思った以上に話が重くどちらを選んでも辛い結末になる。ただ、両方比較した時に、えりかを切り捨てるのは灯里の時より遥かに辛かった。ルートをクリアする順番はよく考えるべきだったと後悔。
発売前から暗い雰囲気のゲームになるだろうということは予想していたが、その予想以上に重い話だった。どちらを選んでも選ばれなかった方には救いがない。
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えりかと付き合っている状態から話は始まる。表面上は幸せそうな二人。しかし、拓実の方は過去にえりかには話しづらいような後ろめたいことがあって、それが灯里との再開によって表面化する。この表面化して修羅場と化すまでの経緯がえぐい。
過去に灯里とセックスしている事実はどこかのタイミングでえりかにはばれるだろうとは思っていたけど、それが灯里の父親が二人のセックスを盗撮して販売したことでネットに拡散され、えりかに見られるというまさかのハメ撮り流出パターン。
灯里は大学の連中にも淫乱扱いされるし、えりかはショックで精神壊れるし、拓実も二人の板挟みに合うしでかなりやばい状況に陥る。
今の時代、ハメ撮りがネットで拡散することがどれだけ恐ろしいかは説明するまでもないだろう。この設定だけですでにきつい。流出系ならLIGHTのIMITATION LOVERでもあったけどあっちは校内に写真が張り出される程度だった。あのゲームが発売してから14年がたったが、本当恐ろしい時代になったものだと思う。
えりかルート
ハメ撮り発覚から精神を病んでしまい、拓実と常に行動するようになる。家でも大学でもひたすらセックス三昧。そんな日々を続けているうちに夏休みに突入し、幸せな頃の思い出を取り戻すため拓実とともに地元に帰省する。しかし、思い出の場所を巡っているうちにえりかは拓実と共に初めてを経験することが願いであり、初キス、初エッチを一緒に経験できなかった拓実は自分の理想の恋人ではなくなってしまったことに気づき、拓実に別れを告げる。その後エリカはSNSで親身に相談に乗ってくれたルカという人物に会うことになる。しかし、これは灯里父の罠であった。それに気づいた灯里が拓実に連絡し、攫われそうになっているえりかを救出する。ルカは元々灯里であり、えりかの本心を知りたくて始めたがそれを父親に利用されてしまったと灯里から聞かされるえりか。最後はお互いが本心を話し、別れる。その際「じゃあ・・・バイバイ」とつげる灯里。これで本当に灯里の恋は終わってしまったのだ。
その後、花火大会に行くえりかと拓実。そこでお互いの気持ちを確認し合い、再び恋人になる。
えりかルート感想
ハメ撮り発覚後のえりかは完全に精神を病んでおり、メンヘラヒロインのように思われるかもしれない。しかし、処女厨or元処女厨の人ならえりかの気持ちに共感できると思う。
えりかはただのヒロインではない、幼稚園からの知り合いであるかなり歴の長い幼馴染だ。昔から一緒にいて、昔から色々な初めてを経験してきた相手だ。シナリオの途中で2人の出会いから現代に至るまでの回想が入るが、幼稚園から大学までずっと同じ道をたどっている常に隣にいた人だ。普通に考えたら男側だけでなく女側も、初めてのキスとHをずっと一緒にいた幼馴染と共に経験したいと思うのは至極普通の事ではないだろうか?自分は幼馴染と長い年月を積み重ねて来たのに、それをぽっと出の女、しかも自分の親友に横取りされたらそりゃあ頭が真っ白になってしまうのも無理はないと思う。そして、そこでSNSに逃げてしまうのが現代らしいなとも。
話がそれるが、昔下級生2というゲームで柴門環の非処女問題というのがあった。幼馴染属性で既に彼氏がいるという設定で当然セックスも経験済みという当時の王道を覆すヒロイン。
この出来事で、メーカーのエルフは炎上。ディスクを叩き割り「このゲームには幼馴染が非処女という欠陥があったのでお返しします。なお、返金を求めるものではありません」と送った人がいて、その実物の画像もネットに上げられる程の騒ぎになった。
それを見て、どんな分野でもガチな人は怒らせないようにしようということと、幼馴染属性はやはり特別だと当時学んだものだ。
しかし、下級生2は環を放置して他のヒロインを攻略する自由性がある。そもそも攻略過程で好感度を育むゲームであり、確か主人公が所属する部活のマネージャーというポジションであったと思うがゲーム開始時点で主人公が環に惚れこんでいるわけでもない。極論を言えばほとんど環と関わらないことができる。
それに対してこちらは冒頭からえりかとは恋人でこれは変えられない。また、灯里と主人公の初めて同士の情事も変えられない。だから最初の時点でえりかが辛い思いをすることは確定であり、これが非常に辛かった。他にも三角関係物は沢山あるが、メモオフにしてもWAにしてもここまで長い付き合いのヒロインではなかったから、ここまで辛い感情を抱くことはなかった。
えりかは最後のヨリを戻す場面で「理想も順番も関係ない、それに気づくのにここまでかかってしまった」と言っているから表面上はきれいにまとまっているけど、変えようのない事実が心に痛い。
最近はまっているハーレム物のヒロインたちは全然そんなの気にしないから久々にこのルートで昔を思い出した。
灯里ルート
父親が昔のことを反省し、灯里にやり直そうと近づく。しかし、それは父の罠。部屋に小型カメラをしかけられ、今度は顔も名前も映っているハメ撮りを撮られる。流出されたくなければ、ホテルに来いと脅す父。売春させられそうになるが、拓実が救出。その際、灯里が撃たれる。何とか病院に搬送され、一命をとりとめる。父親は警察に逮捕された。灯里はその後ハメ撮りの身バレから大学にいづらさを感じ、大学を辞めることを決意。一方の拓実も灯里が撃たれた経験から救命士になることを決意し、同じく大学を辞めることに。お互いに大胆な告白をし、最後は幸せなキスをして終了。
灯里ルート感想
えりかルートでえりかにかなり感情移入してしまったからその後にこちらを進めるのは辛かった。攻略順を完全にミスったと失敗。それでも何とかクリアして抱いた感想がツッコミどころ多すぎだろということ。
まず、一度ハメ撮りで痛い目を見ていて灯里が父親を部屋に1人にさせたくないと拓実を監視として部屋に残したのに、灯里から電話が来たから部屋を出て父親を一人にするというのは流石に迂闊すぎだろう。他の人物から電話が来たならともかくなぜ買い物に出かけた灯里から電話が来ただけで一々外に出るのか。常識的に考えて娘のハメ撮りをネットに流すなんて正気の沙汰じゃない。金のためとはいえ、反省しているというレベルでは済まないだろう。全く無警戒の拓実には呆れてしまう。
また、その父親も相当な馬鹿だ。灯里を呼び出したホテルをえりかに素直に教えた理由が「現場を見せつけることで仲を破壊してやろうと思った」ということだがそんな意味のないことをする必要がどこにあるのか。こいつの目的はとにかく金を稼ぐことであり、ガキの青春ごっこに付き合ったところで一文の得にもならない。拓実に台無しにされた後に「この手はずを整えるのにいくらかかったと思っている!」とのたまうが完全に自業自得だろう。どうしても仲をぶち壊したいなら灯里を脅してホテルに連れ出してハメ撮りを撮った後にそれをえりかに送ればよかっただけの話だ。これで裏社会の実力者とは何かの冗談ではないだろうか?
さらに、主人公がホテル突入の際に大学に乗りこんできたWHOTUBERに協力を申し出るが「俺の名前は出すな」と言われ約束したにもかかわらず、父親と対面した際に外であいつに会ったと普通にのたまう。確かに、こいつらのやっていることはごみで自分は現実でも炎上系YOUTUBERが大っ嫌いなのでまあ自業自得だろうとこれに関しては思ったが簡単に約束を反故にする拓実も中々すごい。
まあ、上記は灯里とは直接関係ないことだけど灯里単体で見てもちょっと引っかかる。
まず、拓実との関係について中学の時同じバド部だったという設定があるが何度か話しただけで、具体的なエピソードとかは特にない。この設定が処女の引き受けをお願いしたり、好きになる理由の説明になるかと思ったがそんなことは全くなく死に設定だったと思う。
また、えりかも灯里も互いの事を親友だと思っているがそれに関するエピソードもなし。
全体的に描写が薄い。
拓実誘ったのは心弱ってる時にたまたま目の前にいた相手で、セックス通して惚れてしまったというのはまあまだいいにしても、えりかと灯里の関係についてはほとんど触れられる部分がないから感情移入しづらいかった。ちなみにこのルートのえりかは気を使って買い物に付き合ってくれた由美に対して「友達ごっこはもうやめて」というなど完全に精神病んでいるのに灯里に拓実譲るときは意外に修羅場ならない。まあ、えりかルートやった後にきつい修羅場見させられるのは辛かったから自分によってはかえってよかったけど、普通にプレイしてる人にとってはそんなあっさり明け渡していいん?と思うかも。
グラフィック
美しい。文句なし
音楽
first timeは灯里の心境を綴った歌でPetrichorはえりかの心境を綴った歌。
Petrichorの一節で「間接キスに照れた記憶はあるけど、あなたのファーストキスの味は知らない」という部分で心が締め付けられる。これをエンディングに流すから尚更。
ただ、曲自体はどっちも素晴らしい
キャラ
拓実・・・性欲盛んな男子高校生が灯里ほどの美少女からセックスの誘いを受けたら断ることが難しいのは仕方ないかもしれないが、その前の相合傘の時点でえりかに恋をしていたならぐっとこらえればこんなことにはならなかった。それだと物語が始まらないけど。
えりかとの初めてのエッチの時に俺も初めてだと嘘をつくのはバレなければその方が幸せだろうけどバレてしまったら最悪の結末。後ろめたいことをしたときほどそういうのは明るみに出るものだよね。
2年前の灯里とのセックスの時に時計をしてるのは自分も気になったけど外したら外したでえりかのことを完全に隅に追いやってしまっている気もするしどちらが正解かって言われるとどうなんだろう?
えりか・・・自分の理想が物語開始時点でついえてしまっている悲しきヒロイン。幼馴染について今一度考えさせられた。
灯里・・・壊れてしまった家庭環境、居場所がない自分をすくってくれる人を求め、拓実に縋りついた少女。彼女もまた被害者
洋一・・・灯里の父。まごうことなきくずだが同時にバカでもある。
主人公は時々あほだけどそれ以外は三角関係物の主人公らしさが出ているかなと。
ヒロインはどちらも良いがやはりえりか推し。
総評
書淫を除いてここ最近明るい話のゲームばかりしていたからこの暗い雰囲気と展開が心に突き刺さったがシナリオの題材は悪くない。
ただ、シナリオに対してエロシーンの数がちょっと多すぎる。回想が20枠で一回のシーンが長いからエロシーン突入するとテンポが悪いし、それが間髪入れず連続で続くときもあるのは何とかしてほしかった。
あと、エンディング後のエピローグがエロで締められるのも勘弁してほしい。
分類が非抜きゲーとなっているけどこれだけエロあるともはや抜きゲーに近い。
話の主題がセックスだしそういう場面を入れなきゃならない箇所があるのはわかるんだけどちょっとバランスが悪い。
最悪エロの回数は据え置きでもいいけど、もう少しシナリオ量増やしてバランスとってほしかった。ミドルプライスってこんなもんだっけか?
という不満があるが、それ以外は色々と頑張っていると思う。
もう少しシナリオ練りこめばフルプライスで勝負できる題材ではないだろうか。
ちなみに、推理物でクロロホルムで気絶させる場面がよくあるが、このゲームではクロロホルムをかがされたえりかは軽い頭痛起こす程度である。実はこっちが正解で、クロロホルムで気絶するようなことは現実ではまずないそうだ。この辺りはリアリティ追及していてよかったがそれにより洋一のバカさ加減がまた目立つこととなった。
まあでもこの手の作品だと男の声や立ち絵ないこと多いからそれを用意したのは評価できる。
エロゲだから女キャラだけ出せばよいというわけでもないし。むしろシナリオゲーならその辺りは用意した方がよいと思うし。
男の立ち絵用意できるなら主人公も顔アリにしてほしいけどこの辺は主人公顔なし派の人の方が世間的にはやはり多いのだろうか。
やってから気づいたのだが絵、雰囲気、システムを見る限り少女グラフィティのPURE MOREと姉妹ブランドだったりする?
最近のメーカー事情よく分からないからあくまで想像でしかないのだけど。
このゲームの舞台は仙台だけど少女グラフィティも仙台が舞台だし。メーカーの本社が東北なのだろうか。業界においては中々東北に本社おくところ無いからもしそうならかなり珍しいね