今一つの部分もあるけれど、概ね評判通りの面白さ。良く出来ている。2はプレイ中なので、とりあえず1の範囲での感想を。先が気になる・・・。
戯画さんのバルドスカイ。もちろんブランド名もタイトルも知っていたのですが、手を出さずに来てファイナルセールでやっと初プレイに至りました。
1+2+Xのセットで購入。連作モノは完結した段階でレビューを書いているのですが、本作は2で大きくひっくり返してくる予感がしたのでひとまずはここまでのレビューを。
良いところは随所に見られたものの、一番はやはりストーリー構成。進めるごとにだんだん真相が見えてくる組み上げ方は非常に良く出来ていました。
反面今一歩だったのは、状況説明の曖昧さや専門用語の扱い方。どんな状況でどんな動きでどうなっているのか、ライターの頭の中だけで完結していてこちらに伝わらない箇所がところどころ見られた。また、用語の読み方も一種類に限定した方が良かったと思います。
バトルに関してはやりこみ含め十分に遊べるレベルの水準に達しており、総じてまずまず良く出来た作品という印象。
これがもう新規プレイ出来ない作品だと考えると惜しい。。。時代の流れと言ってしまえばしょうがないのですが。。。それとも私が知らないだけで購入する方法はまだあるのでしょうか?
最近閉めるメーカーさんも多く…というのは本作レビュー外のことかと思いますが、おススメ出来る作品がどんどん減っていくのはなんとも悲しいものですね。。。
・舞台設定について
近未来のお話・・・と言って良いのかどうかわかりませんが、現代より遥かにITの進化した世界が舞台。
AIの進化や万能テクノロジーの開発、また壮絶な環境汚染下において人間がどのような行為に走るかなど、現代の我々が辿る行く末のひとつの可能性としての世界を見せられている感覚さえします。
かのアインシュタインの思惑の通り、やがて人は閉じた完璧な世界に引きこもるというのはまさにこの作品で言うところの方舟計画そのものなのでしょう。そう思うと不便や不完全を感じる事こそが人間を人間足らしめる最後の砦なのかもしれません。
本作発売年は2009年ということで、約14年前。よくこんなお話を2009年時点で作ったなと感心させられる。
ここ最近の技術革新を見ていると、ようやく時代が本作に追いつきつつあるのかも?。。。なんてことも思ったり。将来的に実現する技術もありそうですね。
毒と薬は紙一重とはよく言いますが、昨今の様々なテクノロジーは研究者の『未来を良くしたい』という熱意と善意によって成り立っているのだと、そんな風に目を向けさせてくれる作品でもありました。
もう販売終了だと思うと勿体ない。。。おそらく、もう少し先の未来ではまた違った視点で改めて評価されるんじゃないかと、そんな予感を覚えただけにやるせなくも思う読後感でした。
・ストーリーについて
傭兵の青年が大切な人たちを守るために奮闘するお話、と、現段階ではこんな感じでしょうか。
テーマ性に斬新さはないものの特筆すべきはその構成の妙。
エリート傭兵が事故に巻き込まれて記憶を失うところから始まる導入は、スタート後の何もわからないプレーヤー心理と同期していて、プレーヤーの代弁者としての役割をうまいこと主人公に全うさせている。
やはり主人公との距離が近いとプレイする心情も段々と寄っていくものなので、悲惨な展開も否応なく書いていく本作にとってこのやり方をとったのは良い判断だったのではないかと思います。
本筋もまず一本流れを見せておいて、繰り返すうちに真相が見えてくるのも仕組みとしてなかなか面白かった。「2周目に入ったしスキップスキッp・・・ファッ!?」となる感覚はそれだけでテンション↑↑。
ヒロイン選択制ではなく、強制的にルートが決められている点もこの構成ならではといったところでしょう。
と、褒めるべき点は多いのですが、残念に感じたところも。
ライターの手癖なのかもしれませんが、状況を説明するようなライティングには雑さが目立った。
例えば、千夏が加入した初のシュミクラム戦後に菜ノ葉がキレながら甲を起こすシーン。甲がどういう姿勢でもってダイブしているのかの説明がないので、千夏が甲にくっついている状況が想像しにくい。
恐らくベッドに寝ているのだと思うけれども、明言されることがないので疑問に感じた瞬間クリックする手が止まる。残念ながらこういう『物語から意識が離れてしまう』シーンがちょこちょこ見られました。
本作独特の用語に対する読み方の統一性が図られていない点(例えば場面によってダイブと言ったり没入と言ったり)もそうですが、ライターの頭の中にある常識はどこかでちゃんと言語化しておかないと伝わらないし、そこまで気を使って初めて質の高いシナリオクォリティになるのだと思います。
・キャラについて
Dive1ということで、攻略キャラはレイン・菜ノ葉・千夏の3人。その中では千夏がお気に入りでした。ノリの良い女子、すき。
読み進めれば進めるほどかなりキツイものを背負っていたことがわかる千夏ですが、それに伴いキャラクターとしての振れ幅も大きく、学園時代・GOAT・甲と再会してまた変わっていく千夏と様々な顔を見せてくれる。
演じきった声優さんも凄い。アップとダウンの演じ分け自体は難しくないと思いますが、冷酷な顔からだんだんと昔の千夏の天真爛漫さが滲む当たりの演じ分けは凄く伝わるものがあってまぁ見事でした。
主人公に関してはしっかり成長していくのが魅力的。前述の通りストーリーの妙でプレーヤーの半身としての役割も果たすわけですが、優柔不断さを幼さと捉えられるなら、特段嫌みも無く概ね良主人公といった印象。
それぞれのキャラにそれぞれの役割が与えられており、存在することに物語的な意味をちゃんと持たせている作品はそれだけで◎。
Dive2ではどのように印象を変えるのか、今から楽しみです。
ということで、もっと書きたいことはあるのですが先も気になるのでお話の雑感はとりあえずここまでに。
アクションパートもしっかり遊べる出来になっており、プレイが楽しい作品。ストーリーとの交互の挿入ながら、どうしてもストーリーパートに比重が置かれてしまうのは致し方なしといったところでしょうか。
バルドと言えばこのアクションパート、という声も聞きますので、このあたりも前評判に偽りは無かったなという感触。
繰り返しにはなりますが、もう購入できないというのは残念。どこかでプレイする手段自体はあったりするのかな?よくはわかりませんが、内容からしてみてもここで販売終了というのは勿体なく感じます。
私のようなイチユーザーが零す愚痴ではないとは思いますが、先細っていくエロゲ業界が一日でも長く存続していけることを願いつつ・・・物語の芯を食う感想はまた2が終わった後に。