シチュエーションは豊富だし、肝であるアニメも質・量とも悪くない。下手なエロアニメより遙かに実用性が高い。エロい。問題はキャラクター性とシステム周り。タイトルで失敗・損してる印象。
エロゲーでは「男の逆恨みから凌辱・調教される」というプロットが多い。
というのも「復讐されて当然」なんて思われるような女性に惹かれる男は少ないからだ。
ところがこのゲームの絵里子は違う。本当に非道い。悪意が無いから尚更に非道い。
大抵の人は「そりゃアンタが悪い」と言ってしまいそうな女性。
「女経営者」なんて聞くと私は「キレもので冷淡で…」と安易な連想をしてしまうが、絵里子はそういったイメージとは真逆の人物。
資産家だった両親から継いだ旅館をきりもりする手腕も気概もなく、自分を哀れんでくれる男の好意・温情・援助・経済力に縋ることしか出来ない（しない）女性。
儚げな面立ちと豊満な肢体、上品な立ち居振る舞いはお嬢様だけれど、嫌な意味で思考もお嬢様。
自尊心は強いけれど責任感は無く、具合が悪くなると自己正当化＆責任転嫁して逃げる。
資産家と結婚して重責から逃れたい――と、どこまでも自己中心的でしかも罪の意識が無い。おまけに無類の好色。
まーハッキリ言って、どうなのだ？この女は――って人物だ。
そんな絵里子に捨てられた顕嗣が主人公なのだから、凌辱だ調教だと言っても悲壮感はカケラも無い。
プレイヤーは「やられて当然」と思うだろうし、事ある毎に自尊心から拒むものの絵里子は快楽に易々屈するような女だ。
おかげで普通なら後味の悪そうな加虐的シチュエーションでも絵里子に同情する気は起こらないし、アニメの質も概ね良いのでエロいし実用性が高い。
一人の女性としてはどうかと思うけれど、エロゲーのヒロインとしては都合のいいキャラクターなのだろう。
ゲーム冒頭ではそっけなく冷淡に思えた摩耶の方が、よほど理知的で繊細、妖艶かつ高貴な女性に見えてくるし、反抗的で勝ち気だけれど時にしおらしかったり幼げな由佳の方がまだしも可愛い気がある。
摩耶のデザインが書き込まれているのに比べ、動画として動かし易いよう絵里子のデザインが極端に簡略化されているのも皮肉だ。
ところでこのゲーム、やたら選択肢が多いくせにどういうわけかセーブスロットが10しか無い。ホワ～イ？
追プレイどころか初回プレーでいきなりスロットが足らなくなるのはどう考えても大問題だ。
せめてスロットは30ほど欲しいし、クイックセーブや選択肢の遡りでも付けてくれなきゃ辛い。
コンフィグも音声やメッセージ周りを調整できる程度でお世辞にも必要十分とは言えず、しかもバックログ機能が無い。
誤字脱字や物語上の整合性の齟齬、アニメーションにゴミ（？）が混入するシーンが散見されるのもいただけない。しかも修正パッチが出ていない。
正直、システム周りは褒められたものじゃない。
さっさとコンプリートデータで上書きしてエロ動画再生プログラムとして使うのが正解か…？
復讐劇としては至極まっとうだしテキストも水準以上、人物描写も手慣れているし全体としてみればなかなか手堅い造りなのだが、シナリオに情緒や意外性は無く読ませる話ではない。摩耶や由佳と顕嗣の関係をもう少し掘り下げれば物語に厚みが出たのでは…というか奈々美のシーンを喜ぶ人はどう考えても居ないわけで、リソースの配分はもう少し考えていただきたい。
即物的なオカズとしてはこれでも充分だし、アニメーションの質・ボリュームは及第点以上。システム周りの改善が今後の主な課題だろう。