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Kouteiさんの装甲悪鬼村正の長文感想

ユーザー
Koutei
ゲーム
装甲悪鬼村正
ブランド
NitroPlus
得点
97
参照数
1104

一言コメント

妥協のしないシナリオ、生きたキャラクター、ガチの戦闘描写、作りこまれた世界観など多くの面で惹き込まれた大作。ただ自分にとっては神作だが合わない人には合わなそう。まぁニトロで奈良原だから仕方ない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

個性的で燃えかつ重厚な作風の作品を多く産み出してきたニトロプラスの十周年記念作品に相応しい作品でした。

まずシナリオ面では最初から最後まで戦闘モノで必ず問われるであろう人殺しに対する善悪について問い続けています。他の作品では結局人殺しの罪の意識とかは曖昧にされ、ベタなハッピーエンドになるところをこの作品では一切の逃げや甘えを許さない厳しいといえば何処までも厳しい話になっています。容赦のない描写の多い作品ですが、だからこそ人殺しへの徹底的なアンチテーゼを唱えてるとも言えるかもしれません。

そしてキャラクター面においては、主人公の湊斗景明、ヒロイン勢、敵側(当初)の六波羅四公方を始め、かなり人間性に溢れた、もしくは自分の信念に狂いすぎたキャラクターばかりになっています。メインから脇にかけてまでとにかく捨てキャラというものがおらず、皆何かしらの大きな印象を与えてくれるため、これだけの徹底したシナリオかつ60時間近くの長編にもかかわらず話にまるで飽きが来ません。それも安直な萌えで引っ張るようなキャラは殆どいないため、いわゆる萌えキャラとというものが苦手な人の方がお薦めです。(私的萌えではありますが)

個人的には主人公の湊斗景明、三世村正、湊斗光、そして六波羅四公方(足利茶々丸、大鳥獅子吼、今川雷蝶、遊佐童心)全員ともかなり好きです。後出番は少ないけど山賊の首領とか他の作品なら十分気に入るレベルのキャラだらけです。徹底的な悪役とか徹底的な善人とかは殆どおらず良くも悪くも人間的な連中ばかりなのがとにかく好印象を与えてくれます。(まぁ例外はありますが)

後は剣術師範代、奈良原一鉄による巧みな戦闘描写がウリでしょうか。いわゆる必殺技を叫んでるだけの作品の方が好きな方は嫌かもしれませんが、とにかく戦闘描写がリアルです。都合のいい戦闘は殆どおらずまともな戦術をもってして状況を打開していきます。

まぁチート銀星号にはこれが当てはまっていない気もしますが。そのお陰でエンターテイメント性も強くなってる気もしますが。また魔王編中盤の六波羅vsGHQは完全に戦争モノ状態で、シナリオ全体から見てもここから盛り上がりを見せてくれます。

そんなこんなであらゆる面において非常に濃い作品になっているんですが、システム面の悪さだけは何ともし難く、選択肢の山、既読スキップの遅さ、止めに謎のパズル等が搭載されており流石にこれを好むという方はなかなか居ないと思います。それ以外の点においては文句なしに100点なんですがこればかりはなんとも得難いです。

またハッピーエンド主義者にも合う話ではなく、万人向けとは恐らくいえないためまずは体験版をやってみることをおすすめします。まぁエロゲの時点で万人向けなんてないと思いますが。