今年のエロゲスタートはこれになった。切なくて感動できる純愛ストーリーでロープライスながら非常に良くまとまっている。しかしながらこのゲームの惜しむらくは本来の購買層であるアトリエさくらファンからはいい話だけどこれじゃないという感想が多く(そもそもNTRじゃない)、そして逆に純愛好きからしたらそもそもアトリエさくらの作品が目につくことがないし目についたとしてもパッと見は寝とられ作品にしか見えないから中々プレイしてもらえないだろうと言うことじゃないかな。個人的にはこういうミスマッチした状況は大好きだから思わず惹かれたけど。
NTR専門ブランドということで昔は名前くらいしか知らなかったけど、ニッチな市場ながら今もコンスタントに作品を出し続けている為いつの間にか老舗になりつつあるアトリエさくら。興味本意で作品リスト見てたら「これは純愛ものでNTRじゃない」っていう感想を拝見して興味を惹かれたのがプレイ動機。
結論からいうと純愛とかハーレム好きの自分から見てもこれはNTRじゃないと思う。
この作品のNTRに該当する部分といえば現世の妻と親友(主人公の元カノの兄)の組み合わせになるけど、もし主人公の元カノが生存していてそのまま結婚していたら主人公を想っていた現世の妻は元カノ生存の世界線では身を引いて親友とくっついていたのではないか、という可能性の話でしかない。しかも主人公が迷いこんだ元カノ生存の世界は本当にそういう時間軸にワープしたわけではなく、言ってしまえば精神上の幻想世界のようなもの(作中ではこの世界がなんだったか？までは語られないのであくまで自分なりの解釈だが正しい結末を選ばないとループする構造であり元カノと結ばれる結末は存在しない為本物の世界ではない)であるため本当の意味で現世の妻が寝とられることはない。ただこういう未来もあったんじゃないか？という可能性をエロシーン三回分見せられるだけ。
主人公が夢の中でこういうシーンを見せられてる間にも妻と娘は主人公の意識が回復するのを病室で待っている状況だと考えれば全く寝とられとは関係がない。
そしてシナリオ部分。
元カノ生存の世界に連れていかれたのは自分を差し置いて結婚している主人公を許せない元カノが引きずり込んだのかと当初自分は思った(パッケージの絵で元カノの目の部分が逆さまの状態で見ると邪悪な感じに見えたから)が全然そんなことはなく、元カノ、妻、親友、娘、全てが優しい人たちで主人公が過去にとらわれてしまっている状態から抜け出すのを手助けしてくれる。
特に元カノや妻は健気すぎて泣けてくる。
普通の幸せすら掴むことが出来なかった元カノは主人公とささやかな結婚式を挙げることで満足し、主人公にこれからは未来に進むようお願いして別れを告げる。先ほどは精神上の幻想だと述べたが後に主人公が現世に戻った際に、親友が妹からお兄ちゃんも私にとらわれず前に進めと夢で言われたとか、精神上の幻想世界で元カノが相合い傘を机に落書きした場所にRemember that i love youと刻まれているなど元カノの存在は主人公の妄想だけではなかったことが示唆されておりこの演出には切なさを感じると共に感動してしまった。
妻の方は幼い頃に主人公が自分の引っ越しを止めるために親に直談判してくれたことをずっと感謝しており、大学で再開するまでずっと誰とも付き合わずに想い続けていたこと、元カノが亡くなり塞ぎこむ主人公を献身的に支え続けるなど非常に出来た女性。
もう戻ることができない元カノはもちろん切ないんだけど仮に元カノと結ばれていたとしたら妻は切り捨てなければならないという状況も辛いことだろう。
総評すると短いながらもシナリオが非常に良い。これと似たような話はドラマや小説にいくつもあるだろうけど、それでも結末が分かっていても切なさと深い愛に満ちた話だった。
ただ、フルプライスならもっと掘り下げた話に出来たかなとは思う。
あと誤字が多かったのも気になった。
待つが末になっていたり、消し忘れたと思われる表現の重複があったり。ロープラのテキスト量だからこの辺はなおさら気になった。
ちょいちょい惜しいところはあったもののロープラでありながらも楽しめたしNTR専門ブランドでありながら純愛で本気出すという面白い物も見れたので新年一発目の作品としては良かった。
まあこれは例外だろうからアトリエさくらにこれからもこういうのを期待するのは酷だろうけど。
一応抜きゲーとして出したとは思うんだけどエロよりシナリオ重視になってるから完全に他の作品とコンセプト違うしね。
でも個人的にはこのミスマッチも逆に面白く高評価だった。