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LOSTMANさんのDAISOUNANの長文感想

ユーザー
LOSTMAN
ゲーム
DAISOUNAN
ブランド
ソフトハウスキャラ
得点
75
参照数
3599

一言コメント

南国ドミニオン2とも言える本作。開始直後は「南国ドミニオンが持っていた良い点を維持し、欠点を克服した名作。さすがソフトハウスキャラだ!」と感じた。ところが、中盤以降はメッキが剥れ、何ら南国ドミニオンと変わらない弱点を晒す事となってしまい非常に残念な作品。(長文の始めは「ネタバレ無し」で南国と比較しつつ抽象的な感想。ネタバレが入る所からは明記します。)(3月29日:誤字など全般的に酷過ぎる文章だったので少し修正・追加しました。こんな駄文を閲覧・投票して下さった方、感謝です。)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

南国ドミニオン(以下 前作)の長文評価で私が記載した概要
●長所
・ 行動パターン、パラメータ、スキルの多彩さ
・ 食料調達や施設作成、仲間との話し合いによる行動指針決定など、無人島生活らしさを狙ったゲームシステム
(※この長所2点で、「ゲーム性があり楽しめる」と言うのは早計なのは本作も同様なので注意。後述)
●短所
・ 食料や建材を得る為のミニゲームや好感度上昇の為の会話の「作業感」
・ (登場人物の職業設定は豊富でも)キャラクターの個性の無さ・シナリオ(イベント)の無さ
・ 作業感を乗り越えてまでした行動に対するレスポンス(達成感)の無さ(エロはもちろん全般的に)

アイデアはすごく面白いながら前作で最も致命的だったと感じていた点は、「行動に対するレスポンス(達成感)の無さ」であり、そもそも「達成」する為にまずプレイヤーが認識(無意識含む)しなければならない「目的・目標」が皆無に等しかったことであろう。(無論、ゲームオーバーを避ける「生存」と最終目標である「脱出」はあったが、そこに至るまでの過程を演出するシナリオやテキスト、エロ全てに中身が皆無に等しく、短・中長期的なイベントが見当たらない為、ミニゲームに費やす労力分の「楽しみ」を少なくとも私は見出せなかった。)

そして、今回発売された「DAISOUNAN」である。
ゲームを開始してみると、所属する時代や科学レベル、執事である主人公と彼が仕えるヒロイン(超大企業グループのお嬢様)の関係といった世界観の説明を軽く織り交ぜつつ、未開の惑星に不時着した2人の様子がソフトハウスキャラらしい明朗なテキストで展開され、無機質とも言えた前作のシナリオ・キャラクターは早速改善されていると感じた。
また、前作で不要と感じたミニゲームは無くなった一方、無人島生活らしい行動選択肢の数々は何ら損なわれないばかりか、明確な敵との戦闘が加わって、食料の枯渇以外にも緊張感が生まれる事となった。
更に、スキル取得やパラメータのUPも、経験値をプレイヤーが自由に割り振る事が可能となった事で、計画的な育成を楽しめるようになったように思う。(前作は取得条件などでランダム要素に頼る所が多かった。)
これらは、「作成する施設は敵からの防衛を優先させるか?いやいや食料の生産性を高めるものであるべきか?いや、そもそも食料・材料の収集するために未開の地へ?」といった具合に「プレイヤーの想像=戦略性を広げる事」も同時に意味し、これを見ただけでも前作プレイヤーはモチベーションを高めたであろう。

そして、私が最も重要だとした「短・中期的な目標の存在と達成感」である。
未開惑星なので、未開拓の地を進めば「発見・出会い」イベントがある。
何より、適度なタイミング・絶妙難度で出される「姫のワガママ」。未開惑星で遭難中なのに、「5ターン以内に天ぷらソバが食べたい」等と突然言われたりするのであるが、主人公=プレイヤーにしてみれば「えっ、今俺、施設作ってんすけど。それ以前に天ぷらソバ作るのに必要な材料で、見た事すらないものも混じってるんですが・・・」などと不満に思いつつ何とか頑張ってクリア。生きる為の行動をしつつ、合間にそういったお使いを繰り返して好感度を上げていく。で、何か信頼度高まってる感じが会話から感じられ日常CGなども挟み、ご主人様の期待に答えた執事に対して、エロゲーマーなら予想通りのシチュで、期待通りの「ご褒美」が与えられるようになる。
何たる絶妙な作業量・戦略性・達成感、この全てのバランスというかハーモニー・・・・

「これだッ!エロゲ的無人惑星ライフで、オレが求めていたのはコレなんだよッ!!」
「姫と二人だけでコレなら、登場人物増えてきたら、どうなっちまうんだよッ!これはすげー名作だッ!!」

と、私は心の中で歓喜したのです。

で、ある行動をしてると、他のヒロイン達が出て来て集団行動となるわけなんですが・・・・

「あれッ?あれれッ??」
「何か、共同生活始まり、会議パートとか加わったのに、あまり面白くないなあ。」
「って、冒頭で感じた良さが全然感じられねえッ!!それ所か、収縮する感じじゃねえかッ!!」

と、歓喜はいつしか絶望へ変わっていったのです・・・・
(続きはネタバレ的に具体例混ぜないと、私の文章力では無理ですわ。なので、CG・エロ・音楽の感想を軽く述べてから続きを。)

●CG
新原画家さんとのことですが、エロの時の表情や構図も良く、全体的に画力ある方です。
塗り含めて、私は好みですし、今後もこの方は期待です。
●CV
人気所揃えてるので、これも問題無く高レベル。
●エロ
上記の姫とのHなど、テキスト・尺共にレベルは低くない。
シーンによっては、複数CG構成となっているのも好感は持てる。が、陵辱分はほとんど無い。
キャラ作品の雰囲気を考えてなのかもしれないが、もっと「サバイバル状況下の極限状態だからこそ、爆発する性欲」的なシチュとかあってもいいと思うんですが。
(W・Cよりは使えますが、王賊で結構陵辱色もあったのに・・・・)
● 音楽
OPは、お約束の脱力系。(キャラ作品の音楽評価ではこう書いてばっかですな。)
でもそれも含めて、今回は少しだけレベル高いと思います。
基本マップ場面のBGMとか、でしゃばりはしないけど、いい音鳴ってます。


-----------以下ネタバレ評価&「こうだったら面白いのに・・・」という1プレイヤーの身勝手な要望--------------










で集団生活が始まるのですが、姫と2人の時に感じた、絶妙なバランス感・作業量・戦略性・達成感といったゲームとしての楽しさが、人数増えた事で拡大するかと言えば、収縮・喪失していくのです・・・・

①未開拓地を冒険してる感が喪失する。(=短・中期的な目的(達成感)が喪失する)
具体的に言うと、最初は、数種の原住生物との出会いがあって、それで「移動力+1」とかあるわけじゃない。また、初めて海に出て新しい食材手に入れた時とかやっぱり「オレ探検してるぜ」感があるわけよ。
でも、合流してから、そういった気持があなたにはありましたか?
メンバー4人加わる頃(ちなみに私は初回でここまで150日位だったからそこまでヤリ込んだ訳ではないと思う。)既に、海・山・平原・密林・砂漠マップなど出てたが、当然さらに新たな地形が加わって、そこで新食材や新建材が見つかると期待していた。しかし結果は、MAPの広さがただ単に広がるだけで、世界の「質」は何ら広がりを見せない。であれば、そこに必要性も達成感も感じなくなってしまう。

②ゲーム性(戦略性)が喪失する。(=短・中期的な目的(達成感)が喪失する)
中盤で集団行動となってから、2人の頃のようにプレイヤーが「計画する意義」をあなたは見出せただろうか?
例えば「食料」だが、人数が増える事で消費量は増加し、不足しそうになる事が稀にはあった。しかし、冒頭のようにこの状況を「危機感」として感じられたプレイヤーは何人いるだろう?
この頃になればゲームにも有る程度慣れてきて、効率のよいメニューは何かわかるし、施設やスキルも充実し始め、メンバーもそれなりに料理行動を取ってくれる。とすれば、生存の為に重要な構成要素であった「食料」をさほど意識する必要がなくなってしまい、それに費やしていた施設作成などのゲーム性が喪失する事を意味する。

ところで、これは「メーカーの意図的な食料収集行動への飽き対策」であるかもしれない。」と私は思わなかった訳ではない。続いて用意された新たな「短中期目標・目的」に専念させる為に、敢えて食料を意識しなくて済むバランスにしたのではないか。と考えもした。しかし、大変申し訳ないが、下記2点からこれは単にゲームバランスの調整不足と判断させてもらう。

開始時2人の時は適度に与えられた「お使い(イベント)」と「ご褒美」という流れ。こちらも、私は当然合流したメンバーも含め、継続して与えられる物だと思っていた。それもバリエーションを増やして。が、増えるどころか、こういったイベントが綺麗さっぱり存在しなくなってしまった。(新食材や建材の追加という前提条件がないのに、継続されても苦痛とはなる気もするが。)

とすれば残りのする事は、「脱出手段の模索・作成」と、各ヒロインの鬼ごっこのみである。(もちろん、寄り道して未作成の施設を作った方もいるだろう。同種の施設を乱立することに楽しみを見出せた方もいるのかもしれない。が、それは「成せねばならない事」ではない)
その内容が良ければ何も文句はない。脱出をどうするかといえば、施設作成を単純に繰り返すだけ。また、ほとんどのヒロインのCG・Hイベント回収方法は、広くなったマップをランダムに動き回るNPCを運任せで接近、会話系選択肢を繰り返し好感度を上げる作業的なものである。NPCのキャラクターを若干誘導する事は出来るし、会議の目標達成でも上がるが、その実態は南国ドミニオンとほとんど変わらない。


③キャラクターの個性・集団生活の意義が喪失以前に実装されていない。(イベント&ゲームシステム的両面で。)
前作に比べれば、キャラクターの飛躍的な進歩していると冒頭では感じた。が、中盤以降は、局所的なテキストの質や量といった上辺だけの物であるとしか思えなかった。
例えば、NPCにはそれぞれパラメータがあり、それが個性でもあるはずだ。だが、その違いをプレイ中に意識した(あるいはゲーム内で活用されていたのは)せいぜい一部NPCの「戦闘力」系位ではあるまいか?
例えば、採取・探索に優れるこのキャラクターのご機嫌を取らないと(あるいは会議でそういった行動を強制しないと)、集団生活(クリア)に支障が出ることがあったか?
そのキャラクターの人間設定らしい、ゲーム性と上手く絡んだイベントをあなたは見たか?
私は現在2周はクリアし、3周目で手を止めてこの文章を書いているが、強力な戦闘力を誇るミコトに戦闘勝利Hしか、私を満足させてくれるイベントを発見出来ていない。

ちなみに会議システムはいいと思う。仲間にこうして欲しいし、こうすべきだと自分は考えるのに、価値観や認識が食い違って、自分まで望まない行動をさせられる。その集団生活(組織)の「もどかしさ」、逆に上手く言ったときの「達成感」を演出しようとする素晴らしい発想のシステムであると思うのだ。それなりに決定内容のレスポンスも感じさせる。が、上記の様々な要素で問題がある為、結局その価値は乏しい物となってしまっている

●総評
ここ最近個人的には名作続きで、南国ドミニオンも磨けば光る原石だと思っていた分、私は本作に期待し過ぎたかなと反省しなくはない。
冒頭部が本当に楽しかったのは事実だし、中盤以降も若干ではあるが前作より全ての面で進歩していると思う。南国未プレイであれば新鮮なゲーム&もちろんこの作業感がいい人もいるかなと考え得点は75点としました。遊べるエロゲを作ろうとしてくれる貴重なメーカーの姿勢は私は絶対に評価したいと思いますし。(平均作で70点を基準としてます。)
ただ、偉そうに長文駄文書きましたが、冒頭の完成度見ると、メーカーも当然それらの問題点を把握・イベント等を予定していながら、中盤以降造り切れなかった(間に合わなかった)印象を正直感じるのは私だけでしょうか?



●最後に「オレとしては、こうだったら面白いと思うんだけどな~」という1プレイヤーの身勝手な妄想。

姫「キャビアが食べたい。」
    ↓
プレイヤー「マジ?あのマップの端の海にだけしか出ない強力な戦闘力の「チョウザメ」から取るレアアイテムよ?」
    ↓
選択肢
(1) 無理。そんなワガママは聴けん。好感度下がるなら下がれや。
(2) こないだ○○が偶然拾ってたな。お前に怨みはないが、姫とのエロの為、戦闘で奪わせてもらう。
(3)「まてよ?友好度高くないけど、アイテム贈与で戦闘力ある○○をHP削り用に連れけば・・・でも、その間の共有食料がなあ。そうだ、採集&料理の得意なアイツに食料用意させよう。H済みのあいつならオレのお願い断るわけねーぜ。これでHシーンゲット!」

あと、ガキの頃読んだヴェルヌの十五少年漂流記を私が今思い出しても、派閥の対立からグループ分裂、仲間の死、漂流する切欠となった人物の苦悩と告白とか、いくらでもネタ転がってると思し。安直でも、ゲーム的展開なら、敵にとらわれた仲間の救出やら、迷って行方不明になった仲間を探すミッション、エロゲ的なら主人公極限状態で鬼畜化して陵辱系展開も有りとかさ・・・・
ソフトハウスキャラらしいかと言えば少し違うかもしれませんけど、もし南国3出るならまた買いますんで、こういった風にしてくれたらなぁ。と思います。