→恋人までの過程が抜けていてもちゃんと物語として成り立っていた。
また、本作は共通ルートが1時間もかからずに終わる程度しか無く、恋人になるヒロインによって主人公の職場や周りの環境までもが全く変わってくると言う徹底した個別ルートゲーである。
ここまで思い切った作りで勝負し、それで成功させているのが凄い。
主人公は社会人、ヒロインは5人中3人が社会人、残り2人も学生ながら社会で働いているので社会人のユーザーは感情移入しやすいかもしれない。この辺りも既存のエロゲーマーの高齢化を見越しての設定だろうか?
登場人物とプレイ順のルート感想
小鳥遊 和馬
主人公。名前変更可能。
SMEEの歴代主人公同様に主人公として有能な人物。
多少ぶっ飛んでいる性格をしているがそれぞれのルートで見せ場が用意されており、この主人公ならモテても不思議じゃ無いと思わせてくれる。萌えゲーにおいて有能主人公は欲しい要素の上位に来るがこれを達成出来ている作品は多くなく、ストレスフリー主人公で進行できる作品を作り続けているSMEEはそれだけで貴重だと思う。
鳴瀬 咲
地上波で活躍する気象予報士のお天気お姉さん。
作中唯一の年上ヒロイン。
最初の出会いはお互い人違い、その後街で2度目の出会いを経て交際という流れ。
かなりの美人だが28才まで男性経験一切無しという萌えゲーお決まりの設定でありながら、主人公には会って2回目で告白されてOKと言うご都合主義からのスタートだが、告白を受け入れた理由は終盤で判明する。
主人公がテレビ局で働くことになるルート。マスコットキャラのハムジローの下りには笑った。
また、居酒屋で咲の悪口を言っているタレントに主人公がマジギレするシーンはかっこよかった。
28才という萌えゲーでは中々採用されないアラサーだが、年上らしさがある一方で子供っぽい一面もあり、そのギャップが可愛かった。
笑顔のままきついことをさらっと喋るのも面白い。
社会人の年上ヒロインが好きな人にはオススメ。
ただ、デフォルトネームの時はもう少し主人公の名前を呼んで欲しかった。
仕事中のシーンで一回だけ小鳥遊君って呼ぶけど、それ以外は全部「あなた」呼びなのはちょっと微妙かなと。
月野 ましろ
レストランでバイトしている主人公と同い年の女の子。
実は主人公の隣の部屋に住んでいる。
共通ルートにてお客様の荷物を落とすという失敗をやらかすが、そのミスを主人公がかばってくれたことで興味を持ったましろからの告白でスタート。
主人公はましろと同じレストランで働くこととなる。
恋人契約書なるものにサインさせようとするなど独自の感性を持つヒロインなので、若干天然というか電波っぽい言動をする。
ラストで主人公が指輪を拾うために海に飛び込むシーン以外はこれといった山場も無く、淡々と進行する印象。
食材として入荷した伊勢エビをペットとして飼う、という下りは中々ぶっ飛んでいるが。
因みに咲の時とは打って変わって主人公の名前呼びが多い。完全に第3者視点でゲームプレイをしているので個人的にはやはりこれが望ましい。
変わった言動が多いのでそういう個性的なヒロインが好きな人にお勧め。
鹿目 レイナ
LJKの現役学生モデル。
彼女のマネージャーが運転する車に主人公が轢かれるところから知り合う。
出会ったときから積極的なアプローチで強引に主人公の彼女ポジションに収まってしまう。
このルートでは半ば無理矢理恋人関係を迫られているので主人公は最初拒否するのだが、レイナに押されている内に次第に惹かれて本当の恋人になる、と言う流れ。
主人公はレイナが住む女子寮の管理人として働くことになる。
自分はこのヒロインのルートが一番好きだった。
まずレイナが凄く可愛い。
複雑な環境に加え、仕事も上手くいかなくなった時期に主人公と出会い、「現役モデル」の肩書きに囚われない主人公に興味を持って近づく、という流れで最初からグイグイくるところが良かった。
お互いの思いが通じ合って付き合った後に、「先輩に嫌われたくないから変なことを言わないで欲しい」と友達に切なげな表情で訴える場面はどれだけ主人公が好きかが伝わってくる。
ギャグも秀逸でDQN探索アプリの下りはマジで面白かった。
終盤の山場もきっちり締められてたし、エピローグでは全ヒロイン唯一の子供出産で娘登場シーンあり。
萌え、ギャグ、シナリオ、全てが良かった。
ちなみに主人公のことは終始「先輩」呼び。
北大路 可憐
主人公の大学時代の同級生。
ルームシェアをしていた友人に裏切られて無一文のままホームレス一歩手前の生活を送っているところを主人公に拾われて同棲生活をスタート。その流れで恋人に、といった関係性。
主人公は可憐の職場の花屋で働くことになる。
恐らくこの作品で最も人気のあるヒロインだがそれも納得の出来。
そもそも主人公に拾われていなければずっとホームレス生活だっただろう不幸な境遇、同棲生活と言うことで最も
イチャラブできる舞台が整っている、フラワーアレンジメントの夢に向かって邁進するひたむきな姿勢、破壊力抜群のダダ甘行動、など人気となる土台が完璧。
特にデレ期突入からの甘えっぷりが凄く、破壊力が半端ない。
レイナもかなり破壊力が高かったけど甲乙付けがたいレベル。
というかこの作品はどのヒロインも破壊力高くてその中でもとりわけこの2人が、っていう話なのだが。
ましろと並んで主人公を名前で呼ぶことが最も多いヒロインでもある。
小鳥遊 亜子
主人公の義理の妹。
兄妹仲はかなりいい。
妹補正があるので物語開始時点から好感度マックス状態でスタートするのが他のヒロインと違うところ。
主人公は亜子のバイト先のハンバーガーショップで働く。
SMEEで妹と言えばラブラブルの花穂という絶対的なエースがおりどうしても比較してしまうのだが、あのレベルまでは行かないにしても普通に可愛い妹だと思う。
義理の妹ではあるが、主人公とは知り合ってから10年以上は経過しており、妹ヒロインの条件である思い出の共有は達成出来ているので実妹でないことは全く問題にならない。
実は主人公は幼少の頃に災害で両親を亡くし、小鳥遊家に引き取られたという設定がこのルートで判明。
幼い頃は亜子との関係もぎこちなかったが徐々に仲良くなり、お互い異性として惚れてしまう。しかし、主人公は絶対に手を出してはならないと決意し大学進学と共に実家を出て一人暮らししたという経緯がある。
つまり、ゲーム開始時点ではお互い相思相愛状態である。
ブラコン、シスコンの兄妹は大好きなのでこの設定だけでも惹かれる。
主人公が小学生の時に自分の持ち物を隠されても全く意に介さなかったのに、亜子の持ち物が隠されたときは我慢ならず問答無用で同級生をぶん殴った、というエピソードがマジでイケメン過ぎる。
自分で貯金した120万を妹の進学費用にするために親にポンと預けるのも凄いし。
こんな兄貴が側にいたら惚れてしまうよね、という説得力がある。
相変わらずSMEEの兄貴は妹に対する愛が深すぎて素晴らしい。
ただ、亜子自体が回想枠5のヒロイン(他に回想枠が5あるのは咲のみ)であるため、エロに寄せた描写が目立ち、亜子の魅力を完全に引き出し切れていなかったかな?とも思ってしまった。
また、花穂の時は周りの事なんかお構いなしにベタベタしていたが、今回は親にばれないようにこそこそしており、親バレは終盤まで訪れないので周りを気にしないバカップルという点において期待値を大きく下回った。
花穂のルートを見ていなければ妹だしこんなものか?と思ったかもしれないけど過去に前例があるわけだしこの点だけはどうしても比較してしまう。
実妹の花穂とは堂々としてるのに義妹の亜子とこそこそしているというのも何だかね。
まあ確かにこの展開にしないと終盤のタイムカプセルのエピソードが生きないから仕方ないと言えば仕方ないのだけど。
あと、エピローグで10年後に飛ぶけど他のヒロインとは結婚してる中、未だ内縁の妻状態と言うのもなんとも。
折角義理の妹という設定なのだからもう少し生かされてもよかったかなと思う。
総評
舞台となる街は共通だが、それ以外の主要設定はルート毎に変わるので毎回新鮮な気分で攻略出来るのが面白い。共通ルートを殆ど無くしたためヒロイン同士の横の繋がりはほぼ無く(咲ルートとレイナルートで亜子が絡むくらい)、フレラバの時みたいに嫉妬イベント等の絡みが無いのは残念ではあったが、ルート専用のサブキャラが物語を盛り上げてくれる点は良かった。
また、各ヒロインの衣装パターンの多さ、背景画像の書き込みなど要所要所で力が入っている。
俺デートシステムも良いアイデアだと思うが、デートの描写があっさりなのでここはもう少し尺を長く取って欲しかったかな。夕食場所の候補も3つしか無いのでもう少し増やして欲しいところ。
SMEEはシステム、シナリオは良いけど絵に関してはやや難ありという萌えゲーメーカーとしては非常に珍しいブランドであるが(普通はシナリオがダメで絵だけは最高というパターンが多い)、今回は絵も安定していると思う。まあ立絵とCGは別な人が描いたのでは?ってくらい違いがはっきりしている物もあるのだが(特に可憐とか)。
その他、色々と細かい要望点はあるものの、総合的にはコンセプトの勝利と言った感じ。
萌えゲーブームも大分下火になってしまって厳しい時代ではあるけど、このような斬新なコンセプトでこれからも勝負し続けて欲しい。