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LOSTMANさんの姫狩りダンジョンマイスターの長文感想

ユーザー
LOSTMAN
ゲーム
姫狩りダンジョンマイスター
ブランド
エウシュリー
得点
95
参照数
2582

一言コメント

「SLGゆえ生じるプレイヤーごとに異なるニーズ(体感難度ややり込み度の違い)を如何に満足させるか」という困難な課題に対して、「エウらしさ・SLGとしての基本は損なわないまま、可能な限りプレイヤー自身が好みに併せ選択出来る要素を丁寧に増やす」という真摯な解答を各所にメーカーが施したのが伝わってくる、とても懐の深い作品と感じた。これまで同社作品には皆無であった「萌え(?)要素」がユニット性能と連動したリリィの成長段階等にほのかに感じられる事、「もはや単なるエロゲ版ファイヤーエ○ブレムではないと言わんばかりのZOC。それがあるからこそ生きるユニットやマップのバリエーション」等、ゲーム性の面白さ・完成度も本当に素晴しいが、私は前者のゲームバランスに対するメーカーの配慮を何より評価したい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※注 長文駄文を始めるに当っての前提
(購入を検討されてる方の参考・長文駄文への突っ込みに対しての私の言い訳用)
・ 本作は現在、ロウ(コレット)→ 全て引継してカオス(リリィ)→全て引継してロウ(リリィ)の3周を現在クリア。プレイスタイルを変えたり・引継を一部リセットして今後もちまちまプレイ予定。
・ 同ブランド作品は幻燐2(アペンド含む)、戦女神2、峰深きの3本がプレイ済み。(ZEROは何となく未プレイ)
・ SLGのプレイスタイルとして、進軍パターン・S&Lの使用・キャラクターの育成とやりこみ要素の追及など、そこそこ考えて攻略、そこそこコンプ目指しますが、一定以上は面倒&飽きるので行わないというタイプ。
・ ここ3年位のコンシューマー系SLGは一切未プレイ。それ以前の有名SLGはそれなりにプレイ済み。


●プレイヤー毎に大きく異なるSLGへのニーズ

我国の消費者ニーズは、もはや十人十色ではなく、十人百色といわんばかりの多様かつ欲求水準の高い物となっており、企業は如何にそれに合致・それ以上の付加価値を持つ製品・サービスを提供するかが課題である。などとマーケティング系超入門書冒頭には結構書いてあったりする。
これはもちろん全てのゲームにも言えることであるのだが、その中でSLGはその性質から、「難度」「やり込み要素」という2点でプレイヤー毎の評価に極端な違いが出やすいように思う。
もちろん、SLGにはファミコン時代から難度選択という機能が標準的に存在するのだが、某掲示版などでも色々なSLG作品で「これはヌルゲーだ。難度最高でも簡単過ぎる。戦略が穴だらけ」というコメントがある一方、「普通難度で開始したのに難しくて進めない。詰んだので最初からやり直す」という真逆のコメントが多々見受けられるし、やり込み要素であれば、キャラクター育成やアイテム収集など、「楽しい。それがあるからこそ長く遊べる」という意見もあれば、「時間掛かりすぎる。作業。ストレス堪り過ぎ」というのもある。
しかも、私自身、「時間がある時であれば高い難度や膨大なやり込み要素は大歓迎」だが、「そうでない時はそれが苦痛に感じる」という身勝手な事が多々あるのだが、これは私だけではないのではないだろうか。
果たして、ゲームバランスの落とし所はどこなのか。小規模とされるエロゲ市場で、シナリオ系・ヌキゲーならともかく、特定セグメントのみを完璧に満足させるオーダーメイドと言わんばかりのSLG作品など出来るはずもないだろうし、メーカーさんも大変だと正直思っていた。

●本作のゲーム性に関する感想
(※注 本作ZOCが持つ戦略性やそこから生まれるマップやユニットのバリエーションの多さ・育成やアイテム収集や合成の楽しみなどの具体的内容(魅力)については、体験版ありますし、マルセルさんという方始め皆様が既に素晴しいレヴューを書かれているのでほとんど省略。他の方とはちょっと私の感想が異なるかなという点を重点記載)

本作も難度・やりこみ度に対する評価は既に分かれているのは知っているし、もちろん相性によって合う・会わないはあるのは重々承知しているが、冒頭で述べたように、ファイヤー○エンブレム型(それを古典として発展してきた)作品の中で「プレイヤー各々が難度や進捗スピードなどを好きに遊べるゲームバランス(要素)とやり込み要素を備えたとても懐の深い作品」だと少なくとも私は感じている。よって大絶賛・高評価。(ちなみに同じ点で高評価を付けた作品に、ソフトハウスキャラの王賊とウィザーズクライマーがあるが、本作はそれら2作品以上これらの点ではさらに高レベルな作品であると思う。)

■(ゲームプレイ途中での)難易度調整機能となるのは
(1) 硬貨・エキストラダンジョンの存在(育成ステージが複数回利用可)
(2) 魔法の存在(空爆的攻撃・回復、キャラクターのワープといった、ある意味神(魔王だけど)の手。)
(3) 強力ユニット(S&Lで参戦させられるメイド天使や戦力総投入すれば1周目冒頭から捕獲可能な異界の姫)
(4)いつでもセーブ&ロード
(5)クリア後データの引継(引継項目多数かつ、項目毎に選択が可能。)

■やり込み要素調整(サポート)機能となるのは
(6)マルウィンの指輪(成長率2倍アイテム)とフール系(ドロップアイテムのランクUP)
(7)汎用ユニットのレベル(経験値)共有
(8)クリア済みマップ簡略機能(完全制圧マップは2周目からワープ魔方陣設置)
(9)情報画面の充実(エンカウントした敵のドロップアイテムは未取得でも全て確認出来る。)
(10)メイド天使(S&L)によるクリアポイントの大量取得・貴重アイテムの取得

思いつくまま羅列してみたが、これら(の数)を見てどう思われるだろうか?
同社作品では標準・他のメーカー作品でも当然の如く導入されているものもあるが、これだけの数が1つの作品で揃っている作品を私は他に知らないし、(7)(8)(9)はなかなか新鮮で、幻燐2など旧作対する多様なユーザーの要望をバランス良く取り入れ形にしたものであると思う。

また、これらの幾つかの存在を「システムの穴・ゲーム難度低下要因・モチベーション低下要因」(特に2・4・6かな)として挙げている方も多いが私はそうは思わない。なぜなら、プレイヤーは無いものは使う事は不可能だが、在るものを使わないという選択を取る事は可能だからだ。
王賊のレヴューでも書いたが、それはただの「縛り」と指摘されれば否定はしない。が、私はその言葉には熟練者が無理して制限する「マゾの世界」的マイナスイメージを持つ。
私が言いたいのは、ZOC・属性・キャラクター育成、多数のアイテム、ダメージ量等の各種数値バランスといったSLG基本はしっかり存在する上で、さらに用意されている「自由度・遊び」の中から選択をどうするかという余地の有無・プラスイメージである。
(シェフをエウシュリーとすれば、注文料理コースは、姫狩りダンジョンマイスター。メインは素材も調理もシェフの色が出た本格派。しかし味付けが好みでなければ、調味料を振って調整するのは自由だし(難度調整要素)し、気分や体調によってデザートやドリンク(やり込み要素)をどうするかももちろんお客さんの自由なコースであるイメージだ)

また、上記と関連して、述べたこの作品の柱である属性とZOC。中盤に突入する前に、その重要性と魅力を気付かせ、中盤からの難度UPへの繋ぎとして、トレーニングともなるステージがさり気無く差し込まれている構成なのは明らかだが、これも丁寧かつ本格的な作品であることを印象付け評価をアップさせる。(不死属性を持つ死霊の大量発生する為、これまで不使用だったユニット(属性効果)の価値が引き立つマップ・敵が一切存在しないが少ないターンで効率的なユニット選択及び占拠を繰り返しゴールを目指さねばならないコレットマップ&占有率とAIパターンを意識させる薬草探しマップがそれだが、既にゲームシステムを十分理解してるプレイヤーやSLG熟練者は、そのまま該当マップのカラーを楽しめばいいし、力押しのみでここまで進めて来たなどしてそれらの理解が不十分であれば、ここで必然的に鍛えられる。私はここでこの作品の売り=面白さをしっかり理解出来たと思っている。)

と言う事で私の中では、アリスソフトやソフトハウスキャラのプレイ済み遊べるゲーム系作品群で現在最高得点の95点。(戦国ランスは名作SLGだけどFE型ではなく信長型なので比較対象としてはちょっと違うかな。エロゲ他社作品で比較するなら、ソフトハウスキャラの王賊でしょうが、アイテム収集(合成)や隠しボスというエウの伝統ともいうやり込み要素は無いし、政略性もこの作品の前では霞む(こっちも好きですが)と思います。


● シナリオ・キャラクター
皆様がおっしゃられるように、シナリオの起伏・ルートごとの差異・リリィ以外のキャラクターの描写やイベントが乏しいのは紛れも無い事実であり残念。(100点にしなかったのはこの点が全て)
また、これまで硬派・正統派エロゲなどとも言われる(私としては肩に力入り過ぎと感じることもあり)エロゲばかりを送り出してきたエウシュリーなので、コアなファンの方は本作のライトな雰囲気(EX コレットの立ち絵の省略表情パターンなど見ても戦女神はもちろん、それらよりライトよりな作品であった「峰深き~」でも無かった演出である。)に抵抗があるのかもしれない。

が、あくまでエウシュリーらしい堅さ(陵辱はあっても下品さは無い世界観ではない。)がベースとなっているのは私には好感触だし、ユニット性能と連動するリリィの成長・段階毎の性格に大いに「萌え」た私としては王道的展開ながらかなりの評価。(特にロリリィの健気さ・可愛さは愛しくなりました。私は呂利好きではないですが。)
もちろん他のゲームでも年齢によるパラメータUPやエロゲならHによるステータスUPは見られるが、幼児から始まるヒロインの三段階成長というのは見た事がない気がするし、プリ○セスメーカー的、娘の成長を見守るパパ型SLGの面白さが、FE型SLGで味わえるとは思わなかった。これを味わえるヒロイン・ユニットが複数存在し、それが引き立つシナリオになっていたら、間違いなく超名作評価にしただろう。
あと、幼児以外で2周目以降初められる仕様(テキスト・CVが用意されている)のにも感心。

●CV
幻燐とかのなぜか素人っぽい演技こそエウ作品らしい。と思ってたのが懐かしい気もしますが、全体的に文句無しです。ただロリリィのマッチぶりは異常かと。(私は呂利好きじゃないはずなのに・・・)

● 音楽
曲数・音質共に中の上。OPのボーカルが素人臭く感じるのはエウのお約束。EDはプロっぽくて(笑)驚きました。(峰深きは島みやさんでレベル高かった記憶も薄っすらとありますが。)

●CG
これまでのエウファンは主要タイトルの原画家さんでないことに抵抗あるようで。その気持判らなくもないのですが、私としては少し飽きもありましたし、姉妹ブランドのメインしてる方なので当然ブランドらしいデザインかつ作品に合ってると思うので高評価。ロリリィの二の腕の感じのプニプニ感とかヤバイと。(呂利もいいかもしれませんね。)

●エロ
シーンの数は下手なヌキゲーより多く・クオリティもプレイ済みエウ作品の中では一番良いかな。
正直幻燐や戦女神はエロも硬派過ぎな雰囲気で実用性は無いと思っていましたが、本作は峰深きからさらにいい意味で力が抜けた感じがあり、実用レベルに達していると感じました。
また、リリィのロリ→ツン→アダルトの年齢段階UP毎に、それらしいシチュがありますし、ゲームバランスと同じく色々な嗜好に答えてくれる仕様になっているようです(笑)
ロリリィの背徳感ある健気なエロさにやられました。(やっぱり呂利開眼してますね・・・)