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LTGN14さんの光翼戦姫エクスティア3の長文感想

ユーザー
LTGN14
ゲーム
光翼戦姫エクスティア3
ブランド
Lusterise
得点
95
参照数
7760

一言コメント

悪堕ち航路の一里塚

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

以下、作品の出来にあまりに感心しもしたので、個人的かつ側面的な長文ですが、めっちゃベタ褒めするのでご容赦ください。(言葉が強ければ全編渡って比較的の枕詞つけて読んでほしい)

これは大変な作品ですよ。マスターピースです。真打ちです。悪堕ちに惹かれるならば是非、門外漢でも物見遊山でも、一度は手に取り触れてもらいたい一品。

私の評価項目を挙げます。
1. 悪堕ちが主体であること
2. 過去作品を読み込み該当のシチュエーションを咀嚼昇華してる節があること
3. 表層引用に留まらずシチュエーションを成立させる世界観があること
4. 単純なエロ描写に終始せず、前後や立ち絵の補完描写があること
5. バリエーションが多彩であること、そして各々がハズしていないこと
 
悪堕ちって難しいと思うんです。観念的な所あるし、それ主体で商売するのは難しいとこもあると思う。クリティカルな場面場面を魅せてくれる作品は媒体問わずありますし、随分お世話になりました。けれどもこれで一本作ってくれよな!となるとこれがなかなか出てこない、そういうもんかなと思ってました。

だもんで新規の鉱脈掘り当てる開拓者にはもちろん頭が上がらないところですが、一方悪堕ちはエロに非エロに未消化の優良債権があちこちに埋まってる状況だとも思ってまして、このシチュの続きが見たいわ!この展開のエロスが見たいわ!そのシチュをもっとガッツリ世界観に組み込んでその前後を見せてくれ!みたいな欲求があります。みんなもあると思うんだよな。

その意味で、このシリーズも前作までも全部やりましたけど、惜しいというか今ひとつ煮え切らないところがあって、だけれども要所要所の光るシチュはありがたく頂戴していて、でも何ならサイドの某がより私の欲求に近いんじゃないかと思ったました。ところが本作は大当たりでした。私の見立てでは一番魅力的だった初代に近いプロットで諸々の再構成補強板を突っ込んだ趣のそうそうコレだよコレと思わず首肯する内容に加えて、シチュにセリフに作画にセンスに、これはもしかして俺が思いを馳せたあの作品の本歌取りではないか?アレをこの世界観に落とし込んで見せてくれるのかと目を細めてしまうシーンがちらほらと…私の妄想かもしれませんけど、それくらいがっちりハマったってことです。こんなことなら買っときゃよかったコンプリートエディション後悔安んぞ先に達也の心持ち。


そもそも悪堕ちというものは人によって感ずるところが違うと思いますので、観念的にしかし根源欲求に訴えるフレーズとして、1ジャンルと認知される昨今に至ってその流れはエロスのいち探求者として喜ばしいところであります。

個人的には調教や洗脳で悪の奴隷に堕ちるをもうちょっと今の私の言葉を被せて続けると「倫理的主体がそれに悖る背徳存在の手にかかり、精神的に囚われる、主従・支配のマゾヒズムもしくはサドヒズム」みたいに続けるところですし、現実じゃ実現し得ないマスタベーションの真髄だと思ってます。要は究極のシチュエーションプレーなんで設定が肝要ですし、悪と正義と単純二分化された概念的な世界観は極めてノリやすいお題目だと思います。

だから悪堕ちは別に肉体的なエロスが本質でも無いと思うんですけど、そういう描写は直感的かつ分かりやすい。でもやりすぎると昨今のテンプレ化した姫騎士よろしく下品になるのでバランス取りが難しい。その点本作、不様ではあるが下品ではない、と私は思うのでコレも大きく首肯するところ。そういう意味ではセリフの一つ表現の一つ細かな表情の一つが重要ですよ。これであなたは私のもの、とか、なんちゃら様ありがとうございます、とかシチュにハマったセリフがあれば、それだけで私達は霞を食って生きていける仙人ですから。今回はセリフも絵も声も筋もあるもんで、贅沢です。逆を言えばそこから外れると萎えちゃうし。

贅沢といえば、本作エロ絵の前後補完も良い感じで、堕ちたあとに仲間を堕とす尖兵になっちゃうお約束も抑えつつ、さらに立ち絵や非エロの描写がかなり充実してる。コレが非常に嬉しいところで、ゲームで言えば例えば過去の良作沙枝2での白眉は堕ち後の立ち絵だ、なんならその時のワイプがモストデンジャラスだみたいな感覚は割とあると思うんでそういう所しっかり踏み込んでくれるのは本当ありがたい。回想じゃそこらが見えないのが実にもったいない、久々にフェイバリットを詰め込んだセーブを作っちまいました。


加点方式で考えれば私の中では過去最高峰、一つ難点をあげれば個人的にシチュも絵もセリフも展開も本作一番と極まって最高だったアルファ某の演技がちょっとこれじゃない、それだけが違うそうじゃない、そういう意味の棒じゃないんだよお!と残念で残念でたまらないのがありますが、今はノリきれるように自分の頭をチューニングしてます。

ということで、話に作画に演技に設定にがっぷり四つにキマった本作良いです。スタッフの人ありがとう。人によって満足度は違うでしょうし、他にも不満点や粗がないわけじゃないし、これだけが正解じゃないと思うんですけど、ハマる人にはマスターピース、悪堕ちに惹かれれば少なくとも琴線に触れる処のよすがはあるぞと極めて訴求性の高い完成度だと思います。ゲームで言えばパニックドールズやライディなど20年以上前の作品の影を未だに追い続ける私に言わせれば、さらに20年先の未来でこちらの人間が手にとっても価値あると思う。

ここまで書いて、やはり悪堕ちはシチュエーションと世界観との両建てが重要で、両者が円融に無碍する一如の先に出づるエロスの光ありみたいなところがあると思ったんで、過去の数多のライブラリに埋もれる悪堕ちエロスの片鱗を新たな世界観で再発見してくれる、そんな作品が今後どんどこ生まれてほしいところです。エロゲという媒体においては黄昏感ましましな昨今ですが、否、媒体によらず、本作がジャンルの墓標とならずに今後の海路の一里塚であることを切に望むところです。