2016年kotye大賞。クソ要素もあるが光るモノを感じさせる部分もあり、どの観点から採点するか迷ったが最終的には「個性的すぎるが故に訳の分からない作品に仕上がったクソゲー」として評価した。
決して手抜きではなく、寧ろかなり力の入った意欲作であることはヒシヒシと伝わってくる。
しかし、作風が独創的すぎて純粋な面白さに直結していないことがなんとも残念な作品。
キワモノゲーが好きな人にとっては重宝されるかもしれない。
あらすじ(DLSITEより)
彼の名前は追湊 ユウマ(おうみなと ゆうま)
「ボク、入学したら文芸部に入るんだ」
しかし、彼の野望は入学した翌日、担任からの「文芸部? 何年か前に潰れたわよ」の一言でついえた。
文芸部に入る→先輩と恋に落ちる→売れっ子ラノベ作家になる!!
という彼の未来予想図は、早くも根本から書き換えを余儀なくされる。
文芸部に代わる部活を探すも他に小説が書けそうな部はなく、結果として帰宅部に落ち着く……はずだった。
が、ある事件に巻き込まれ、その結果、第二文芸部という名のオカルト研的な部の一員となってしまう。
そして入部早々、彼は不思議な魔導書を手に入れるが、部長の柚夏先輩いわく、その魔導書はなんと!
契約者をモテモテにする魔法を秘めたモノと判明する!!
使ってみたそうな柚夏先輩。
だが、魔導書と契約するには精液が必要ということなので、
精液を出してもらう(足コキ)ことを条件に魔導書との契約に同意し、彼は魔導書と契約する。
柚夏先輩の主導の元、魔導書の効果を確かめる実験が開始されたが、
やがてその効力がモテモテになるものではなく、相手を発情(サキュバス化)させる魔法だと知る!
魔導書の影響で、彼の周囲ではエッチなトラブルや事件が勃発!
果たして彼は、念願のラノベ作家になれるのか!?
■登場キャラクター(DLSITEより)
●詠元 柚夏 (CV:八ッ橋きなこ)
・第二文芸部、部長。
・先輩。
・身長150cm
・ちっこくてかわいい系。
・制服の上に小さめのマントを着用。
・一人称「あたし」
・猛犬チワワの二つ名を持つ本物の魔法使い。
・口が悪い。
・邪魔する奴は呪う。
・学園で最も恐れられている。
・でも、本当はいい人……かもしれない?
・ユウマの事は下僕扱いするが実質、面倒をみて貰っている。
・去年まで図書委員をしていた。
●吾達 碧唯 (CV:八尋まみ)
・フレンドリーで元気なクラスメート。
・身長150cm
・運動神経は抜群。
・スカートの下にスパッツ着用。
・一人称「あたい」
・好奇心旺盛。ぶっきらぼうで、やや舌っ足らずな喋り方。
・おバカな友人ポジだが、成績は天才的。
・ハードウェアとソフトウェアの両方イケる。
・腹ペコキャラ。お腹を空かせて廊下に倒れてることも。
・ユウマの弁当を早弁するのが日課。
・たまに生徒会長の魅優とユウマの弁当を奪い合う。
・可愛いモノ?が大好き。
・レオナルド先生と仲がいい。いろいろ作って貰う。
・語尾が「~だぞ」
・猫揉み1級の腕前。
●雨能 緋凪 (CV:藤邑鈴香)
・図書委員にして図書室の主。
・先輩。
・身長165cm
・委員長ぽい雰囲気を醸し出しているが、内面は面倒見のいいお姉さん。
・一人称「わたし」
・図書室で騒ぐ奴は許さない!
・柚夏先輩の数少ない友達。
・図書委員の仕事はいつも一生懸命。
・図書室の蔵書を汚されると怒りに我を忘れるらしい。
・常識人だが、本を触ってないと落ち着かない。
・同人誌でモノスゴい小説を書いているらしい。
・場所柄、魔導書絡みの事件に巻き込まれ易い。
・ユウマに創作のアドバイスをしてくれる。
●鷺武 魅優 (CV:風花ましろ)
・生徒会長。
・先輩。
・身長165cm
・美形。気が強そうな顔。大きめの柔らか美乳。
・靴下はいてない。
・一人称「オレ」
・学園の人気者。無駄に高スペックで性格はサバサバしている。
・直ぐに仕事を主人公に押し付けて逃げる。
・後先考えず、事態を面白くしたがるトラブルメーカー。
・ベランダ&窓から出入りし、廊下や階段を使わないで移動する。
・お行儀は最悪。
・たまにユウマの弁当を押し買いする。
・お昼の放送を担当している。
・可愛い娘が大好き(性的な意味で)。
・七水先輩に木刀を突き付けられると声が可愛くなる。
・たまに霊感がある。
●榊禊 莉桜 (CV:星空ユメ)
・主人公と同学年。
・別のクラスの娘。
・身長150cm
・いつも眠そうor寝てる。
・縞パンらしい。
・一人称「莉桜さん」
・授業中はちゃんと起きているらしい。あくまで噂。
・どこでも寝る。
・特に非常階段は重要なお昼寝スポット。
・変なところに入り込んで居眠りしていることもある。
・たまに主人公が回収する。
・居眠りしている最中に何かすると後で慰謝料を請求される。
・語尾が「~なのです」
・誰かれ構わず呼び捨てなのです。
●紫延 七水 (CV:綾音まこ)
・風紀委員長兼生徒会副会長
・先輩。
・身長165cm
・綺麗だけど凛として怖い。
・背筋がピンとしている。スカートはかなり短い。
・木刀を持ち歩いている。
・一人称「わたし」
・自分にも他人にも厳しい。
・緋凪先輩が文系の真面目さんならこちらは武道系の真面目さんというか、姫騎士系。
・生徒会長には振り回され気味。
・スマホはいつも最新機種。
・メカには弱い。
・ソフトも無理。
・IT系のセキュリティが緩くウイルスまみれにする常習者。
・意外と臆病。
・わりとトラブルメーカー。
●冴機 紗良 (CV:羽高なる)
・主人公の担任で英語の先生
・身長165cm
・タイトスカート&胸元の開いたシャツ。本人的にはエロ可愛い女教師。
・基本ノーブラ。
・一人称「先生」
・ダメなお姉さん系
・おっとりしていてその実したたか。でも天然。
・生徒会の顧問もしているので、ユウマを書記に任命。
・ユウマに生徒会の雑用と自分の仕事を押し付ける。
・日頃の行いが祟って第二文芸部の顧問にさせられる。
●透子 (CV:早瀬ゃょぃ)
・身長150cm?
・透明人間
・透明なので、見えるのは制服と下着のみ。靴下と上履きなし。
・服を着てないと全く見えない。
・一人称「透子」
・ユウマのみ呼び捨ての格下扱い。
・語尾が「~っす」
・妖怪を食べる。
・お菓子が大好き。
・透明であることが誇り。
以下つらつらとした感想
・ストーリーについて
このゲームは220個からなるショートエピソードで出来ている。
特に目的のない日常系漫画や日常系4コマのような構成であり、エロゲーでは珍しい作風。
220個の内訳の大半は怪異が絡むものだが、中には怪異が全く関係ない本当にただの日常ネタが放り込まれることもしばしば。一個一個はそんなに分量はないがそれが220個も有るので大したストーリーがあるわけでもないのにかなり長時間のプレイを要求される。それでも話が面白ければ良いのだが、全体的にシュールなネタが多く何と言っていいか分からないものが大半。
しかも、怪異が発生しても解決しない場合もあり途中で放り投げるものをわざわざショートエピソードに組み込むのが正直謎。
例えば「亡霊クラス」
これは、教室の中を覗くと見たこともない生徒達が自習をしておりそれに参加してしまうと現世に戻れなくなってしまうというものである。
怪談としてはありきたりな話だが、七不思議の王道とも言えるしこの話自体は良い題材だと思う。しかし、最終的に教頭がこの亡霊達に誘い込まれ戻ってこなくなって終わり、で話が締められる。
こういう怪異を解決するのが主人公達の仕事のはずだが何故放り投げてしまうのか。
他にもさっちゃん様の話とか赤いコートの不審者の話とか話の展開がすっきりしないエピソードが多い。
こんな結末ならこのエピソードは不要だろう、と思うものがいくつかあった。
大ボリュームが結果的に無駄になってしまっている。
こんなエピソードがだらだら続き、最終的には柚夏が肉体を持たず生まれた妹の柚月を受肉させるために魔導書を利用し、柚月が受肉してエンディング。なぜ柚月が受肉せずに生まれてきたのか?など大事な事は一切説明されない。無駄なエピソードを削り、ストーリーの重要な部分をもう少し説明すべきだと思う。
因みにあらすじには、ある事件がきっかけで第二文芸部に入部してしまうと有るが、この主人公は自ら第二文芸部に入部するので別に巻き込まれたわけではない。あらすじの書き方も紛らわしいと思う。
・世界観
ストーリー以上に世界観の意味不明さが目につく。
この学園、なぜか校長がただの犬なのだがこれに対する説明が最後まで一切無い。誰も疑問に思わないし主人公以外は校長の犬語を理解することが出来る。
学園の歴史もよく分からない。
今の学校の歴史が20年くらいで去年までは女子校らしいのだが、50年以上前の生徒会の話も普通に出る。
「学校の歴史より生徒会の歴史が先にあってもおかしくないだろ?」と現生徒会長が発言するがどう考えてもおかしいだろう。主人公も一応そこは突っ込むのだがスルーされて進む。
このように舞台設定となってる学校のことすら詳細がよく分からない。
それと怪異の種類もごった煮。まあ自分はこれはこれでありだと思うけど、妖怪、宇宙人、エジプトの古代神など統一性がないので何でもありな世界観について行けない人はこの時点で挫折するかも。
・キャラクター
「こういう属性」で「こういう役割」と言うのは十分伝わるのでキャラのかき分け自体は出来ている。
それなりに個性はあるし、絵も良いので見た目は可愛い。
しかし、このゲームの舞台は学校のみ。主人公視点だが、家での生活や学園の外での日常が描かれることは一切無い。かなり思い切った構成だとは思うが、キャラクターの私生活の描写が無く、当然デートイベントみたいなのもないので内面の描写が弱い。
キャラクターの個々の属性のみに頼ってる感じだ。
9割9分が共通ルートであり、一応ルートは複数有るものの特定キャラの個別エンドが存在しないため、そういう意味でも特定のキャラに愛着が湧くことがあまりない。
萌えゲーとして考えると微妙。チョロイン攻略ゲーとして捉えればまだ何とか。
ヒロイン以外のキャラは妖怪とか色々出るが頭に残るようなキャラはおらず、インパクトに欠ける。
また、主人公も相当おかしい。自分のトイレ画像を撮影されてるのに「ネットに流出させないでくださいよ、それ」の一言。流出させなければ写真を撮らせるのはOKとかどんだけ心が広いんだ。
この主人公は全体的に考えがイカれてるので常人の思考ではついて行くことが困難。
・エロ
愛着が湧きづらいので萌えゲーとしては微妙といったが、恐らくその辺りはメーカーもある程度仕方ないと考えていたかもしれない。
なぜならエロの回数がかなり多く、恐らく抜きゲーを意識したものと思われるからだ。
回想枠が71、一回のシーンが長い、アニメーションあり、ヒロインは全員巨乳、と題材が揃えばそう考えるのが自然だろう。
しかし、はっきりいって蛇足が多すぎ。自分は元々シーンは殆ど見ないので今回もスキップ多用したが、そういう意味とは別に蛇足が多い。
透明人間とのエロシーン、肥大化したクリで疑似フタナリシーン、主人公女体化シーン
誰が得するのこれ?これらの特殊プレイは専門のゲームでやるべきであって予告なしにやるもんじゃない。まあ透明人間はシュールなだけだから別にあっても無くてもどっちでも良いんだけど、フタナリと女体化は悪いけどマジで引いた。
あと緋凪はアナルセックスしかしない。一回も前の穴を使わない。これも意味不明だった。一回くらいは使うべきだろう。
放尿プレイもあるしメーカーの思考がマニアックすぎる。
・テキスト
誤字脱字が非常に多い。多少なら目をつぶるが流石に酷い。
「なんと緋凪先輩が、特別に夜乃すずめ先生の新作のゲラを特別に見せて貰ってる。」
緋凪(本名)=夜乃(ペンネーム)で同一人物なので、緋凪先輩から~見せて貰ってると続かなければ文としておかしい。しかも「特別」が同じ文に2回あり重複表現で非常に読みづらい。
「天使様をそんな便利に使っちゃっていいのかなと疑問をは感じない無いが、何をいまさらだし、他に良い方法も思い浮かばない」
疑問を感じないことも無いが、と書きたかったのだろうか?文が支離滅裂過ぎて脳内変換すら大変。
また、テキストのセンスも独特であり「退学」のことを「放校」と表現するライターは初めて見た。
総評
220個もエピソードがあるが、単なる日常のみの無駄なものが多く、エロゲー版「四十八(仮)」と言われるのも納得。キャラも萌え要素はほぼ無いし、エロの数は多いがドン引きする特殊プレイが多数、世界観も狂ってるしテキストも誤字脱字と独特のセンス。
大賞を取る作品にふさわしいクソゲー要素が満載だと思う。
しかし、相当長いゲームながらも最後までプレイすることは出来た。なぜかというと七不思議や都市伝説や怪談話が好きだから。「学校の怪談」のアニメ、「学校の怖い噂、花子さんが来た」、「親指探し」、小学校においてあった学校の怖い噂シリーズ、等をよく読んでいたし、今作のグリモ☆ラヴはそれらを彷彿とさせるエピソードも沢山あったので懐かしい気持ちで見ていた。
それこそ「亡霊クラス」など最たる例であり、これは「学校の怖い噂、花子さんが来た」でも取り上げられた。火事で焼け死んだ生徒と教師が夜な夜な勉強会をやっているといった内容だったかな。
花子さんの場合はタイトルに反して「花子さんが来ない」事も多々あるので成仏しないのも分かるのだが、グリモ☆ラヴの場合は第二文芸部が仕事をすべき案件であり、基本的にどのエピソードもシュールギャグなんだから教頭も助けてやれよと思った。
自分は怪談が好きと言っても怖いのを見た後だと寝られなくなるという「怖いのが苦手なのに惹かれてしまう」厄介なタイプなので、グリモ☆ラヴのショボイ怪談話は逆にほっとするところもあったし、最後までそのノリでいくと思った矢先にまさかの教頭退場は正直謎だった。まあ「四十八(仮)」でもたまにこういう真面目な話はあったしそういうところも似たのだろうか。
話が逸れたが上記の事情から、「怪談は苦手だけど好きなジャンル」なので題材自体は面白かった。
また、キャラも萌え要素は足りていないがチョロイン攻略ゲーと考えればこれはこれでギリギリ行ける。個別の無いハーレムゲーだし。
普通のゲームとして評価をするか迷ったが、やはり光る部分よりもクソゲー要素の方が強いので今回はクソゲーとして及第点を与えたい。
メーカーの熱意は伝わるがそれが「面白い」ではなく「クソゲー」に繋がってしまった本作。
独特のセンスがゲーム全体にわたっているので、どこを改善すれば面白いゲームとなったのか?を指摘するのも難しい。常人には理解しづらいし、拘束時間も長いのでクソゲー初心者にはあまりお勧めできない。