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Luinzooさんのうみねこのなく頃に Episode1 Legend of the golden witchの長文感想

ユーザー
Luinzoo
ゲーム
うみねこのなく頃に Episode1 Legend of the golden witch
ブランド
07th Expansion
得点
90
参照数
72

一言コメント

Ep1 初めにして異色。周回を重ねるごとに発見がある

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず初めに。
このうみねこのなく頃にという作品は間違いなくミステリーとして作ってあった。
難易度はHELL。漠然と読み進めば答えがスッと与えられるような生易しいものではない。
しかしながら問題編各Ep(1-4)内は全て犯人・犯行動機・トリック等が確かに存在しており
そのヒントも本文中の細部に散りばめてある。
彫刻を削るかのように理詰めで情報を整理していくと作者の想定した正解としか思えない答えに辿りつく。
特にこのEp1はカッチリと作ってあり「魔法がない」ため気づくには洞察力が必要となる。
時間のある方は答えを見る前に自力で挑戦することをオススメする。


・以下作品全体に対する感想

読者をここまで選別するような作品を作るのは同人ゲーでないと不可能だろうと思う。
一体読者の何%がついてこれるのか。作者の意図に気づけるのか。
ハッキリ言って普通の読者は1つのノベルにそんなに膨大な時間は賭けないだろう。
とりあえず1周読む程度、更に言えばひぐらしの竜騎士作品ということで
マジメに行間を読むこともしないかもしれない。
だが敢えて。ガチで作った、ついてこれる奴だけ挑戦してくれという挑戦状。
それがこのうみねこのなく頃にという作品だと思う。
周回を重ねクセのある本文を読み込み、他人の考察を読み見識を深め、
背景とキャラの行動原理を理解し作品全体に対する理解度が増えるほど
最初は凡庸に思えたこのEP1がどれだけ細部まで伏線に満ちていたのかと驚かされる。
何気ない雑談に見える箇所やさらっと流される文に当然ながら作者の意図が込められている。
じっくり細部まで答えがあるはずだと作者を信じて読み込まないと気づけるわけがない。
どんだけ高いハードルなのかと。正直舐めていたよ竜騎士さん。
初見と今ではEp1のほとんどのシーンの意味合いが全く違って見えてきて面白くてたまらない。

・EP1ネタバレ

Ep2以降は魔女というナビゲーターとバトル形式を取ることで相対的にヒントを出していく。
明らかに嘘である魔法バトル描写が頻繁に行われ絶対の真実である赤文字も登場する。
プレイヤーはミステリーで解こうとする場合簡単に描写の信頼度を判断することができる。
しかしながらこのEp1は同じルールで執筆されているにも関わらずそれがない。
そう、実はEp1文中においても以降のEpと同じく魔法の脚色が紛れこんでいるのである。
その虚飾も厳格なルールに基づいており(コミックEp8にて明示)読み込むほどに発見がある。
ノーヒントで考察力が試される。初回にしてうみねこの中では異色作それがこのEp1だ。
この作風の違いも「ボトルメール」「創作」「読み手」の違いを意識して書いているならとんでもない。

当然ながら大多数には理解されずバッシングされるも、
ガチで取り組んで「至った」少数の者からは評価され、
そして分かっている者同士で語り合いたくならざるを得ない。

人を選びすぎるこのうみねこのなく頃にというゲームの醍醐味がつまっているのが
このエピソード1だと思います。

初見75→7年後90点